安倍政権の目玉である「アベノミクス」。
これについて、『内容はほとんどなく、効果がなくて景気はむしろ悪化している』との指摘が、以前からあります。
私はその考え方に共感していますが、いよいよそれを証明する数字が揃ってきました。
私は以前から、「日刊ゲンダイDIGITAL」をたまにチェックしています。
政治を取り上げた記事に、面白いものがあるんですよ。
アベノミクスに関する記事も多くて、興味深いものがいくつもあります。
今日は、そうした記事を抜粋して、紹介しようと思います。
アベノミクスについては、だいぶ前に『安倍政権を見極める② アベノミクス』として取り上げた事があります。
なので今回は、第二回目となります。
(以下は、日刊ゲンダイDIGITALの複数の記事から抜粋)
民主党の山井和則・衆院議員は、2015年12月に内閣府に対して、『民主党政権時代と今の安倍政権で、GDPがどれだけ伸びたのか』の数値化を求めた。
その調査結果は、驚きの内容だ。
民主党の3年間は5.7%の伸びだったが、安倍政権の3年間では2.4%だったのだ。
つまり、伸び率は民主党時代のほうが2倍以上も良かった。
山井議員
「安倍政権は消費税増税などを言い訳にするのでしょうが、民主党政権でも東日本大震災があった。
それでも民主党時代のほうが上回っているのです。」
安倍政権になってから、景気は悪化している。
「貯金ゼロ世帯の割合」は、26%→30.9%になった。
「生活保護の受給世帯」も、156.8万世帯から162.9万世帯に増えた。
「非正規の労働者」は、1775万人→1971万人に増えている。
荻原博子(経済ジャーナリスト)
「アベノミクスでは、一部の大企業は潤ったが、庶民生活は追い詰められ、実質賃金は減り、消費は冷え込んだままです。」
安倍首相は「民主党政権はひどかった」と批判しているが、よく口にできるものだ。
2015年5月8日の日経新聞によると、日本では「エンゲル係数」が2014年に急上昇し、全国平均で24.3%となった。
これは、21年ぶりの高水準だ。
エンゲル係数は、『家計の消費支出に占める食料費の割合』を示すもの。
値が高いほど生活水準は低いとされる。
日本では、最近10年は22~23%台をキープしていたが、2014年に数値が上がった。
アベノミクスによる円安で、食料品の高騰を招いた結果である。
都市部のエンゲル係数は深刻で、大阪市は29.1%、神戸市は32%、名古屋市は31.6%などを記録している。
荻原博子
「都市部の貧困度は深刻です。
月収が少なくてエンゲル係数が30%近い場合、家賃などの支払いで全く貯金は残りません。
食べていくのに精一杯なんです。」
2014年の2人以上の世帯の消費支出額は、前年度から2%減った。
その一方で、食料品への支出は1%増えている。
2015年6月上旬に、安倍内閣は「実質賃金は2年ぶりにプラスに転じた」と、4月の「勤労統計調査」の速報を発表した。
だが、18日には「0.1%減」の確報を出し、下方修正した。
結局、実質賃金は『24ヶ月連続のダウン』となった。
それにしても、フザケているのは大新聞だ。
速報値を伝えた時は大きなスペースを使って「賃上げ広がる」「好循環への節目」と報じたのに、確報は小さく伝えただけだ。
斎藤満(経済評論家)
「速報値は、たかが0.1%増なのに、なぜか大手メディアは大騒ぎしました。
下方修正される可能性は、大手メディアも分かっていたはずです。
2015年5月の家計消費は、マイナス5.5%でした。
大手メディアは、景気の現状を正直に伝えるべきです。」
2016年1月8日に発表された勤労統計調査(速報)では、15年11月は5ヵ月ぶりにマイナスに戻り、0.4%減となった。
(15年7~10月はプラスだった)
実質賃金の年平均は、2000年を100とすると、2012年は99.2、13年は98.3、14年は95.5となっており、確実に下がってきている。
2014年の倒産件数が1万件を下回ったことで、安倍政権からは「24年間で最低の数字」「アベノミクスの成果」との声も出た。
だが、中小企業が次々に廃業や解散して、「隠れ倒産」している。
2014年の休廃業・解散の件数は2万6999で、過去10年で3番目に多い。
関雅史(東京商工リサーチ情報部)
「倒産件数だけでは、企業動向の全体像は把握しきれません。
中小企業の廃業は、業績悪化の廃業が多いのです。」
実は、2008年のリーマン・ショック以降、「倒産(破産)」「休業」「廃業」「解散」の合計数は、ずっと4万件近くで推移している。
日本全体の消滅企業数は、ほとんど変わっていないのだ。
市場関係者
「金融機関は、政府の圧力もあって、『倒産する前に会社を畳んだほうがいい』とアドヴァイスしているといいます。
だから倒産件数は減っていますが、中小企業の経営実態は何も変わっていません。」
「21世紀の資本」の著者であるピケティ氏が、2015年1月に初来日して、シンポジウムが開かれた。
そこで、ピケティはこう述べている。
「日本の格差はアメリカほどではない。
しかし、上位10%の富裕層の所得は、国民所得全体の30~40%まで拡大しています。
日本はゼロに近い低成長なのに、上位の所得が増えているという事は、裏を返せば購買力を減らしている人がいるという事です。
上位10%の所得が増えているのだから、所得税の累進性を高めるべきです。
消費増税をするよりも、低所得者への課税を弱めて、富裕層の資産課税を強めるべきです。」
国会の審議では、ピケティの論理が引き合いに出される場面が増えた。
それでもまだ、安倍首相は「この道(アベノミクス)しかない」と、他の道を否定し続けるのだろうか。
2016年1月8日の国会で、「第2次・安倍政権のほうが、民主党政権の時よりも実質賃金の減少率が高い」と、野党が指摘した。
これに対して安倍首相は、「私が50万円、妻が(パートで)25万円の収入だったら、(総計は)75万円に増えるが、2で割って平均収入は下がる」と答弁した。
この発言に対して、ネット上では「貧困の実態を分かっていない」と非難ごうごうだ。
安倍首相は、夫の収入を50万円と例えたが、現在の月収平均は27.4万円だ。
パートタイマーの平均は9.7万円である。
いかに例え話とはいえ、安倍首相の認識は「パンが無ければケーキを食べればいい」と言い放ったマリー・アントワネット並みにずれている。
(ちなみに安倍首相の公開された年収は、2012年は3879万円である)
庶民感覚が抜け落ちているからだろうが、彼は2017年4月に予定する消費税の10%への引き上げについて、「景気判断は行わず、予定通りに引き上げる」と言っている。
1997年に消費税は3%→5%に上がったが、翌年は年間自殺者が8000人以上も増え、初めて3万人を突破した。
アベノミクス不況に消費増税が重なれば、再び自殺者が3万人を突破する恐れもある。
(※日刊ゲンダイDIGITALの抜粋はここまで)
どうでしょうか。
日本の本当の社会状況が、だいぶ分かったのではないかと思います。
最後に、本日の東京新聞の1面にもアベノミクスの真実を描く記事があったので、抜粋して紹介します。
(以下は、東京新聞2016年1月14日から抜粋)
安倍首相は最近、アベノミクスが地方に波及している根拠として、『高知県の有効求人倍率が初めて1倍を超えたこと』を繰り返し取り上げている。
高知県では、1963年の統計開始以来で初めて、求人倍率が1に達している。
だが実際には、高齢者福祉や建設関係の求人は増えているが、景気は良くなっていない。
高知県では、2015年11月の求職者数は1万3286人で、2006年の月間平均だった1万8375人から3割も減っている。
原幸司(高知労働局)
「求職者は、前年同月比で33ヶ月連続の減少です。
年度ごとに如実に減っている。」
この間、有効求人倍率は上がり続けている。
求職者が減ったのは、『大都市への若者の流出』が原因だ。
県内の仕事は非正規の割合が高く、正社員のみの求人倍率は0.56倍となっていて、沖縄県に次いで低い。
小松忠実(若者の就職を支援するジョブカフェこうちの所長)
「正社員の仕事を増やして、若者が県外へ出ていく状況を変えなければ、求人倍率が1倍を超えても喜べない。」