なでしこジャパン
アルガルベ杯の感想、代表強化の方法について
(2015.4.7.)

先月の上旬におこなわれた女子サッカーの世界大会「アルガルベ杯」では、日本代表の試合はすべてTV観戦しました。

その感想と、なでしこジャパンの強化方法について、書きます。

アルガルベ杯では、日本はグループリーグで1勝2敗の成績となり、その後に1試合して勝ち、全体で9位の結果となりました。

私は、彼女達の全4試合の闘いぶりを見て、「これではW杯の連覇は厳しい」と痛感しました。

負けた試合では、単に負けただけでなく、ゲームの主導権を相手に完全に握られていたからです。

ところが驚いた事に、佐々木監督と宮間キャプテンはこの結果に対して、「日本は国内リーグが始まる前で、選手のコンディションが上がってなかった。」と弁解しました。

佐々木監督は、「この大会は、調整のためのもので、勝ちに行かなかった」みたいな事まで口にしました。

私は全4試合を観たので断言できますが、日本代表は明らかに勝ちに行っていたし、招集したメンバーも監督が考えるベスト・メンバーだったと思います。

実際に、大会が始まる前には「この大会はW杯の予行演習として極めて重要であり、優勝を目指す」と、監督も選手も言っていたのです。

それなのに、負けをきちんと認めないコメントをしているので、「現実から逃避している。大丈夫だろうか?」と心配になりました。

佐々木監督と宮間キャプテンの態度からは、ものすごい違和感を感じましたね。

「素直に負けを認めなさい」と思います。

私は、日本に勝利したデンマークとフランスのサッカーを見て、「女子サッカーは猛烈な勢いで進化している」と感じました。
組織で連動して戦う力を、各国が身に付けてきています。

フランスは、2012年オリンピックで日本と対戦した時とは、サッカーの質が全く違いますよ。

なでしこジャパンの試合は欠かさずに見ているので、各国の強さはだいたい把握していますが、 今大会を見て感じたのは『日本は今、世界で5位くらいだ』です。

現状だと、日本が6月のW杯で連覇する可能性は、「5%」だと思います。

私は、日本代表は良いサッカーをするようになってきていると知っているし、監督やスタッフや選手を非難する気は一切ありません。

なでしこジャパンは、確実に進化してきました。

重要なのは、『それ以上のスピードで、強豪国は進化している』という事実です。

女子サッカーはこのところ、世界中で普及率を上げているし、各国は育成に力を入れています。
だから、日本の力が相対的に落ちてきても、仕方ないです。

上記の現実を受け入れつつも、私は日本のW杯連覇を見たいです。

彼女達が、笑顔全開でW杯を掲げるのを、見たいです。

そこで、ここからは「どうすれば短期間で代表が強くなるか」を書きます。

鍵となるのは、『選手の選考・起用』です。

W杯まであと2ヵ月の今、戦術とかフォーメーションには手を出せないし、育成も無理ですからね。

私は昨年の10月くらいから、「なでしこリーグ」をたまにTV観戦するようになりました。

そうして1部に所属する全チームについて、1度は試合を見ました。

で、私が「この選手は凄いサッカー・センスをしている」と脱帽した人が、2人居ます。

それは、「川村優理さん」と「清家貴子さん」です。

この2人について、詳しく言及しましょう。

「川村さん」は、すでに代表入りしており、代表ではセンターバックをしています。

しかし、クラブチームではボランチなのです。

私は、代表で見せる「彼女の守備力の高さ」に注目し、彼女が代表で出始めた時から、「彼女は素晴らしい守備力をしている、代表に定着させた方がいい」と書いてきました。

この事情があるので、彼女が所属するベガルタ仙台の試合を初めて観る際は、「代表とは違って、ボランチで使われているのか。ふむふむ、どの程度やれるのかな。」と、ポジション適性をやや疑問視していました。

ところが!

試合が始まってすぐに、ボランチで躍動する川村さんに、私は完全に圧倒されました。

ポジショニングの良さ、ロング・パスを正確に蹴り続ける技術、ゲームを組み立てる戦術眼、守備力の高さ。

私は見ていて、「凄い! 宮間と同等のパス技術とゲームメイク能力を持ちつつ、宮間よりも守備力が高いぞ。」とすっかりうなってしまいました。

彼女は仙台ではキャプテンをしており、試合中のキャプテンシーもなかなかのものです。

その存在感の強さから、「宮間の次に代表のキャプテンになるのは、川村しかない」と感じましたよ。

(※追記
この試合で川村さんはキャプテンマークを巻いていましたが、ベガルタの試合を観ていく中で、「別の人がキャプテンで、たまたまこの日は何かの事情で彼女がキャプテンを任されていた」と分かりました。

私は、ベガルタに居る選手で最もキャプテンに相応しいのは川村だと思ってます。なぜ監督が彼女をキャプテンにしないのか、不思議で仕方ない。)

要するに、川村さんの持っている能力は極めて高いのです。

それなのに、代表ではその力を活かしきれていません。

本来のポジションではないCBでの起用は、それでいいと思います。
日本代表のボランチは、層が厚くて、他に良い選手がたくさんいるからです。

問題なのは、彼女にはまだ自信が無くて、代表戦だと、持っている素晴らしいパス技術とゲームメイク能力を発揮しない事です。

私は、川村さんに言いたい。

「お前は凄い才能を持っているんだから、もっとゲームメイクに参加しろ。遠慮することはない、後方からがんがんゲームを組み立ててしまえ。」

日本代表の大きな問題点は、『攻撃の時に宮間さんのゲームメイクに依存しすぎていて、宮間さんが厳しいマークを受けてパフォーマンスが落ちると、 それに連動してチーム全体の攻撃力が一気に低下してしまうこと』です。

もっと他の選手も、ゲームの組み立てに参加したほうがいいです。

誰か1人にゲームメイクを任せるのは、時代遅れだし、それでは強豪国には勝てない。

例えばW杯で優勝したドイツ代表・男子では、エジル、クロース、ラーム、シュバインシュタイガーの4人でゲームメイクをしていました。

レアル・マドリードでも、モドリッチ、クロース、イスコ、ハメス・ロドリゲスの4人でゲームを組み立てています。

FCバルセロナだって、シャビ、イニエスタ、ブスケッツ、メッシ、ラキティッチと、沢山の選手がゲームメイクに関わっています。

日本代表のCBは、色々な選手が試されていますが、川村さんと熊谷さんのコンビがベストだと思います。

とにかく、川村さんには「自分は将来のキャプテン候補であり、チームの中心としてやらなければならない存在だ」という自覚を持ってほしい。

それぐらいに、私は彼女を評価しています。

次に、「清家貴子さん」についてです。

彼女は浦和レッズにいる選手でFWですが、初めて見た時には17歳でした。(現在は18歳になっています)

まだスタメンではなく、後半の途中から出てくるのですが、最初に見た時から「もの凄いサッカー・センスをしている。澤以来の逸材ではないか。」と感じています。

もっているポテンシャルが圧倒的なので、まだクラブチームでスタメンになっていない状態ですが、代表入りさせるのもアリだと思います。

順調に成長していけば、5年後には大儀見さんを超えるレベルのストライカーとなる位の才能です。

サプライズ招集をするならば、彼女を選んでほしい。

上記した2人は図抜けた才能を持っていますが、それに次ぐサッカー・センスをしていると思ったのが、「柴田華絵さん」と「阪口夢穂さん」です。

阪口さんは代表入りしているし、高評価が確立しているので、ここでは説明を省きます。

1つだけ言いたいのは、「代表でもっとゲームメイクしろ。お前なら出来る。」です。

「柴田さん」は、浦和に所属しており、昨年は猶本さんが怪我で離脱したので、代わりにボランチをしていました。
私は、「猶本よりもいいじゃないか」と思いましたよ。

彼女は色んなポジションをできるし、ドリブル、パス、シュート、守備、のすべてで高レベルです。

そして、何よりも根性があります。

今度の親善試合に招集して、W杯前に1度は試してほしい。
柴田さんなら、チャンスをものに出来るでしょう。

さらに、別格の存在として、「澤穂希さん」がいます。

彼女は先シーズンはやや切れのないプレイでしたが、今シーズンは非常に好調です。

彼女の所属するINAC神戸について、開幕から2試合を観ましたが、素晴らしいプレイを見せています。

ゲームの組み立てや、試合のコントロール能力は、突き抜けた領域にあり、次元が違いますよ。
以前よりもアップしているかもしれません。

「川村さん」「清家さん」「阪口さん」「柴田さん」「澤さん」という、日本選手の中で最もセンス溢れる人のうち、現状では2人しか代表に招集していません。

これは、もったいなさ過ぎです。

もうW杯に間近いので、なでしこリーグにデビューしたての清家さんを試す余裕は無いかもしれませんが、柴田さんと澤さんは呼べるでしょう。

前述したように、今の代表に足りないのは、ゲームメイクの力です。

澤さんを呼んだ上で、『宮間、阪口、川村、澤』の4大ゲームメイカーを、試合ごとに上手く使い分けましょう。

普通の試合では4人のうち2人を出場させて、重要な試合は3人出し、一番勝ちたい試合では4人全員を出せばいい。
この起用法をすれば、4人の疲労を抑えつつ、W杯の厳しい日程を戦っていけます。

そして、彼女達にがんがんゲームをコントロールするようにさせて、リーダーシップを発揮させるのです。
上下関係なしに。

こうすれば、どこからでもゲームを作れて、魅惑的なサッカーができます。

この創造的なスタイルは、協調性のない選手達だと破綻しますが、彼女達ならば大丈夫です。
日本選手は、協調性の固まりですから。

アルガルベ杯で見せたサッカーは、勝てないだけでなく、見ていて面白くなかったです。
もっとイマジネーションのあるテクニカルなサッカーが出来るはずです。

守備に関して言うと、サイドバックは上尾野辺さんが1番良いと思います。
上尾野辺さんを、大事な試合ではスタメンに起用してほしいですね。

私は、最近の近賀さんはパッとしないと思います。
上尾野辺さんと有吉さんが、サイドバックのファーストチョイスだと考えます。

女性に対して「彼女を代表から外せ」と厳しい事を言うのは気がひけるのですが、日本代表がW杯で優勝する姿を見たいので、あえて言います。

私は、永里亜紗乃さんの代表でのプレイは、1度も良いと思った事がありません。
はっきり言って、なぜ彼女が代表入りしているのか、全く理解できません。

あと、高瀬さんも強豪国が相手だと通用していません。

彼女たちを外して、柴田さんや澤さんに替えてほしいです。

ここまで述べた選考・起用をすれば、なでしこジャパンは1.3倍くらいの戦力になると思います。

ぜひ検討して下さい。

(2015.4.25.に追記)

W杯の予備登録メンバー35人が、発表されました。
ここからW杯出場のメンバーが絞られていくわけですが、私として不満を感じる選考です。

澤さんはメンバー入りしましたが、柴田さんと清家さんは入ってません。

そして、永里さんと高瀬さんが入っている…。
高瀬さんはなでしこリーグで負傷して、試合に出ていない状態なのにです。

乗松さん、京川さんという、若手で伸び盛りの選手が入ったのが、希望の持てる所ですが、全体として保守的な選考という印象です。

最終的にアルガルベ杯と変わらないメンバーに落ち着いた場合(調子や才能よりも実績重視で選考された場合)、W杯では早期敗退もあり得ると思います。

大きな結果を残した監督が続投した場合、自分と共に結果を出した選手に固執してしまい、保守的な選手選考をして惨敗する傾向があります。

2006年W杯で優勝したイタリアのリッピ監督が、その時のメンバーからほとんど変えずに2010年W杯にいどんで惨敗したのが、代表例です。

佐々木監督がそうならない事を、期待しますよ。


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