数日後に決勝戦がある『サッカー男子のアジア・カップ』ですが、日本はUAEと戦って敗れ、準々決勝での敗退となりました。
この大会では、日本は優勝候補とされており、実際にかなり良いサッカーをしていました。
グループ・ステージでは、3勝をあげて1位通過をしました。
UAE戦でもずっと押し込んでいたのですが、チャンスで得点できず、PK戦にもつれ込んで敗れました。
私は、この大会で日本の行った4試合を、すべて観ました。
その感想を書きます。
日本は、基本的に良いサッカーをしていましたよ。
グループ・リーグの3試合では、守備が非常に安定しており、危なげない試合運びを続けていました。
以前の男子代表は、格下が相手の時でも、集中力を欠く時間があって何度かピンチを招いたものですが、その欠点は克服されつつありますね。
UAE戦でも、失点した場面以外では、良い守備を続けていたと思います。
UAE戦では、得点できる決定的な場面を次々と作り、攻撃が機能しているのは明らかでした。
だが、素晴らしいラスト・パスを受けて、ゴールに入れればいいだけの場面で、なぜか外し続ける選手たち…。
私は何度も、「このパスなら、俺でも決めるぞ」と天を仰ぎましたよ。
UAEとの試合後に、選手たちは「チャンスで決めていれば勝っていた」「日本は前回大会よりも良いサッカーをしていた」とコメントしました。
全く同感です。
翌日の新聞には、「日本の永遠の課題である、決定力不足」と書かれていましたが、残念ながら否定できない状況です。
そろそろ克服してほしいのですが。
決定力不足については、「シュート練習をもっとしろ」と言う方もいますが、代表クラスの選手ならば、すでにかなりのシュート練習を積んでいるはずです。
『いざとなると力んでしまうこと』、これが原因でしょう。
要するに、メンタルの問題だと思います。
UAE戦のPK合戦では、最初のキッカーの本田圭佑さんは力んだあまり、枠から1m以上も外す信じられないようなミス・キックを披露しました。
あれを見た時、「日本選手では屈指のメンタリティを持つ本田でさえも、いざとなるとここまで自分を見失うか……」と、衝撃を受けました。
まあ、しょうがないです。
PK戦になった時点で、負けみたいなものだし。
W杯決勝のPKでチップ・キックを決められるジダン選手のほうが、人間離れしているのでしょう。
あの時(2006年W杯の決勝)のチップ・キックには、本当に驚きましたねー。
「お前は人間か? 凄すぎるよ、そのハート…。そして実行して決めきる技術。これが世界一のサッカー選手か。」と、改めてジダンさんの格の違いに気付かされ、圧倒されました。
本田さんがあのレベルになった時、日本はW杯で優勝するのだと思います。
さて。
今大会での日本を見ていて、不満を持ったことが、2つあります。
『試合日程が詰まっていて厳しいのに、ずっと同じ選手をスターティング・メンバーで使い続けたこと』
『控えの選手に、即戦力にならない者が多数いたこと』
この2つが、早期敗退の大きな原因だと、私は思います。
私が大きな疑問を感じたのは、グループリーグ第3戦の対ヨルダンでした。
すでに2連勝していた日本は、スタメンを替えてもいい場面だったのに、1人もメンバーを替えなかったのです。
UAE戦では替えてくるかと思いましたが、そこでも替えませんでした。
私はその時に、「同じスタメンで全6試合を戦っていく気なのか? それは無謀だぞ。」とアギーレ監督の判断に強い違和感を持ちました。
UAE戦では、日本は開始早々に失点をしました。
あれは、油断したのが理由ですが、油断したのには疲労が溜まっていたのもあると思います。
フレッシュな選手をスタメンに入れて新陳代謝をしていかないと(主力を途中で休ませないと)、連戦が続く大会では優勝できません。
采配ミスだと思います。
スタメンを替えなかったのは、ベンチ・メンバーに期待できる選手があまり居なかったためでしょう。
日本のベンチ・メンバーは、代表戦にほとんど出場した事の無い選手が多く、計算できる選手は柴崎さん、武藤さん、今野さん、くらいしか居ませんでした。
全く使う気のない選手を、なぜベンチに置くのか。
勝つ事を考えるならば、大久保さんや青山さんなど、すでに代表で実績のある実力者を招集したほうが良かったのではないでしょうか。
彼らを呼んだ上で、疲労の出てきた選手の代わりにスタメンで起用する道があったはずです。
宇佐美さんのような、若手で伸び盛りの選手をベンチに入れて、使ってみるのも良かったでしょう。
さらにUAE戦では、選手交代枠の使い方にも、違和感を持ちました。
アギーレ監督は、後半が始まってしばらくしても日本が得点できないのを見ると、『3人の交代枠を全て使う』という、賭けに出ました。
グループ・リーグの試合だったら、延長戦が無いので、交代枠を早めに使い切るやり方も1つの方法として認められます。
しかし決勝トーナメントに入ったら、同点の場合は30分の延長戦に入ります。
だから普通は、交代枠を1つは残しておくものなんです。
実際に、UAE戦では延長に入ってすぐに、長友さんが肉離れを発症してしまい、交代したほうが良い状況になりました。
本来だったら交代枠が残っているので代えられる場面ですが、枠が残っていないため長友さんは出場し続けて、柴崎さんがサイドバックをする事態に追い込まれました。
試合後に長友さんは、「私が負傷した事で、皆に迷惑をかけてしまいました。本当に申し訳なく思います。」と反省の弁を述べました。
しかし、彼は悪くないです。
長友さんは、第1戦から全力プレイをしていて、UAE戦でも誰よりも動いているように感じました。
私はUAE戦でも走りまくる彼の動きを、「頑張りすぎなんじゃないか?」と少し心配しながら見ていました。
中2~3日で試合に出るのを続けて、毎試合で全力プレイするのは、危険だと思います。
まさか負傷するとは思いませんでしたが、彼の頑張りを批判する気はいっさい生じません。
彼は手を抜く事の出来ない生真面目なタイプなので、監督やスタッフがコンディションをきちんと見ておかなければならなかったのです。
長友さん、本田さん、遠藤さん、などは、第3戦では休ませるべきでしたよ。
あそこで休ませなかった事が、長友さんの負傷に繋がったと思います。
私は、アギーレ監督の仕事ぶりを見てきて、「前任者のザッケローニよりも実力で劣る」と考え始めています。
まだ新体制がスタートして時間が経っていないので、確信にはなっていませんが、彼の采配には深みを感じないのです。
選手たちからは頑張っているのをひしひしと感じるし、個々の能力は上がってきています。
それなのに、八百長問題もあってアギーレさんが足を引っ張っているのじゃないかと。
くり返しになりますが、基本的には良いサッカーをしています。
最近は、攻撃が多彩になってきているし、守備も安定してきています。
それは、ザック時代に選手間の連係をしっかりと高めてチーム基盤が確立されており、その遺産をベースに欠点をつぶしてきた成果です。
総合力では間違いなく上がっていますが、それが結果に繋がらない。
方向性は正しいのですが、飛躍するにはまだ物足りない感じがあります。
スタメンの見せているサッカーには不満はないので、ベンチ・メンバーを改善してほしいです。
スタメンに遜色のないメンバーを置くべきだし、それは可能だと思います。
前述しましたが、大久保さん、青山さん、宇佐美さん、は試してほしいです。
Jリーグで良い働きをしていますからね。
他には、水本さん、中村憲剛さんも良いです。
世代交代を叫ぶ人もいますが、Jリーグを見る限りでは、若手で傑出した選手はほぼ見当たらないです。
いいんじゃないですか、年齢はどうでも。
純粋に活躍している実力者を選んだほうが、Jリーガーのモチベーションも上がると思います。
有識者や柴崎選手も言っていますが、『フル代表は、育成の場ではなく、常に最高のサッカーを披露して日本サッカーを世界に示す場』です。
世代交代を主張する方は、フル代表を育成の場だと勘違いしている感じがあります。
若手にフル代表デビューのチャンスを与える事は大切ですが、育成をするのはU-○○やJリーグでいいじゃないですか。
昔は(Jリーグが始まってからしばらくまでは)、育成環境がまだ整っていなかったため、フル代表じゃないと国際試合をなかなか経験できませんでした。
だから、若手選手に国際試合を経験させるために、まだ実力の無い選手でもフル代表に入れて試合に出場させる事もありました。
でも今は、U-17とかU-21とか細かく分けられて、それぞれが国際大会に出場して経験を積むことができます。
ですから、あえてフル代表に育成要素を持たせる必要はないと思うのです。
国際舞台を数多く経験したいのなら、海外のクラブチームに移籍すればいいのだし。
フル代表は、基本的に年齢に関係なく最強のメンバーを招集して、最高のサッカーを続けて欲しい。
フル代表がふがいない試合をすると、日本全体のサッカー熱が下がるし、私の場合だと見ていてストレスが溜まります。
新しい選手を試すならば、親善試合の時に呼んで、途中から出場させれば良いです。
本当に素晴らしい選手は、柴崎さんや武藤さんがそうだったように、少しの出場時間でも輝きを見せるものです。
(ちなみに女子の場合は、まだ育成環境があまり整備されていないので、フル代表に実力では見劣りする若手でもあえて呼んで、そこで国際試合を経験させるのもアリだと思います。)
今のサッカー男子代表は、「負け癖」が付いていると思います。
10連勝くらいして、勝つことに慣れないと、ずるずると次のW杯まで進んでいく気がします。
年齢に関係なく、最高のメンバーを集めた方が、勝てるだろうし「勝ち癖」を獲得できるのではないでしょうか。
私は、代表は強くなってきていると思うし、強豪国と試合して勝てるだけの実力もついてきていると思います。
最高のメンバーを集めて、最高の出来を見せれば、10連勝だってできると信じています。
それなのに、負けてしまう姿を数多く見せられるので、本当に辛い気持ちなのです。
相手が強豪国だと、「負けても仕方ない」とか「1点差での負けならOKだ」みたいな空気になりがちですが、それでW杯の優勝を目指していると言えるのでしょうか。
代表戦ならば、どんな試合でも、どんな相手にでも、常に勝ちにいけ!!
こう思うのです。
相手がブラジルとかだと、試合前から「負けても仕方ない」みたいな空気が、選手にも日本の観客にも出ます。
あれが、どうしても許せない。
その一方では、『勝利よりも大切な事がある』とも思います。
2013年にあったコンフェデ杯では、日本は対イタリア戦で、負けましたが素晴らしい試合をしたために、世界中から賞賛されました。
私も、心から感動しました。
あの試合は、ザック・ジャパン時代の最高の試合の1つだと思います。
ああいう気持ちの入った試合を、常に見せてほしい。
昨年の対ブラジル戦のような、何となく期待できそうな若手をフル代表で先発出場させて、0対4で負けるとかは、勘弁してほしいのです。
日本のサッカー・ファンへの侮辱に等しい行為ですよ。
現在のスタメンには不満はないと書きましたが、GKだけは強い不満を持っています。
私は、代表の正GKには、昨年から言っているのですが、西川さんを推します。
UAE戦の失点では、スロー再生を見ると分かるのですが、川島さんは逆を取られたのかダイビングが遅れています。
あの場面は、シュートを打つ選手が居る位置や、打つ選手に飛んできたボールの位置・角度から判断して、9割方は逆サイドにシュートが来る局面です。
それなのに、なぜ反応が遅れるのか。
ニアに来る可能性は低いでしょ。
ニアにはシュート・コースが無いし、ボールはバウンドしていてボレー・シュートしか選択肢がない中で、ニアに打って決めるのは檄ムズです。
ワールドクラスの選手じゃない限り、あそこではファーに打ちますよ。
川島さんのポジショニングを見ると、ニア・サイドのコースを切れていないです。
だから、どっちのサイドに来るか分からない状況になってしまった。
クオリティの高いGKなら、きちんとニアは切って、ファーに来るのを待ち構えると思います。
あのシュートは、代表GKならば枠外に弾き出してほしい。
それほど早いシュートじゃなかったし、ボールの高さも跳びつきやすい高さでした。
かすりもしないなんて、どうかしていると思います。
もちろん、シュート・コースを限定させられないCBにも問題あるわけですが。
最後になりますが、UAE戦で長時間の出場をした柴崎さんには、本当に感心しました。
素晴らしいポジショニングとパスをしていました。
特に惹かれたのは、パスを出す時に、受け手の動きをしっかりと見て、利き足にぴたりと合うピンポイントのパスを出し続けていた事です。
それに、相手選手の位置を見て、カーブをかけたり浮かしたりしてパスを出していました。
パス・カットされない工夫を、常に怠りません。
私は彼の動きを見ていて、『パスのセンスならば、FCバルセロナでも通用するレベルだ。守備力とフィジカルがアップしたら、バルセロナからオファーが来てもなんら不思議はない。』と感じましたよ。
空いたスペースを見つけて、そこに走り込んでボールを受けるセンスも、ワールドクラスだと思います。
もはや、日本の至宝と呼びたいくらいです。
彼は、とても頭脳的なプレイをしますねー。サッカーをする子供たちは参考にしてほしいです。