安保法案に賛成する人々の論理で、私がおかしいと思う点
(2015.7.17.)

国民の過半数が「違憲」だと考え、憲法学者の9割以上が「違憲」だと考え、国民の8割以上が慎重な審議を求めている『安倍内閣の提出した安保法案』。
残念なことに自公政権は「強行採決」を衆院で行いました。

多くの方が、「これは民主主義の危機だ」「今の安倍政権は独裁政治をしている」「立憲主義を損なう暴挙で、これを見過ごしていたら憲法は無きものになる」と言っています。

全く同感です。

私は、安保法案についての論争を見ていて、反対する方々(廃案や撤回を求める方々)に説得力を感じます。

彼らのほうが、歴史を勉強している感じ(過去から学んでいる感じ)があるし、世界情勢を的確に分析していると思います。

多くの国民もそう感じているからこそ、徐々に世論調査で反対が増えているのだと考えます。

一方で、法案に賛成をし続けている方も、まだかなりの数で居ます。

そこで今回の日記では、賛成派の語る意見(論理)について、私が感じてきた違和感を書き、彼らの論理のおかしな部分を指摘しようと思います。

賛成派の方々を見ていると、だいたい次の意見に集約されます。

「国際的な安全保障の環境が、激変している」「今のままでは、日本の安全は守れない」

「中国の台頭が著しく、逆にアメリカは力を失っている。
 だからこそ、日本が軍事的に貢献しなければならない。」

「イスラム国のようなテロ集団は、今までの日本のやり方では対処できない」

この意見について、反論していきます。

まず考えたいのは、「中国は本当に脅威なのか」という事です。

安保法案に賛成する方のほとんどは、中国の軍事力の高まりを見て、「放置すれば大変な事になる、アメリカでも止められない、だから日本がもっと前に出よう」と言います。

確かに中国は、軍事費を膨らませ続けているし、驚くのは国の成長率よりも軍事費の増加率の方が高いのです。

私が思うに、これは異常な状態で、長く続くものではないです。
戦前の日本でもそうだったのですが、軍事費を突出させると、長い目で見ると国力を落とします。

私は、今の軍事費を聖域扱いする中国の政策は間違っていると思うし、長期的に見れば国力を衰退させると考えています。

そもそも中国は、少子高齢化が日本同様に進んでいて、成長率は落ち続けています。

今だけを見れば中国は凄いように見えますが、この勢いは5年も続かないでしょう。

実際に、株式市場や住宅市場はバブル状態で、もうすく弾けるはずです。

私が報道で驚いたのは、「中国の大学生の2割が、株に手を出している」というものでした。
こんな異常な状態は、絶対に長く続かないです。

中国政府は、株式市場が暴落しそうなので、年金基金を株式市場に投じて株価を維持しようとしました。

これには驚きましたね。共産主義の国でやる事じゃないですよ。

少し話は脱線しますが、今の中国共産党は、共産主義の党ではないです。

年金の積み立てを、株式に投じる?
共産主義のどこから考えたら、こんな発想になるのか。あり得ない。

私が観察するに、中国共産党と一番政策が似ている日本の党は、自民党です。

日本人は、「中国共産党と日本共産党を近い」と思う人も多そうですが、政策を見れば自民党が似ていますよ。

年金基金を株式市場にぶち込む、言論を弾圧しようとする、大型公共事業で景気対策をする、軍事力の強化を目指す。
似ているじゃないですか。

「国民の民意が政治に反映されない」という点では、現状だと日本も中国も大差ないです。

日本人の多くは「中国は民主的でない」と非難するわけですが、「じゃあ日本では民主的な政治が行われているのか」と問われたら、安倍政権の暴走が続いている現状では口をつぐむしかないでしょう。

自民党を支持しておいて、中国共産党を非難するなんて、論理的におかしいと思う。

両党は政策や発想が近いからです。

話を戻します。

私は、中国は少子高齢化や貧富の格差から、成長率はこれからも落ち続けると見ます。

安保法案の賛成派はやたらと中国の脅威を言うのですが、このままドンドンと中国が強くなっていくという見方は、正しくないと思うのです。

さらに別の角度から言うならば、もし中国が力を付けていってアジアで最強国になるのならば(アメリカが対抗できない勢力になるのならば)、中国と友好関係を築くのが正しいのではないですか?

外交の基本は、『一番強い国とは対決しないようにする』です。

安全保障の専門家と称する人たちは、「中国は危険なほどに力を付けてきている。その一方でアメリカは弱体化している。米中の立場は以前とは違う。だから日本が軍事面でアメリカをサポートしなければならない。」と言います。

この意見は、一見するともっともらしいのですが、危険なほどの力を付けている国に対して、今までよりも遥かに前に出ていて対峙するなんて、愚策ですよ。

安全保障の専門家と称する人たちは、「私たちはリアリストだ。現状をシビアに捉えている。」と言います。
だとするならば、もし本当に「中国がアジアで最強国になる」と予想するのならば、「日米同盟を破棄して、中国と結ぼう」というリアルな考えが浮かんでもおかしくないはず。

安全保障の専門家と自称している方々は、なぜかアメリカを(日米同盟を)盲信しているのです。

(ちなみに私は、いかなる軍事同盟にも反対です。
 たとえ中国が最強になっても、中国と軍事同盟を結ぶのに
 反対します。

 「軍事同盟」というもの自体に、いかがわしさや古臭さを
 感じてしまい、共感できないのです。)

ぶっちゃけた話、アメリカにとっては、日本よりも中国のほうが重要な存在になってます。

貿易額は増え続けているし、首脳陣の交流も活発です。

日本人の多くは(特に安保法案の賛成派は)、日米同盟を絶対視(神聖視)していて、「いざとなったら必ず日本を助けてくれる」と、なぜか盲信している。

しかし、もし日本と中国がマジに対立を深めて、戦争を始めたら、アメリカはまず様子見をすると思う。

アメリカは、本気で中国とやり合う気は無いです。
それは、中国と国交正常化をした時から、一貫していると思う。

アメリカにとって中国は貿易大国で、一時的に揉めてもそれが長く続きません。

もし日本が中国と戦争するような気配を見せたら、絶対にアメリカは止めますよ。

制止しても中国と戦争をする道を日本が選んだら、アメリカは「こいつらバカだ」と思って見捨てる可能性が大です。

「米軍基地があるから、様子見なんてできない」と思うかもしれませんが、中国は「米軍基地は攻撃のターゲットにしないし、アメリカと戦う気はない。だから中立を保ってほしい。」と提案するだろうし、それにアメリカは乗ると思う。

アメリカは、中国の強さを自覚している。
朝鮮戦争で対決しているし、その後も台湾をめぐって軍事対立をしてきた。

中国は、隣国のソ連とも対峙してきたし、今ではロシアに対して優位を維持しているほどです。

中国は、米ソという2大国と、ガチンコでやりあってきた経験値があります。

はっきり言って、中国は強い国です。

日本が国民総動員で軍事国家化していた1930年代~45年までだって、中国に勝てなかったじゃないですか。

あの時に勝てなかったのに、今勝てるはずがない。

日本は、日清戦争で勝ったという成功体験があって、どこかで中国を舐め続けている。

でも、清はモンゴル系の民族が権力を握っていたもので、漢民族(中国の大多数の人々)が作った国じゃなかった。

それに、日清戦争の以前にイギリスなどの国にボコボコにされていたのです。

だから勝てたんですよ。

もしいま日本が中国と戦争したら、勝てる確率は1%も無いと思う。

地球儀を見てほしい。
中国やアメリカやロシアの国土の大きさが、嫌というほど分かる。

国土が広いという事は、資源が豊富で長期にわたって安定して戦えるという事です。
中国は、核兵器も持っている。

私から見たら、「いざとなったら中国と戦ってやる」などと勇ましいことを言う人々は、バカそのものです。

勇ましいことを言う人達は、「アメリカが日本側で参戦してくれる」というのを前提にしていると思う。
でも、戦争というのは、そんなに甘いものじゃない。

もし中国が勝ちそうだと思ったら、アメリカは中国側で参戦する可能性だって十分ありますよ。

コンピュータ・ゲームだったら、同盟を結んで友好度を100にしていれば、まず裏切られることは無いです。

でも実際の戦争では、同盟国が寝返ることだってあります。

実際に、ソ連は第二次大戦の末期に不可侵条約を結んでいたのに、日本に攻めてきたじゃないですか。

こういった事まで考えた上で、「敗戦する可能性があってでも、いざとなったら中国を叩いてやる」と云うなら、まだ分かるんですよ。

でも、そんな気概なしに中国という1対1ではまず勝てない相手と対決しようとするのは、無責任です。

ここまでの話をまとめると、『中国はこれからは思うようには成長していけない』、『中国とガチで軍事対決をしたら、日本は負ける』です。

ここから導き出せる結論は、『過度に中国を危険視したりせず、中国ときちんと向き合って友好な関係を保っていく』です。

私は、「アメリカが弱体化している」とか「米中関係は敵対関係」という議論に、激しい違和感を持っています。

はっきり言って、嘘そのものだと思う。

その嘘を前提に、安保法制が語られているのは、大問題だと考えています。

ここから少しの間、「アメリカは弱体化している」というのが嘘であるという事を書きます。

まず問いたいは、「アメリカ軍およびその基地は、アジアから撤退しているのか」です。

もし本当に弱体化しているなら、「もうアジアに基地と軍隊を置けません」となるはずです。

そうなってないでしょう?
日本にも駐留しているし、韓国にも駐留しているし、オーストラリアにも駐留しています。

旧ソ連は、崩壊する前には、他国に置いてある基地から軍隊を撤収させました。

イギリスだって、かつては沢山の国に軍隊を駐留させていましたが、国力が落ちる中で撤収させていきました。

この現象が、アジアの米軍で起きているかといえば、まだ起きていません。

ソ連が消滅して軍拡競争から離脱して以来、アメリカは1人で軍拡を進めて、2000年代に入ると「世界全体の軍事費の5割を占める」状態にまでなりました。

私に言わせれば、こんな異常な状態はなかったです。

オバマ政権になってから、前政権があまりに戦争でカネを使いすぎたので、借金を減らすために軍事費の削減に舵をきりました。

これは正しい道だし、弱体化ではなく「適正化」です。

息子ブッシュ政権の時は、何でも軍事力で解決しようとし、国連を無視したり先制攻撃を連発したり最低でした。

あの時代を基準にして、そこから見て「アメリカ軍は弱体化した」と云うのは、感覚がおかしいです。

日本の米軍基地を見ても、まだまだ沢山あるじゃないですか。

「国力が落ちて、日本に駐留し続けられません。日本から軍隊を撤収させます。」とアメリカが言ってますか?

何を見て「弱体化」などと言っているのか。

私は、世界がドルを基軸通貨としている限り、アメリカは世界最強であり続けると思う。

ただ同然でドルを刷って、それで世界中からモノを買えるのは、凄い力ですよ。
不平等そのものとも言えます。

アメリカは特権を持つ最強国ですが、だからといって米軍に日本駐留していてほしくないし、堂々とアメリカに対しても意見を述べていくべきだと思います。

安倍さんを始めとする保守派と称する人々は、
「アメリカ軍と一緒にやっていけば、日本の安全は確実に保障される(アメリカ軍は強いから、一体化を強めればリスクは減る)」と言いつつ、「アメリカ軍は弱体化していて、日本が支えないと無理」とも言う。

矛盾していますよ。

次に、イスラム国などの「新たな脅威」とされている存在についてです。

これについて、安保専門家と自称する方々は、「日本でもテロに襲われる可能性がある。今まで日本で起きなかったのは運が良かったからに過ぎない。各国と協力して、日本も対テロ戦争に参加していくべきだ。」と主張しています。

まず言いたいのは、『今まで日本でイスラム過激派のテロが起きなかったのは、偶然ではない』です。

日本は、イスラム諸国(中東の国々)で軍事力を行使してきませんでした。
その歴史があるから、イスラム過激派のターゲットにならないのです。

逆に言うと、もし何かの理由をつけてホルムズ海峡などに出張れば、ターゲットとして認識される可能性は十分にあります。

『テロの脅威を無くすために、自衛隊を海外に展開していく』なんて、嘘そのものです。

世界中に軍事基地を持って、軍隊を世界展開させているアメリカは、アメリカ国民からテロの脅威を減少させているのか?

テロを(無法な殺人を)減らしたいなら、国内で銃規制を強化したほうがいいと思う。

対テロ戦争の実態を見てみましょう。

アメリカは、無人攻撃機で空爆をしたり、武器を穏健派と認定する武装組織に渡したりしてます。

イスラム国は、アメリカやトルコが「シリアの穏健派」と考えて武器支援した組織から、派生しました。
トルコはアメリカの同盟国で、アメリカが武器を売却しています。

つまり、アメリカがイスラム国を立ち上げたと言ってもいいのです。

アメリカは、最初のうちは「アサド政権と戦う正義の人々」と持ち上げていたのに、だんだん過激化を強めて自分の言いなりにならなくなると、「危険なテロ集団」と決めた。

そして、今度はアサド政権と連携を模索し始め、自分が育てた武装組織(イスラム国)と戦い始めた。

こんな汚い戦争に、自衛隊が参加していいのでしょうか?

対テロ戦争は、「正義の集団vs残虐な集団」という小学生が見るアニメの様な単純な図式ではありません。

テロの脅威を避けたいならば、自衛隊を海外に出さないほうが良いです。

そして、もっと対テロ戦争の欺瞞を見抜きましょう。

そもそもアメリカは、「テロ組織の親分はイランだ」と、ずっと言っていたんですよ。

そのイランと国交正常化を目指し、一緒になって対テロ戦争をするなんて、呆れてしまいます。

日本のメディアの多くは、長年にわたって「イランは非民主的な危険な国だ」と報じてきました。

それが最近になって突然、「イランは中東でも数少ない民主的な国だ」と言い始めました。

これをインチキと呼ばずして、何をインチキと呼ぶのか。

イランが「比較的、中東では民主的」なのは間違いないです。

中東諸国はほとんどが王制(独裁制)ですが、イランは選挙で大統領を決めていますから。

結局のところ、悪のレッテルを貼って、不当にイランを貶めてきたんですよ。

それが、真相なんです。

安倍晋三さんらは「安全保障環境の激変」を主張しますが、冷静に見るならば、世界全体ではどんどん平和になってきています。

大混乱が続いていた東南アジアや中南米やアフリカだって、だいぶ落ち着いたじゃないですか。

今の状態を「激変」と位置づけたら、かつての状態はどうなってしまうのか。

今まで自衛隊が出ないでも良かったのに(出ないから上手くいったのです)、なぜ今になって出そうとするのか。

安倍さんは、「積極的な平和主義」を口にして、自衛隊を世界に派遣しようとしています。

語法・論法として、おかしいです。

「積極的に平和主義を推進する」ならば、憲法9条を守ればいいじゃないですか。

というか、「憲法9条を守っていきます、私は心から愛しています」と言うはずでしょ。

軍隊を押し出していくのが、平和主義?

バカでしょ、あんた。

もし本当に平和主義者ならば、武器を輸出するように国策を変えたりしません。

そんな事、発想すらしませんよ。

こんなインチキな論法で、国民を騙せると思っているのだから、呆れてしまいます。

安保法案については、沢山の方が危険性を指摘していますが、中でも『戦争体験者』が「かつての日本に戻ってしまう」と警告をしています。

私は、真の保守派ならば、彼ら『経験知』を持つ方々の声に耳を傾けると思う。

保守とは、経験や歴史からの教訓を大切にするのが、基本じゃないですか。

私から見たら、安倍さん達は保守派でも何でもなく、単なるチンピラです。

威勢のいい事を言って暴発し、尻拭いを国民に(他人に)させようとしているのですから、チンピラといって差し支えないです。

彼らの無責任な態度と発言には、幼児性を感じるし、あの年であそこまで幼稚な論理を展開するのを見ると、笑えてくる時もあります。

安倍さんらを見ていると(百田尚樹さんも含む)、小学生の低学年を見ているような気になるんですよ。

ランドセルを背負っている姿や、学校でワイワイしている姿が、彼らの表情や行動を見ていると、なぜか浮かんでくる時がある。

「晋三ちゃん! だめでしょ、そんな我儘いったら。皆が困っているでしょ。ちゃんと皆と仲良くしなさい。」と、言いたくなってくるのです。


日記 2015年7~9月 目次に戻る