ナベサダのバンドに養父貴が居てびっくり
彼との思い出を綴る④ 
(2016.11.30~12.1.)

養父貴さんから受けたレッスンでの思い出を語る記事、4回目です。

どこまでいくのかな、このシリーズ。

まだ1回目のレッスンの所なんで、あと3回くらいはいくと思います。

他の記事も書きたいので、一気に全部を連発せず、まったりペースで書いていこうと思います。

今回も最初のレッスンの思い出で、③で書いた会話に続くものです。

内容的には②に書いたスタジオ・ミュージシャンの話の続きで、レコーディングを具体的にどんな感じでするかを説明してくれてます。

その他にも、色々と話してくれてます。

私はこの部分を読み返していて、とてもびっくりする事実を見つけました。
読者の方も「え!」と思うかも。
これについては後書きで詳しく話しますね。

(養父レッスンはレコーディングの手順の説明に入り、養父さんは自分が依頼された曲を再生し、私に聞かせる)

養父

「これは仮歌ですけどね。
 本チャン(本番で歌う人)は別の人なんですけど。

 これボーカルはピッチを上げちゃってるから、まあ…。
 (不自然な音だということ)

 (ギターが入ってない状態の曲を私に聴かせながら、養父さんが
  話していく)

 ここから、オレが提案してトレモロのアルペジオを入れて。

 ここまでアコギ・アルペジオなんすけど、こっからはストローク
 にしてくれと。
 盛り上がるからね、ドラム入って。

 ここは、またアルペジオ。

 こっからコーダに飛んでもらって。(ここで転調している)

 (曲が終了する)

 というようなのが(こういう感じの音楽ファイルが雇い主から)
 送られてくると。」


「はあ~、なるほど。(やや放心)」

養父

「最初はアコギ・アルペジオで、サビはストロークで、
 ストロークはダブル(2本)入れろと。

 (コード譜を指さしながら)で、こっからはトレモロ。

 で、サビは2本とディストーションでガーンとやってくれと。

 で、ここになったらさらに盛り上がるんで、ディストーション
 いったまま、ギターソロを入れてくれと。

 という感じ…。

 で、ギターを入れたものを(聴かせます)。

 ちょっと(音の)バランスは適当ですけどね。
 お化粧も何もしてないですけど。」

 (ギターが入ったバージョンを聴く)


「(聴き終えて)なるほど~! おお~!」

養父

「結局、自分でヴォイシングとかも全部考えて。

 どういうパターンにするかっていうのを、瞬時にやってかなきゃ
 いけないっていう。」


「そうか、そうか~。

 いや~僕ってポップスとかもけっこう好きで、たまにコピー
 したりするんですけど、やっぱりsus4(の入ったコード)
 とか出てくるんすねえ。」

養父
「そうすねえ。
 曲調にもよりますけど、こういうバラードちっくな時って、
 けっこうsus4系って多かったりするっちゅう。」


「ジャズだとあまりsus4って表記がないじゃないですか」

養父

「はいはい! 分かります。

 そう、だからジャズとは違う、全くテンション(ノート)が
 入ってない。
 また奥深さが違う世界なんですよね。

 アコギは、録音すれば分かるんですけど、ちょっとしたズレで
 プチッとかいったり(嫌な音が出たり)しますから。

 そういう所の技術とか、レコーディングやってくとすごい
 出てくるわけですよ。」


「そうなんですか」

養父
「それはあの、今はそうなんですかって感じだと思うんです
 けど(苦笑)。

 やれば分かると思います。」

 (養父さんは次に、ダンス系の元気のよい曲をかける)

養父

「これはまた全然違う曲なんですけど。

 フィルとワウを入れろって(言われて)。

 ギターがない場合…(パソコンを操作してギターを消す)。

 これは倖田來未なんですけど。
 R&Bっぽい、ワウのカッティングとフィルを入れてくれって。

 ああ、そうか。
 これは(新曲だからあなたが)録音するのはまずいか(苦笑)。

 まあいいか。
 ちょっとボーカルはオフ。著作権の問題があるんで。」


「別に何もしないですよ」

養父
「あはははは~(屈託のない笑い)」


「いつも(こういう曲を聴く時に)あんまり気にしてないです
 けど、けっこうピアノをガーンて入れてるんですね、
 コードをモロに。」

養父

「ああ、まあミックスで下げますけどね。

 (パソコン操作でギターの音を追加して)ワウを入れてくれっ
 てのはこういう感じで。

 フィルは、正にデイビット・Tのフィル。」

(曲が終了)


「ギターがあった方がスウィングしてたりとか、リッチになってないといけないんだなって、今思いました。」

養父

「そうですそうです! 結局入れる意味がなかったら、ね。

 入れて良かったなっていうか、向こうの予想を常に上回るって
 いうか。

 ギターなくてもいいじゃん、打ち込みだけで!って言われ
 たら、どんどん仕事がなくなっていきますから。

 常に相手の期待以上できるように、やっていくっていう。」

私 「すごい分かりました」

養父
「ああ。だったら良かったです。
 はるばる3時間かけて来てもらって(笑)。」

私 「今、見えた気がした」

養父
「それは嬉しいですね!
 そしたら今日のこの時間は、すごい有意義な時間だったと。」


「その、始まるきっかけってどういうものなんですか?」

養父
「仕事の始まるきっかけですか?
 人それぞれだと思うんですけど…。

 僕の場合は…楽器屋でたまたまスカウトされたんですよね。」


「楽器を弾いててって事ですか?」

養父
「そうなんですよ! 弾いてて。

 島村楽器で弾いてたら、店長がオレの方をず~と見てて。
 オレしか客いなかったんでず~と見てて。」


「店長さんにスカウトされたんですか(笑)。」

養父
「そうなんですよ。
 たまたま島村楽器が関係してる会社が…楽器フェアでデモ演奏
 をする人達がいるんですけど、それを一手に引き受けてる
 会社ってのが島村楽器と繋がってたんですよ。」

私 「そういう仕事もあるんですか。」

養父

「うん、あるんですよ。
 そこが上手い人材を探してるっていう事で。

 『君上手いから紹介したいんだけど、興味ある?』って言うんで。
 ちょうどバークリー(音楽大学)から帰ってきた頃で。

 途中で帰ってきた時だったんだけどな~。
 オレ2年行ってちょっと戻ってきた時に…。

 それで興味ありますって言って、電話して。
 そっからですけどね、スタートはね。

 だけど、いきなりは仕事はなくて当然。
 上手いだけじゃ駄目で、ノウハウも必要なんで。

 商品説明とか、エフェクターをいじれるノウハウも必要なんで。

 でも、色々お前弾いてみろって言われた時に、なかなか見込み
 があると。
 だけど、こういうものも弾けないと駄目だと。
 デモ演奏するには必要だと。

 なんで、お前この会社に毎回遊びに来いと。

 でオレは暇だったから遊びに行って、デモ演を見せてもらった
 りとか、こういうの弾けた方がいいとか教えてもらって。

 1年位かな~、遊びに行ってたら、お前お試しでやってみよう
 となって、フォステクスのデモ演をやらせてもらって。

 最初は正規の値段ではやらせてもらえなくて、1回1万円
 くらい。見習い格で。

 で、オレは上手くやったみたいで、フォステクスからも気に
 入られて定期的にやるようになって。

 次はローランドのデモ演で。ズームもやったし。

 ローランドの時から正規の値段でやれるようになって。

 その時はバブルの終わりだったけど、アジア6ヵ国の海外
 ツアーとか。」


「ローランドは海外にもありますもんね」

養父

「6~7万円位もらったんじゃなかったかな、1本ね。

 で、楽器フェアなんかで若いなりに光ってたみたいで、
 色んな人から電話番号教えて、みたいな感じで繋がってっ
 たりしたなあ。

 あと、帰ってきて仕事がなかった時…友達のツテっていうか、
 千葉大学のジャズ研で演奏している上手いギターの人と
 知り合って、千葉大に遊びに行って…。」


「千葉大って盛んみたいですね。僕の知り合いの人も千葉大で。」

養父

「そうなんだ! その当時から盛んでしたねえ。
 プロも何人か出てるはずなんですけど。

 で、千葉大のドラムの一番うまい人が、何本か仕事をやって
 いる人で、その人から誘われたりとか…。

 後は、今は亡き六本木ピットインっていう…」

私 「六本木もう無いんですか!」

養父

「無いんですよ。

 で、六本木ピットインに出演できるようになって、ある時から。

 そうすると評判を呼んで、結局実力の世界なので、上手いって
 ことで店長に可愛がってもらって。

 お前他のセッションに出ろ!とか言われて、仕事バキバキ
 やってる人の所なんかに入って。

 最初はファーストコールじゃなくて、セカンドコール、
 サードコールだと思うんだけど、だんだん呼ばれるようになって。

 当然だけど、決定権を持ってる人が気に入ってくれれば、
 仕事に直結するし。

 上手い人の順に埋まっていくから、スケジュールは。

 最初は、おこぼれが来ると。

 で、おこぼれが来た時に確実にいいプレイをしてけば、
 あれっ!みたいな。

 『おこぼれが来たけど、あいつの方がいいじゃん!』みたいな
 話になれば、どんどん下剋上が起こっていくわけですねえ。

 そういう事の連続ですよね。

 だからいやらしい言い方ですけど、ファースト・インプレッ
 ションがすごい大事な気がしますねえ。

 2回目の現場で手を抜けって意味じゃないですけど、初めての
 現場でどれだけ光れるかってすごい大事な気がしますよね。
 ポイントとしてはね。

 だから渡辺貞夫さんの所に今回呼ばれたのも、貞夫さんが
 ギタリストを探してるってことで。

 オレは全然知らなかったんだけど、貞夫さんの事務所が
 リサーチしてたみたい。
 ギタリストで誰か良いのいないか。

 そこでオレを強力に推してくれる人が何人かいたらしいんだよね。

 で、貞夫さんがデモテープ聴いてみたいっていう事で、
 オレのデモテープを聴いて気に入ってくれて。

 まだ合格にはなんなくて。
 『1回じゃあ年末にライブに参加しろ』って事で。」


「そういう感じだったんですか」

養父
「そうそう! それでリハーサルがあって。
 30何曲(事前に譜面が)きたんだけど。」

私 「そんなに来たんですか!」

養父

「うん! でも一応全部やってった。

 全部仕込んでって。何が来ても大丈夫なように。
 めちゃくちゃ大変でしたけど。

 で、やったら、リハーサルが終わった瞬間にマネージャー
 から『養父さん、今後ともよろしくお願いします』っていう
 声がかかって。

 『あら、本番やる前からOK出ちゃった』みたいな感じで。
 けっこう嬉しかったですけどね。

 まあだから、実力をつければ絶対に道は開けます。

 シンプルっていえばシンプルな世界。」


「じゃあ、今度はもうちょっと具体的なのを…」

養父
「やりますか! いいですよ、レッスンやりましょうか。」


「お願いします。今度はそういう感じで。」

養父

「またメールでこういうの習いたいってのをバーと言ってもらって。

 そしたら僕の中で、1日でやるんだったらこれが効率いい
 かなっていうのを考えて。

 でやり取りして、これで行きませんか?みたいに決めとけば
 いいんじゃないかと思います。

 あと、せっかく繋がったんですから、メールでやり取りできる
 質問に関しては僕メールでしますから。

 そんなのは別にお金はいただく気はありませんので。

 それで解決すれば、それでいいじゃないですか。」


「僕も養父さんがどういう人なのか分からなかったので。」

養父
「そりゃそうですよね!! 分かります、こんな感じです。」

1回目のレッスンは、これで終了でした。

養父さんの人柄やギターの腕が分かったので、次からは具体的なギターの技(フレーズなど)を教わっていきました。

これを書いてて改めて思ったけど、彼は本当に良い人ですね。

今記事で紹介した部分では、『すでに養父さんはナベサダのバンドでプレイを始めていた』と分かります。

レッスン・ノートのこの部分を読んだ時、「え~!!!」と思いました。

いや、完全に忘れてましたね、この事。

ナベサダのバンドに養父貴がいるのをテレビで見て驚き、実はそれを自分は知っていて忘れていただけだったと分かりもう1度驚く。

1粒で2度おいしいみたいな、面白い状況ですねー。

忘れる素晴らしさって確実にあるよなあ。
知ってた事なのに、それで驚いて記事を書き始めちゃうんだから。

それにしても、タイトルの前提が崩れてしまったなあ。

でも、まあいいや別に。

ジャズのアルバムで、ミスした部分がある曲だけど、全体の出来は悪くないんでそのまま発表しちゃう事あるじゃないですか。

あれと一緒。ライブ感を大事にする感じ。

ちなみに私が会話中に言及している「千葉大の知り合い」も、誰だか思い出せません。

すっげえ色んな事を忘れてるな、私は。

憶えてないんですけど、たぶんレッスン最初の自己紹介時に、私がジャズをやっているから養父さんは「ナベサダさんのバンドでやらさせてもらったんですよ」とか話したのだと思う。

で、その時は「へえ! そうなんですか!」とか答えたと思います。

何できれいさっぱり忘れたかですが、レッスンの回が進む中で、養父さんの教えについていくので頭が一杯になったからだと思います。

私って、その人に師事すると、師匠がどういう仕事をしてるかとかどんな肩書かとかが、全部どうでもよくなるんですよ。

技や考え方を学ぶ事しか考えなくなる。

養父さんがギタリストとしても人間としても凄いものを持っていると分かった時点で、ナベサダとの共演なんてどうでもよくなった。

で、ポーンと頭から抜けたと。

養父さんって、ギター・テクニックがおかしいレベル(私から見ると異常に高いレベル)にあったんですよね。
それを吸収するので頭はパンク状態でした。

このシリーズ、まだ続きます。


日記 2016年10~12月 目次に戻る