バレーボール女子代表
オリンピック準々決勝 予想通り大敗する
今代表の総括②
(2016.8.18.)

リオ・オリンピックでベスト8という成績に終わった、バレーボールの女子代表。

現代表について総括する記事の後半です。

まず、今オリンピックで最も活躍したと思う選手を、発表しましょう。

私が出場した12人の中で最も活躍した(チームに貢献した)と思う選手は、『座安琴希』です。

サポートレシーバーとして働いた、本職はリベロの座安さんです。

これを目にした人の99%以上は、「えっ! 座安なの!? ほとんど出場しなかったのに。」と思うでしょう。

なので、詳しく説明します。

今大会では、日本は中盤までレシーブで苦戦した。

パスヒッターの石井が大崩れし、石井の控えの鍋谷も崩されて、石井の相棒の木村も崩れて、リベロの佐藤もいまいちの出来だった。

そのため、座安がサポートて途中出場する場面が多かったのですが、座安がコートに入るときはいつも苦しい場面(これ以上レシーブでミスが続いたら、負けが確定する状況)でした。

崖っぷちの状況で、尻拭いのような形で、コートに投入される座安。

はっきり言って、嫌になったりモチベーションが落ちてしまってもおかしくない。

サポートレシーバーは、見事なレシーブで活躍しても、ローテーションの関係ですぐに下げられてしまう。

そしてレシーブ・ミスをしたら、出てくるのは緊迫した試合状況のため、目立ってしまい酷評されがち。

そんな報われないポジションの座安さんに、私は深く同情しました。

「いやー、この役目はきっついな。普通の奴じゃ出来ないな。」と思いながら観戦してました。

座安と、リベロを任された佐藤は、実力では差がないです。

レセプションでは座安が上、ディグでは佐藤が上で、持ち味は違うのですが、実力は五分五分です。

ただし座安は、今期のVリーグでは怪我に苦しみ、控えに回る事が多かった。

だから、Vリーグで大活躍しベスト・リベロ賞をとった佐藤を正リベロに選んだ眞鍋監督の決断は、正しかったと思う。

おそらく座安と佐藤の本人達も、「実力では拮抗している」と気付いているはず。

だから、佐藤がレシーブでミスを連発した試合では、座安は「私だったら取れるのに」と思う瞬間があったのではないかと推測します。

要するに、座安さんは損な役回りをさせられ、ライバルの佐藤は大会最初の数試合は出来がいまいちだった。

だから私は、座安がコートに出るたびに、「やる気が落ちててもおかしくない、どうなんだ座安」と、彼女の表情やプレイに注目したのです。

そうしたところ、座安はどの試合でも、素晴らしい集中力でレシーブしていた。

監督に呼ばれてコートに出る際に、少しでも臆したり嫌な顔をしたことは、一度もなかった。

正直、彼女のレシーブは最高の出来だったとはいえない。

拾わなければいけないボールを見送ったこともあった。

だが、そのプレイには雑念が一切なく、チームのためにすべてを捧げていた。

チームメイトがミスを連発し、最悪の雰囲気がコート上に満ちている状況で、投入されるサポートレシーバー座安。

そこでチームの雰囲気に飲み込まれず、堅実なプレイをして、試合の流れを変える。
すっげえ厳しいミッションだよ。

正直、現役の女子バレーボーラーで他にこれが出来るのは、竹田と近江だけだと思います。

私は座安のメンタルの強さを熟知しており、だからこそ「座安を日本代表のキャプテンにしよう」と書いたこともあります。

そんな私でも、改めて「座安琴希ってすごい選手だな」と感動しました。

どうです、座安さんの凄さが分かったでしょ。

彼女が、今大会の日本の最優秀選手です。

座安に次ぐ活躍を見せたのは、荒木と迫田です。

この2人は、プレイが安定してたし、何よりも気迫が漲っていましたね。

荒木さんは、経験豊富なベテランで、出場時間が長かったこともあり、実質的なキャプテンをコート上でしていたと思う。

もし荒木がいなかったら、木村がキャプテンの役目を全くこなしていなかったため、大変な事態になっていたでしょう。

荒木が常に闘気をまとっている事で、チームがまとまっていた。

木村の「お花畑できゃぴきゃぴムード」は、苦境では何の役にも立たない。

迫ちゃんも頑張っていたなあ。

彼女の持つ献身性と健気さが、とても表現されていて、美しく可愛かった。

あとは、控えセッターの田代さんも、チームに大きく貢献していました。

座安と同じく、苦しい場面になると監督に呼ばれて、重苦しい雰囲気のコート上に送り出される。
そういう使われ方だったのに、よく頑張っていたと思う。

ぶっちゃけた話、田代の使われ方は、『宮下の尻拭い』『敗戦処理係』だった。

アメリカ戦でも、日本が2セットを先取されて、第3セットの中盤に点差をつけられて「もうストレート負けになるのが確定したな」という状況で、コートに送り出された。

田代も、メンタルが強いよ。

あんなキツイ起用をされているのに、出たら精度の高いトスを上げるんだから。

私は以前から田代さんを評価し、「田代の才能に惚れ込んでいる。彼女は3年以内に代表の正セッターになる」と書いたことがあります。

ここまで高く評価するのは、彼女がメンタルの強さも備えているためです。

今の田代は、代表入りして日が浅いので、まだ遠慮がある。

本当の彼女は、もっとチームを引っ張るリーダーシップがあるのです。

田代佳奈美よ、もっと自信を持て。

君は日本代表の核になれる選手だ。
というか、そうなってくれないと代表が強くならないから、それを自覚してほしい。

現状だと、多くの人は「宮下がこれからの日本代表セッターの中心になる」と考えている。

私に言わせれば、『これからの代表のセッターの中心は、間違いなく田代』です。

田代の所属する東レには、素晴らしい才能を持つ若手セッターの白井がいます。

この2人には、切磋琢磨してほしいな。

私が田代さんを高く評価するのは、彼女が頭が良いからもあります。

彼女は、言えばすぐに理解してくれる人だと確信しています。

だから、ここで、田代さんが取り組むと良いトレーニングを書きましょう。

田代さんに足りないのは、(彼女は頭が良いから気付いていると思うけど)、『俊敏性』です。

セッターはボールの落下点に素早く入る必要があるが、そのスピードにやや物足りなさがある。

俊敏性を上げるトレーニングをしてほしい。

少しは体重も落としたほうがいいかもしれない。

これをすれば、レシーブやブロックの能力も上がるでしょう。

あと気になるのは、『肩回りの硬さ』です。

サーブを見ていて、「肩の動きが硬い。これが改善されれば、サーブもトスも良くなるだろう。」と感じています。

彼女のレシーブを見ていると、身体に柔軟性が足りないと感じる。

柔軟性を上げるトレーニングをしたら、成果が出るはずです。

田代さんは、すでにトスの精度やゲームを読む力はかなり高い。

そこは高いレベルにあるので、身体面の向上に取り組んで下さい。

私は、宮下がちやほやされている現状に、激しくイラついています。

「こんなレベルのセッターが、日本代表の正セッターとして長く居たら、暗黒時代になる」とまで思っていますよ。

日本は背が低いから、連係を高めて多彩な攻撃をしなければいけない。

だが、トスの下手な宮下ではそれを実現できない。

宮下がいま展開しているバレーは、『根性バレー』です。

精度のないトスを上げて、スパイカーに「お願い、決めて!」と託す。

トスで活躍できないとなると、レシーブで頑張りだす。

私は、そういう知的でないバレーボールが(セッターが)、大嫌いなのです。

美しいバレーボールが見たい。

島村や山口みたいな、攻撃力のあるミドルブロッカーが、躍動するバレーが見たい。

ビタッと合うトスが来て、全力で打ちきる長岡が見たい。

これが実現したら、オリンピックでメダルが獲れるよ。

リオ・オリンピックでの日本代表は、美しくなかった。
気持ちのよい攻撃は、ぜんぜん無かった。

Aパスがセッターに来なかったのも影響してるけど、宮下がミドルを上手く使えなかったのが大きい。

これからは、背の高さとか守備力でセッターを選ぶのではなく、トスの能力で選んでほしい。

あと、キャプテンには、熱い心や折れない心を持つ人を選んでほしい。

こんな当たり前の事をお願いしなければいけない所に、今のバレーボール界の深刻さがある。


日記 2016年7~9月 目次に戻る