タイトル安倍政権を見極める㉒
政権を支える特異な人々⑮
日本会議②
美しい日本の憲法をつくる国民の会
(2016.5.16.)

(以下は、ハーバービジネス・オンライン
『草の根保守の蠢動』から抜粋)

ガイド日本会議①は、こちらのページです。
 先に①を読むほうが分かり易いです。)

2015年11月10日に、『美しい日本の憲法をつくる国民の会』は、「今こそ憲法改正を! 武道館一万人大会」という集会を開催した。

注目し検証すべき点は、大会そのものではなく、大会の周囲にあった。

会場に向かう経路で、(チラシを配っている)村田春樹と葛目浩一に出くわした。

村田は、在特会(在日特権を許さない市民の会)の草創期に幹部を務めた人物で、椛島有三と共に講演したこともある。

葛目は、「新聞アイデンティティー」の発行人として知られ、生長の家の関連団体での活動も確認されている。

この大会では、日本会議から所属各団体へ動員がかけられていた。

大量の観光バスが、会場の目の前にある駐車場に、次々と横付けされた。

さらに、バスから吐き出される高齢者の波は、誘導員がスムーズに誘導していく。

誘導員の多数は、スーツを着た日本会議の関係者だ。

日本会議は、たびたび武道館で「一万人大会」を開催してきた。

ノウハウを蓄積してきたのだろう、誘導員の動きは慣れていて無駄がない。

参加者は、それぞれ割り振られたゲートに吸い込まれていく。

崇教真光はCゲートだが、取材をすると「真光は今回、3000人」と動員数をあっさり教えてくれた。

一般参加者のゲートは、実に閑散としていた。

10分ほどゲートを見ていたが、やってきた参加者は1名だった。

大会の中で発表された参加者数は、1万1300人である。

容易に想像がつくが、この動員力は選挙でも発揮される。

政治家にとって、これほど魅力的なものはあるまい。

思想信条よりも、動員力こそが、改憲の道に政治家たちを動かすのだ。

この大会の登壇者たちは、櫻井よしこ、ケント・ギルバート、百田尚樹、細川珠生らで、新奇さはなかった。

登壇者の発言内容も、十年一日のごとく一緒で、何の代わり映えもない。

大会では、司会あいさつの後、国家斉唱に進む。

2時間ほどの大会で、国家斉唱は「会場全体の一体感」が生まれた数少ない瞬間だった。
「グルーブ感」さえあった。

この『国家斉唱におけるグルーブ感の発生』こそ、日本会議を理解するカギだ。

動員された各教団は、それぞれ目標も温度感も違う。
皇室に重きをおかない教団もあるし、改憲を重視しない教団すらある。

そんな多様な人々が、「保守っぽい」という曖昧な共通項で同居しているのが、日本会議だ。

そして国家斉唱は、そうした人々を束ねる数少ない要素なのだ。

他に会場に一体感が生まれた瞬間は、2つあった。

1つは、ケント・ギルバートが「(9条を堅持するのは)怪しい新興宗教の教義です」と発言した瞬間。

もう1つは、百田尚樹が「(日本人の目をくらますのは)朝日新聞。あ、言ってしまった。」と発言した瞬間。

ケント・ギルバートの発言は、彼がモルモン教の宣教師として来日した事や、聴衆が新興宗教の動員で占められている事を思うと、「お前が言うな大賞」を授与したいところだ。

百田の発言も、「まだそのネタで飯を食おうとしているの?」と感じるものでしかない。

しかし、ここで会場の一体感が生まれた事は注目に値する。

2人の発言は、「リベラルっぽい」とされるものを、揶揄の対象としている。

参加した聴衆を見ていると、彼らの連帯を生むものは、「国家斉唱」と「リベラル揶揄」しかないのだ。

この幼稚な糾合点は、日本会議の事務方の手にかかると、見事な「圧力装置」として機能しだす。

日本会議の事務方がしているのは、「なんとなく保守っぽい団体」を取りまとめ、その数を誇示して政治に圧力をかけていく作業なのだ。

この事務方が、自民党の背中を改憲へと押している。

不思議なことに、この大会の主催者である『美しい日本の憲法をつくる国民の会』は、憲法案を発表していない。

会の公式サイトにある運動目標には、「憲法改正を求める」との文言しかない。

積極的に展開している署名活動でも、署名用紙には「私は憲法改正に賛成します」としか記載されていない。

今大会で櫻井よしこは、若干ながら具体的な内容を語った。

「大規模な自然災害に対して、緊急事態条項さえない現行憲法では、命を守り通せません。

家族の在り方も問題があります。」

「緊急事態条項」と「家族条項」の追加。

これを優先する姿勢は、『日本政策研究センター』の改憲プランとそっくりだ。

そしてこの日、安倍首相も国会で、「緊急事態条項から改憲を行うべきだ」と発言した。

この大会では、壇上には中島省治も椛島有三も伊藤哲夫もいた。

国会議員の席では、衛藤晟一のほうが下村博文・中曽根弘文・山谷えり子よりも上座にいた。

閣僚経験のない衛藤が高位にいるのは、彼が日本青年協議会の副代表であるからとしか考えられない。


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