クリムトの絵とナチス(以下は『Newsweek』 2026年1月13日号からの抜粋
2026年5月29日に作成)
2025年11月18日にサザビーズのオークションで、オーストリアの画家クリムトの作品 『エリザベート・レーデラーの肖像』が出品され、匿名者が2億3640万ドル(370億円)で落札した。
絵画としては、2017年のレオナルド・ダ・ヴィンチの作品『サルバトール・ムンディ』の4.5億ドルに次ぐ高値であった。
『エリザベート・レーデラーの肖像』は、180cm余りの大作で、クリムトのパトロンだったレーデラー家のエリザベートを描いたもの。1914~16年に制作された。
レーデラー家はユダヤ教徒の名家だったが、ナチス・ドイツがオーストリアを1938年に併合すると、迫害を受けた。
レーデラー家は外国に逃げたが、離婚して孤独なエリザベートは一人でウィーンに残った。
ナチス政権はエリザベートをユダヤ人として収容所に送ろうとしたが、彼女は「自分の実父はアーリア人のクリムトだ」と主張して回避しようとした。
ハンガリーに逃げていた母セレーナも、「娘エリサベートの実父はユダヤ教徒のアヴグストではなく、クリムトだ」という宣誓供述書を提出した。
この嘘をナチス政権は受け入れ、エリザベートはユダヤ人とアーリア人の混血とされて収容所送りを免れた。
レーデラ一家が持つクリムト作品のうち、ユダヤ人を描いたものは国外に売却され、それ以外はインメンドルフ城へ収容した。
『エリザベート・レーデラーの肖像』は、エリザベートがアーリア人かユダヤ人か微妙なのでウィーンに残された。
これにより絵が生き残ることになった。
1945年5月にナチスの親衛隊がインメンドルフ城に放火したとき、そこにあるクリムトの傑作12点余りが焼けてしまった。