5月28日に行われた志位和夫さん(日本共産党)の国会質問、その紹介の続きです。
質問の後半部分では、集団的自衛権の行使容認の問題を取り上げ、
志位さんは「トンキン湾事件」と「イラク戦争の開戦理由となった大量破壊兵器」をテーマに設定してます。
私は、2つのテーマについてすでに真実を知っており、このウェブサイトでも扱っています。
だから、それがアメリカ史の暗黒面をえぐり出せるテーマだと熟知しています。
その2つを国会の場で取り上げる志位さんのセンスの良さには、完全に脱帽しました。
「この問題を出すか! 志位さん、あんた凄いよ。良い所を突いていくなー。」と、心底から感心しましたよ。
記事を読んでいくと分かりますが、質問された安倍内閣(日本政府)は白旗を揚げる状態で、志位さんの完勝です。
○ 5月28日の志位和夫(日本共産党)の国会質問
志位
アメリカがした大規模な戦争の「ベトナム戦争」と「イラク戦争」。
この2つの戦争に、日本政府は深く関与しました。
ベトナム戦争では、アメリカを全面的に支持し、在日米軍基地をベトナム攻撃の基地として使用させました。
イラク戦争の時も、アメリカの先制攻撃を全面的に支持し、自衛隊をイラクに派遣して戦争に協力しました。
この2つの大戦争について、日本政府はどのような総括・検証を行ったのでしょうか。
この事は、この安保法案の論争で避けて通れない問題です。
まずベトナム戦争についてです。
この戦争がアメリカによる侵略戦争だった事は、歴史的事実でしょう。
この戦争では、アメリカが本格的にベトナム派兵する契機となったのは、「トンキン湾事件」でした。
アメリカ政府は、1964年8月に、「ベトナム北部のトンキン湾で、アメリカの駆逐艦が2度にわたって北ベトナムの魚雷に攻撃された」と発表しました。
そして、それに対する自衛権として、アメリカ軍は北ベトナムへの爆撃(北爆)を開始し、大規模の地上部隊を投入しました。
ところが、アメリカ政府の「駆逐艦が攻撃された」という発表は、捏造だった事が明らかになりました。
1971年にリークされた『ペンタゴン・ペーパーズ』では、「64年2月からアメリカは、北ベトナムで秘密の軍事作戦を開始していたこと」、「トンキン湾事件は米軍の挑発によって起きたこと」が明らかにされました。
さらに、当時にアメリカ国防長官だったマクナマラ氏は、回顧録で『8月4日の魚雷攻撃は米軍の捏造だったこと』を明らかにしています。
日本政府は、このトンキン湾事件について、どのような認識を持っているのですか?
岸田・外務大臣
この事件については、「日本政府は有権的な判定をする立場にない」、これが我が国の立場です。
ペンタゴン・ペーパーズやマクナマラ回顧録は承知していますが、「アメリカ政府自体はコメントしていない」とも承知しています。
志位
確かにアメリカ政府の公式のコメントはありません。
しかし指摘したいのは、アメリカ公文書館は2002年に、ペンタゴン・ペーパーズを公文書として認定しています。
アメリカNSAは2005年に、分析官がトンキン湾事件についての論文を発表しています。
NSAは、トンキン湾事件の時の電子情報を全面的に分析し、『8月4日の北ベトナムからの攻撃は無かったこと』を証明しました。
ですから、この事件は捏造だったのは明白なんです。
当時の日本政府は、この事件に一体どんな判定をしたのか。
議事録を読むと、椎名・外務大臣は次のように答弁しています。
「公海上において、北ベトナムからの攻撃があったと
考えています。
公海上で突如として襲撃されたのですから、米軍はそれに
反撃して基地も攻撃しましたが自衛行為です。
アメリカが自衛として武力行使をしたと考えるのは、
アメリカを信頼しているからです。」
アメリカの武力行使を支持する理由が、「信頼しているから」なのです。
あからさまなアメリカ追随の姿です。
当時の政府は明瞭に、「アメリカの武力行使は正しい」と判定しています。
この時の判定は間違いだったと、お認めになりますか?
岸田
アメリカ政府は、トンキン湾事件について正式なコメントを発していません。
ですから「有権的な判定をする立場にない。コメントは差し控える。」、これが日本政府の立場です。
志位
あのねえ。
当時は「正しい行為」と言い、今は「コメントは控えたい」と言っています。
態度を変えていますよ。
だから、「当時の判断は間違っていた」とはっきり認めて下さい。
岸田
当時の椎名大臣の発言の意図について、承知しておりません。
「有権的な判定をする立場にない、コメントは差し控えたい。」、これに尽きます。
志位
今に至るも、判断の誤りを認めない。反省がない。
それでは、もう1つ質問します。
ペンタゴン・ペーパーズやマクナマラ回顧録で『トンキン湾事件は、アメリカによる捏造だ』と判明した段階で、日本政府はアメリカ政府に説明を求めましたか?
岸田
説明を求めた事は、確認されていません。
志位
今度は総理に訊きます。
ベトナム戦争について、検証もしなければ反省もしない。
それでいいのですか?
安倍
ベトナム戦争については、当時の外務大臣は当時の認識について答弁しました。
これは、今回の安保法案とは関係ないものです。
トンキン湾事件などをどう思うかは、岸田大臣の説明した通りです。
志位
当時と今では政府の見解が異なっているから質問したのに、総理から反省の弁がない。
アメリカのする事には何でも賛成して、検証もしない。
これでいいのか!
今度は、2003年のイラク戦争についてです。
この戦争も、国際法を無視したアメリカの侵略戦争でした。
世界中で反戦運動が盛り上がり、当時の世界人口62億人のうち、50億人を抱える130ヵ国以上の政府が『戦争に反対もしくは不同意』の表明をしました。
イラク戦争では、米英が先制攻撃をする最大の口実にしたのが、『大量破壊兵器』の問題です。
息子ブッシュ大統領とブレア首相は、「イラクは大量破壊兵器を保有している」と繰り返し語り、それを戦争の理由にしました。
当時の小泉首相も、「イラクは大量破壊兵器を保有している」と断定し、米英への支持を表明しました。
当時に官房副長官だった安倍総理も、国会答弁で「大量破壊兵器を廃棄させるには、武力行使もやむを得ない。だから攻撃を支持する。」と発言しています。
だが、大量破壊兵器は存在しなかった。
アメリカ政府の捏造だった事実は、今や誰も否定できません。
この事実に対して、日本政府はどのような検証をしていますか?
息子ブッシュ大統領は、「イラクの大量破壊兵器に関する情報機関の分析は、誤りだった。在職中の最大の痛恨事だ。」と述べました。
ブレア首相も、「情報の誤りに責任を感じている」と表明しました。
総理、日本政府もきっぱりと誤りを認めるべきではありませんか?
(安倍首相は岸田大臣を指差して、答弁するように促す)
岸田
イラク戦争に対する日本の考え方は、「イラク戦争の核心は、イラクが安保理決議に違反し続けて、尚かつ大量破壊兵器が存在しないことを積極的に証明しなかった事にある」です。
志位
質問にきちんと答えていません。
「大量破壊兵器についての認識が誤っていた事を認めるべきでは?」と、私は訊いたのですよ。
今度は総理が答えて下さい。
(安倍首相は出ず、岸田大臣が答弁する)
岸田
外務省は、独自に検証をしました。
その上で、「イラク戦争の核心は、イラクが安保理決議に違反し続けたことだ」と認識しています。
志位
日本政府は、検証結果というものを2012年12月21日に出しています。
そこでは、「大量破壊兵器が無かったことは、厳粛に受け止める」と言っているだけです。
結局のところ、誤りについて反省してないんです。
事実を受け止めるとしか言ってない。極めて重大です。
岸田大臣は「安保理決議を受け入れなかったのが、問題の核心だ」と繰り返しました。
しかし、どの安保理決議も、武力行使の根拠にはなり得ないものでした。
これについては、私は当時の国会で小泉総理と議論して明らかにしました。
そもそも、イラク戦争の開始直後に小泉首相は国会で、「武力行使なしに大量破壊兵器の廃棄を実現するのは不可能だから、アメリカの行動を支持するのは適当だ」と答弁しました。
また、小泉首相はメールマガジンの中で、「この問題の核心は、イラクが大量破壊兵器を廃棄しない事にあります」とはっきり言いました。
大量破壊兵器を、戦争を支持する核心に位置づけていたじゃないですか!
それなのに、大量破壊兵器が存在しないと分かると、安保理決議を持ち出してすり替えをやる。
こんな不誠実な態度はありません。
1つ訊きます。
イラクに大量破壊兵器が存在しない事が明らかになった段階で、日本政府はアメリカ政府に説明を求めましたか?
当時に安全保障担当の官房副長官補をしていた柳沢協二氏は、著書の中で「アメリカに説明を求めなかった」と証言しています。
これは事実ですか?
岸田
アメリカが公式に、「大量破壊兵器は無かった」と2005年12月に発表しました。
これによって、事実は明らかだと受け止めています。
志位
私は、「外交ルートできちんと確認した事はあるのか」と訊いているんです。
岸田
そういったやり取りは、確認していません。
志位
やってないんですよ。
アメリカの発表を聞いただけで、問い合わせをしていない。
イラク戦争の時も、トンキン湾事件(ベトナム戦争)の時も、日本政府は無条件に支持して、情報の捏造が分かっても説明を求めない。
そして今に至っても、検証もしない。反省もしない。
総理、こんな事でいいのですか?
安倍
イラク戦争に対する我が国の立場は、岸田大臣が答弁した通りです。
当時、イラクのフセイン大統領は大量破壊兵器を所有していない事を、証明できるのにしなかった。
そして、国連決議に違反し続けた。
これが核心だというのが、検証結果です。
米英は、イラクの情報収集を主体的に行い、その誤りを認めたのです。
志位
私は「こんな外交姿勢でいいのか」と訊いたのですが、反省がありません。
こういうアメリカ従属の政府が、集団的自衛権の行使をできるようになったら、いかに危険か。
今後、第2のトンキン湾事件や第2の大量破壊兵器問題が起こったら、あなた方はアメリカ政府の発表をオウム返しで口にし、協力するでしょう。
これまでは、アメリカ軍への支援には歯止めがありました。
しかしこの法案が通れば、根本から変わっていきます。
アメリカの無法な戦争に、自衛隊は武力行使をもって参戦する事になります。
日本は侵略国の仲間入りをする事になり、危険性は測り知れません。
この安保法案は、憲法9条を踏みにじる違憲のものです。
この戦争法案は、廃案を求めます。