安倍政権(自公政権)が最も力を入れてきたものの1つが、『TPP』です。
この条約は内容が明らかになるにつれて、各国で反対する国民が増え、アメリカでトランプ政権が誕生した事で遂に死滅しました。
日本においても、TPPを危険視する人は多いです。
特に農業や畜産業や医療に携わる人には、この傾向が強い。
実際のところ、日本ではTPPに賛成する人と反対する人は5分5分の拮抗状態ではないでしょうか。
そんな条約だからこそ、安倍政権はその内容を隠そうとしてきました。
文書を黒塗りで国会に提出したのは、まだ記憶に新しい。
TPPは、アメリカが離脱を表明した事で消滅しました。
これは、TPPの危険性を訴えてきた人々の勝利です。
私は嬉しい。
面白い事に、安倍政権はまだ固執しています。
トランプ大統領らを説得して、TPPを復活させようとしている。
彼らがそこまで執着する姿は、狂的と思えます。
日本国内で賛否が割れていて、アメリカ人の大多数も反対しているのに、それを無視して成立を目指す態度は異常です。
この過激な行動には、彼らの肝が(本心が)表現されています。
TPPの内容と交渉過程を振り返る事は、安倍政権の本質を見極めるのに役立ちます。
私は、たまに長周新聞のウェブサイトを見ています。
この新聞は、日本共産党から離脱した人々が運営をしているらしいです。
私にとって、そんな経緯はどうでもいいです。
アクの強い論調ですが内容が面白いので、定期的に足を運んで読んでいるのですが、TPPについての記事が良かったです。
今日は、その記事の抜粋を紹介し、安倍政権の本質(対米隷属=売国体質)を明らかにします。
〇 長周新聞ウェブサイト2016年9月21日 鈴木宣弘・東京大学教授の話
TPPは2015年10月にアトランタで「大筋合意」が行われたが、その裏で何があったのか。
安倍政権はアトランタに行く前に、「アメリカに譲れるものは全て譲る」という方針だった。
農林水産業に関しては、すでに1年前に譲り終えていた。
アトランタの交渉では自動車でも譲ってしまい、他の国は「よくあそこまで譲れるものだ。日本はアメリカの草刈り場みたいなものだ」と語っていたという。
新薬のデータ保護期間では、巨大製薬会社が「人の命を縮めてもデータ保護期間を長くして、安いジェネリック薬を作れないようにせよ」と要求していた。
それに対しオーストラリアやマレーシアが、「それでは人の命が救えない」と主張していた。
アメリカは当初は保護期間は20年と言っていたが、最終的に12年に短くした。
オーストラリアやマレーシアは5年と言っていた。
そこに日本が登場し、8年とも5年とも取れる表現を作り、それが条文となった。
このため条文の解釈で今も揉めている。
アトランタ合意の2ヵ月前のハワイ会合では、日本は自動車での利益確保にこだわり、交渉を決裂させた。
甘利大臣は「ニュージーランドが酪農分野で頑張ったのが原因だ」と語ったが、あれは嘘で、海外メディアは「日本が自動車で頑張ったからだ」と一斉に書いていた。
ハワイでは頑張ったが、アトランタではそれを差し出した。
TPP域内での部品調達率が55%以上でないと関税撤廃の対象とならない、「原産地規制」を受け入れたのだ。
さらにアメリカの普通自動車の関税は25年後に撤廃、大型車の25%の関税は29年間変えないと決めた。
その一方で、農産物について日本だけが7年後の再交渉(更なる削減)を約束させられた。
日本では、TPPの詳細が国民に示されず、影響試算が出される前に「国内対策」が示された。
実は、農産物の影響試算も国内対策もだいぶ前に日米間で決まっていて、発表するXデーを待っていただけだった。
そして合意の内容が明らかになってきて、「こんなに酷い合意をしてしまったのか」との怒りが農業界から湧き上がってきたので、「国内対策(金目)を先に出して沈静化を図れ」という事になった。
国会の審議ではTPP条文の説明を求められたが、政府(安倍・自公政権)は「交渉過程は4年間秘密なので説明できない」と回答した。
さらにタイトル以外は全面黒塗りの資料を出すという、国民を愚弄した対応を見せた。
2016年4月に行われた共同通信社の全国知事へのアンケートでは、「TPPに関する政府の対応は十分なもの」と回答した知事はゼロ、「国会決議が守られた」もゼロ、「影響試算は現実的」もゼロだった。
農林水産業への影響試算は、政府は当初は「4兆円の被害が出る」と試算していた。
しかし3兆円に修正され、最後には1700億円になっている。
この動きに反対していた農林水産省の担当局長と担当課長は、16年6月に更迭されてしまった。
牛肉関税の9%に象徴されるように、アトランタでの大筋合意は、2014年4月のオバマ大統領の訪日時に「秘密合意」として報じられた内容とほぼ同じだ。
このオバマ訪日の2週間前には、日豪で冷凍牛肉の関税を38.5%→9.5%に下げる合意をしたため、「国会決議に違反している」と安倍首相らは批判された。
この時に「19.5%をTPPの日米交渉のレッドラインとして踏ん張る」と安倍政権は述べたが、アメリカと9%で合意してしまった。
日米政府は早い時期に密約し、その後は熾烈な交渉をしている様に演技をしていたのだ。
甘利大臣は交渉期間中に頭髪が白くなっていったが、もともと白いのを黒く染めておいて、だんだん白くしていったと聞き愕然とした。
TPPがチャンスだと言うのは、グローバル企業の経営陣にとっての話で、国民の仕事を増やし賃金を上げるのは困難だ。
例えば参加国のベトナムは、賃金が日本の20分の1から30分の1であり、カネや人の移動の自由化は日本人の雇用と賃金を下げる。
内閣府などのモデル(影響試算)は、農家が失業しても即座に自動車業などに再就職できる「完全流動性」「完全雇用」を仮定している。
この非現実な仮定を排除したタフツ大学の試算では、TPPの影響で日本のGDPは10年で0.12%低下し、雇用は7.4万人減るとされている。
TPPは、「米国企業に対する海外市場での一切の差別と不利を認めない」ことが大原則としてある。
各国の様々な規制が、ISDSの提訴で崩される危険がある。
実際に韓米FTAでは、ソウル市の学校給食条例が廃止されてしまった。
米国産を不当に差別していると指摘され、数多くの法律・条例が廃止・修正に追い込まれている。
公共事業の入札でも、TPPでは地元に精通した業者の点数が高くなるシステムは許されない。
ところがアメリカは、TPPが連邦法にしか影響しないので、州レベルの公共事業は国際入札の対象外となる。
TPPで関税が下がれば、アメリカから安い牛肉や豚肉が入ってくる。
アメリカでは牛の肥育のために女性ホルモンのエストロゲンなどが投与されている。
これは発ガン性があるとして、EUでは禁止されているものだ。
実際にEUでは、アメリカ産牛肉の輸入を禁止してから、乳ガンによる死亡率が大きく下がった。
だが、すでに日本では輸入が許可されていて国内に入ってきている。
ラクトパミンという牛などの成長促進剤も、ヨーロッパや中国やロシアで禁止されているが、日本では輸入が素通りになっている。
さらにアメリカの乳牛には、成長ホルモンが注射されている。
アメリカでこれが認可された1994年の数年後には、「乳ガン発生率が7倍、前立腺ガンは4倍になった」との論文が発表された。
これも、輸入を通してどんどん入ってきている。
さらにアメリカの牛には、BSE(狂牛病)の危険性もある。
日本は、BSEの発症例のほとんどない20ヵ月齢以下の牛に限って輸入を認めていた。
ところがアメリカから「TPPに参加したいならば規制を緩めろ」と言われ、入場料として30ヵ月齢以下に緩めてしまった。
遺伝子組み換え(GM)食品についても、アメリカは「GMを使用していない、と食品に表示することは消費者を惑わす表示だ」と主張している。
防カビ剤についても、日本では収穫後にかける事が認められていないが、アメリカのレモンなどは日本への長期間の輸送でカビが生えないようにかけてある。
日本政府はアメリカの圧力に屈し、防カビ剤を食品添加物に分類することで、日本への輸入を許可している。
ところがアメリカは、今度は「食品添加物として表示するのは不当な差別だ(表示するな)」と言い始めている。
安倍政権のTPP農業対策の大半は、過去の事業の焼き直しにすぎず、大企業を優遇している。
TPP交渉では、守るべき国益とされたものが全滅である。
軽自動車税の増税、自由診療の拡大、薬価公定制の見直し、郵便局窓口でのアフラック社の保険販売、BSEの規制緩和、ポストハーベスト農薬(防カビ剤)の規制緩和、ISDS条項への賛成などが、安倍政権によって進められている。
郵政の解体は、アメリカ金融保険業界の要請で、「対等な競争条件」との名目で小泉政権から進められてきた。
アフラック社の要請(圧力)で、「かんぽ生命はガン保険に参入しない」と決められた。
そして半年後には全国の2万戸の郵便局で、アフラック社の保険販売が始まった。
これについて安倍政権は、TPPともアメリカとも関係なく「自主的にやった」と説明したが、TPPの付属文書には「アメリカの要請に日本が応えた」と書いてある。
さらに驚くのは、付属文書では「アメリカの投資家の要求について、日本は規制改革会議を通してさらなる対処をする」と約束されている。
アメリカ国内ではTPPに反対する人が増え、TPPはアメリカで成立する見込みがない。
そこで日本の駐米大使は、「日本が水面下でアメリカの要求をまだまだ呑んで、アメリカ議会でTPP賛成派が増えるようにする事は可能だ」と話している。
2014年秋にアメリカ議会で、オバマ大統領に一括交渉権を与える法案が、ぎりぎり1票差で通った。
あのとき日本政府は、ロビイストを通じて民主党のTPP反対議員にお金を配って賛成を促したという。
TPPがアメリカで批准されなくても、日米間FTAなどで国益を失うものが成立しかねない。
対米従属の呪縛から解放されない限り、問題は永続する。
おこぼれを期待し、見せしめを恐れて従う選択に未来はない。
〇 長周新聞ウェブサイト2016年12月12日から抜粋
アメリカでは圧倒的多数の国民がTPPに反対となり、先の大統領選ではクリントン候補もトランプ候補も「TPP反対」を掲げざるを得なかった。
そして「TPPからの脱退」を公約にしたトランプが当選した。
TPP発効にはアメリカの参加が不可欠であり、破綻は明白になっている。
その中でなお、安倍政権はTPP承認の法案を国会で強行可決した。
安倍首相はこの強行可決について、「日本がTPP並みのレベルの高いルールを、いつでも締結する用意があることを(他国に)示していく」狙いがあると説明した。
「世界が目指すべきルールだとしっかり示していく」と強調した。
TPPでは、安倍政権は国会決議で『聖域』とした重要品目でも、コメは7万8400トンの輸入枠を新設し、牛肉は関税を現行の38.5%から9%に下げる事にした。
医療や公共事業に外資の参入を認め、ISDS条項も認めて、多国籍企業の日本参入を大幅に認めた。
安倍政権は、「RCEPやFTAAPの構想にも、TPPの合意内容が強い影響を与えていく事になる」と述べている。
RCEPなどの他の協定でも、TPPを基準とする方針である。
醍醐聰(東京大学名誉教授)の話
発効の見込めなくなったTPPを国会で承認するのは、無意味であるに留まらず、危険である。
TPP承認は『日本はここまで譲歩する覚悟を固めた』との公約と受け止められ、日米の2国間協議でスタートラインとされる恐れがある。
そもそもTPPは、国会決議に背いている。
(絶対に死守すると約束した)重要5品目594ラインでは、28.5%にあたる170品目で関税を撤廃した。
また、269品目(45.3%)で税率減か新たな関税割当をしている。
しかもこれは、ファイナルではない。
TPPの付属書には、随所に「協議」という言葉が登場する。
「関税撤廃の時期の繰り上げについて検討するため、協議を継続する」とも明記されている。
安倍首相はこのような内容のTPPについて、「国際公約として胸を張って約束する」と語っている。