(週刊朝日2014年8月29日号から抜粋)
2014年6月、経団連の新会長に、榊原定征・東レ会長が就任した。
後藤謙次
「前会長の米倉弘昌と安倍首相の間には、確執がありました。
何しろ首相は、米倉氏を『あの人』と呼び、名字を口にしなかったほどです。」
2012年12月の衆院選挙の前に、安倍晋三・自民党総裁が主張する「異次元の金融緩和」を、米倉は「無鉄砲」と批判した。
しかし選挙で自民党が圧勝すると、米倉の態度は一変し、釈明をして「安倍氏からお叱りを受けた」と明かした。
その後、安倍政権は米倉外しを断行する。
経済財政諮問会議の議員には、経団連からは副会長の佐々木則夫を選出した。
産業競争力会議でも、経済同友会を中心に選出した。
経団連は焦り、新会長となった榊原は、安倍政権の積極支持を鮮明にした。
後藤
「7月4日に、経団連の副会長である中村芳夫氏に、内閣官房参与の辞令が交付されました。
これで、安倍首相と経団連の『手打ち』が行われた事になります。」
(政界と財界の行動って、ヤクザみたいですね。手打ちって…。)
榊原・新会長は、経団連の政治献金の復活を検討している。
(※その後、これは実行されて、自民党は歓迎を表明した)
須田慎一郎(ジャーナリスト)
「安倍政権の特徴は、経団連・経済同友会・新経済連盟の3団体に、政策立案を競わせている点です。
競わせることで、不満を最小化する事に成功しています。
この絵を描いたのは、菅義偉・官房長官と、飯島勲・内閣官房参与です。」
ここに加わるのが、竹中平蔵だ。
彼は、人材派遣会社のパソナ・グループで会長を務めており、財界人でもある。
佐々木実(ジャーナリスト)
「アベノミクスにおける財政・金融政策は、オーソドックスなケインズ政策です。
そこに竹中氏が、新自由主義の政策を加えている。」
ちなみに竹中平蔵は、菅とは良好な関係で、飯島とは関係が悪いという。
安倍政権が誕生してから『安倍晋三が会談している財界人』は、1位は葛西敬之(JR東海の名誉会長)で、3位は古森重隆(富士フィルム会長)である。
この2人は、安倍の応援団である「さくら会」のメンバーとされる。
古森は、第1次安倍政権ではNHK経営委員長を務めている。
7位の牛尾治朗(ウシオ電機会長)は、小泉首相のブレーンを務め、安倍とは縁戚関係がある。
4位の今井敬(新日鉄住金の名誉会長)の甥にあたる今井尚哉は、安倍の政務秘書官を務めている。
秋野充成(ファンド・マネージャー)
「安倍首相は、積極的な外交で日本製品を売り込んでいます。
JR東海の葛西氏と頻繁に面談しているのも、リニアモーターカーの整備などのためでしょう。
榊原・経団連会長の東レも、水処理で輸出をしています。」
三橋貴明(評論家)
「今の財界は、グローバリズムの信奉者しか居ません。
つまり、『日本人の人件費が下がれば、国際競争力が上がる』とする人達なのです。
例えば55年体制の頃には、政府の審議会に労組の代表が加わっていました。
労組や中小企業では、『人件費の上昇は、購買力の増加になる』と考える傾向があります。」
菊池信輝(社会学者)
「安倍政権は、賃上げと残業代カットを同時に進めるという、『アクセルとブレーキを両方踏むような政策』をしています。」
安倍政権では、大企業の利益が優先され、国内の雇用は軽視されている。
「非正規雇用を増やして人件費を安く抑え、大企業は輸出で儲ける」という政策は、以前にも実施された。
それが、小泉政権による『実感なき好景気』だった。
佐々木実
「議事録を見ると、『外国の投資家が日本をどう見ているか』という話が多い。
竹中氏の活躍は、株価ばかりを重視する安倍政権の無節操さを示している。」