(『ナンバー2014年6/25臨時増刊号』から抜粋)
スペイン代表は、攻撃的な印象が強いが、特長はむしろ失点の少なさにある。
「こちらがボールを持っていれば攻められる事はない」のがポゼッション・サッカーの法則だから、当然といえば当然だ。
特に2009年のコンフェデ杯以降は、非常に堅実に守るようになった。
そのきっかけは、その大会で露呈した「敵のカウンターに対処できない」問題だった。
デルボスケ監督は、前任のアラゴネスのサッカーに、独自のアップデートをした。
その1つが、シャビ・アロンソのレギュラー起用で、マルコス・セナに代えて中盤の底に置いた。
アロンソは、ゲームの組み立て力は素晴らしいが、守備力はセナより弱い。
そこでデルボスケ監督は、守備力の高いブスケッツを抜擢して、アロンソとコンビを組ませた。
その結果が、2010年W杯の7試合2失点での優勝だ。
さらに2012年のユーロでは、若いジョルディ・アルバを起用し、プジョルが負傷したのでセルヒオ・ラモスを右SBからCBに置き換えた。
当時はCBに居るピケと、セルヒオ・ラモスの仲が険悪だった。
それが、デルボスケの管理の下で2人は完璧な連係を見せ、5試合をゼロ封しユーロ連覇に貢献した。
その自慢の守備陣が、2014年W杯の初戦(オランダ戦)では崩壊してしまった。
(この試合でスペインは、1対5の大敗をした)
試合後のデルボスケ監督は、敗戦の理由をこう説明した。
「負けたのはフィジカル・コンディションで劣っていたからではなく、オランダの2点目が彼らの気持ちを高め、我々の気持ちを沈めたからだ。
試合においては、心情の影響は大きい。」
この試合のスペインは、序盤から積極性を欠いていた。
優位に立っていた最初の40分間に勝利を決めるつもりでプレイしていたら、結果は違っただろう。
また、5バックを宣言していたオランダに対して、(ケガ明けの)ジエゴ・コスタをぶつける必要もなかった。
セスクに偽9番をやらせていたら、敵のディフェンス・ラインは乱れたかもしれない。
○ 村本尚立のコメント
「スペイン代表の特長は、失点の少なさにある」というのは、その通りだと思います。
スペイン代表は、個々の選手の守備能力がずば抜けているわけではないのに、失点はとても少ない状態で保ってきました。
(GKのカシージャスだけは、信じられない守備力でした)
この理由を考えると、『全体のバランスが良いこと(陣形がくずれないこと)』と、『主導権を握る時間(ボールを保持する時間)が長いので、スタミナのロスが少ないこと』が挙げられると思います。
強かった頃のスペイン代表は、シャビ選手を中心としたゲーム運びが素晴らしく、味方のスタミナを温存させつつ相手のスタミナを奪うようにボールを回していました。
また、陣形が乱れた時にはじっくりとボールを回して、まず陣形を立て直すように配慮していました。
厳しい時間帯(押される時間帯)になると、シャビやシャビ・アロンソあたりがそれを察知して、ユラユラと相手を焦らす様なパスをあちこちに回して、流れが戻るのを(相手が疲れて集中力を切らすのを)待つんですよね。
最近のスペイン代表には、その余裕感が(頭脳的なボール回しが)無いです。
(2014年11月12日に作成)
(『ZONE2014年9月号』から抜粋)
2014年W杯で、スペイン代表のグループリーグ敗退が決まった翌日、スペイン各紙では「THE END」「世界的な失態」といった見出しが並んだ。
だがその論調からは、代表への怒りよりも、黄金期が終わった悲しみが強く感じられた。
多くの記事は、選手たちの不甲斐なさを指摘しつつも、その後には選手たちに感謝の意を記していた。
とはいえ、もちろん敗因の分析は行われている。
マルカ紙が行ったアンケートでは、22.5万人の投票が集まった。
最も多くの人が指摘した敗因は、『フィジカル・コンディションの悪さ』だ。
次に多かったのは、『モチベーションの欠如』。
W杯直前にチャンピオンズリーグで優勝を果たしたレアル・マドリードの選手は、それが特に顕著だった。
しかし、コンディションの良い野心に溢れた選手を起用したとしても、徹底したスペイン対策を立ててきたオランダとチリに勝てた保証はない。
スペイン・サッカー協会は、デルボスケ監督の責任を問わず、続投させる事を決めた。
スペインは若い世代が続々と台頭しており、人材には事欠かない。
アンケートでは、「スペインは現在のスタイルを継続すべきか?」との質問に、64%が「継続すべき」と答えた。
(2015年12月30日に作成)