先日の事ですが、アメリカのオバマ大統領は、「テロとの戦い」を宣言し、イラクとシリアへの空爆(イスラム国という組織への攻撃)を決めました。
アメリカは、息子ブッシュ政権の時にテロとの戦いを宣言して、アフガニスタンとイラクに侵攻し、多くの悲劇を生みました。
私はしばらく前までは知らなかったのですが、ノーム・チョムスキーさんの著作を通して、レーガン大統領の時代(1980年代)にもテロとの戦いを宣言し、中米や中東に軍事侵攻している事を知りました。
要するに、アメリカが「テロとの戦い」を宣言するのは、何度も繰り返されている事なのです。
そうして、歴史的に見れば、テロとの戦いではテロを根絶する事はできず、むしろテロリストは増えてしまっているのです。
オバマさんは、バカじゃないと思うし、こうした事実は知っているでしょう。
では、なぜ再びテロとの戦いを宣言するという、愚行をしたのでしょうか。
おそらく彼は、支持率が下がっているのを回復させるために、「強い大統領」との姿を打ち出したのだと思います。
(オバマの支持率は、もう長いこと50%を割っている。
アメリカ大統領の支持率は、50%を下回るとかなり低いレベルで、自分の影響力を行使できない。)
アメリカ人は幼稚で、戦争をする指導者(強そうに見える人)が大好きなのです。
戦争を始めると、その大統領は必ずと言っていいほど支持率が上がります(少なくとも最初のうちは)。
これを、オバマさんは期待しているのでしょう。
アメリカ国民は、息子ブッシュが行う戦争によって、多大の借金を背負い、戦死者も大量に出るのを見て、「テロとの戦いなんて、アメリカの利益にならない」と気付きました。
それなのに、もう忘れてしまったようです。
イスラム国は確かに過激かつ暴虐ですが、だからといって空爆をする権利がアメリカにあるはずもありません。
空爆は、必ず民間人も犠牲になります。
空爆はテロ行為なのです。
テロにテロで応えても、解決にはならないですよ。
アメリカ人の記者がイスラム国の要員に殺されたのも、話題になっています。
イスラム国の残虐さを強調するような感じですが、空爆をして多くの民間人を巻き込むほうが被害は大きいし、もっと残虐ですよ。
そもそも、アメリカ人記者を殺した実行犯は、イギリス人だったそうじゃないですか。
イラクや中東の人じゃないんですよ!
米英による自作自演の可能性すら、ゼロではないのではないでしょうか。
イギリスは、「イスラム国には、我が国の者も参加している。放っておいたら、彼らが帰国してイギリスでテロを起こすかもしれない。殺られる前に、殺ってやる。」と主張して、アメリカの行う空爆への参加を表明しました。
バカそのものの論理ですよ。
「イギリスでテロをするかも」というのは、単なる可能性に過ぎないし、空爆をした方が恨みを買ってテロの可能性が増すのは明らかです。
結局のところ、テロは根絶できず、イギリスはテロリストのターゲットになるだけでしょう。
冷静に眺めると、アメリカもイギリスも、テロを無くすために活動しているとは、到底思えません。
テロは、ほとんどの場合は、『貧困』から生まれます。
今回のイスラム国についても、彼らはスンニ派の組織で、『イラクでシーア派ばかりが優遇されて、スンニ派が貧しいままに置かれている事』が背景にあります。
本当にテロを減らしたいのならば、この貧困問題(不公平の問題)を是正しなければならないのです。
それなのに米英は、シーア派ばかりのイラク政府を擁護して、クルド人地区に肩入れし、スンニ派の意見を無視し続けています。
そもそも、シリアのイスラム過激派組織(シリアのイスラム国はここから生まれた)は、アサド政権を倒すためにアメリカが軍事支援をして育てた勢力です。
アメリカと同盟を結んでいるトルコは、(アメリカの後ろ盾を得ながら)シリアのイスラム過激派をダイレクトに支援してきました。
つまり、イスラム国の少なくとも一部は、アメリカが育ての親なのです。
『自分で育てておいて、勢力が大きくなり自分の言う事を聞かなくなってしまったから、今度は殺そうとしている』、これが今のアメリカの態度です。
中南米などの現代史を学ぶと理解できますが、アメリカはこの狂気の行動を、何度も何度も繰り返しています。
米英の態度を見ていると、意図的に不公正な状態を維持しています。
実のところ、イラクが民主的になって1つの国としてまとまると、英米の言う事を聞かなくなる可能性が高いために、国が分裂するのを放置しているのです。
そうして、テロが頻発すれば、テロと戦うと称して軍隊を派遣し、軍事産業を肥えさせつつ、イラク人を脅す事もできるわけです。
これは、軍事大国(帝国主義国)がよく使う手です。かつての日本(大日本帝国)も常套手段にしていました。
今回の空爆については、「中東の5ヵ国が支持をしている」と報じられ、それが正当化の手段として使われています。
しかし、この5ヵ国は ヨルダン バーレーン サウジアラビア カタール UAE であり、どの国も王族や首長たちによる独裁国家です。
これらの国の国民が支持しているわけではないし、支配層が支持をしているのはイスラム国のような組織が活発化すると自分たちの独裁制が壊れるかもしれないからです。
結論ですが、『テロとの戦いは茶番である』という事です。
危機自体が嘘だし、中東で危険な状態を作っているのはアメリカの傲慢な態度です。
イスラム国が危険なのは事実ですが、それはイラクやシリアの人々が解決する問題だし、根っこにあるのは貧困問題なんです。
テロ集団というと、「危険な思想を持った奴らが集まっている組織だ」とシロウトの人は思いがちですが、実際には貧しくて生活が成り立たないゆえに、食うためにテロ組織に入る人が多いです。
テロ組織は、指導者や幹部には富裕層出身もけっこういるのですが、一般の構成員は貧困層の出身で、「組織の思想には共感していないが、生活のために参加している」という人がかなりいます。
実際にイスラム国も、給料が良い(現地の一般職の平均給料よりもはるかに高い)ことが指摘されています。
ですから、各国がしなければならないのは、経済的な援助や、公平な政治体制を築くためのサポートです。
貧困問題に対して、暴力で解決しようとするなんて、とんでもない話です。
アメリカやイギリスのしている事は、愚行そのものです。
同調してはならないし、「不公平を無くす事こそが、いま必要な事なのだ」と訴えましょう。