(『ナンバー2014年6/30臨時増刊号』から抜粋)
〇大久保嘉人の試合後コメント
ギリシャ戦を終えた後、ミックスゾーンに現れた大久保は、喉がガラガラに嗄れていた。
「ゴール前のバイタル・エリアの所を、もっと使えたでしょ」
大久保は悔しそうに声を絞り出した。
大久保
「(後半になると)相手はブロックを組んでいたけど、バイタル・エリアは空いていたので、(本田)圭祐とポジションを入れ替えながらミドル・シュートを狙っていた。
でも、パスが来なかった。
パスをサイドに出してしまい、その間に相手が戻ってしまう。
そこが勿体なかった。
みんな、パスが正直すぎた。
プレスの罠に嵌められているのに縦パスを出して、そこで閉じ込められてボールを取られていた。
難しかったら後ろに戻してもいいし、キーパーを使ってもいい。
で、相手が出てくれば空いた所を突く。
相手が嫌な事をやらないと。
ハーフタイムでは、『俺にどんどん当ててくれ』と言いました。
DFがいようが自分に当ててくれればどうにかするし、取られたら俺のせいでいい。
でも、当てる勇気が足りなかった。」
しかし、大久保自身もチャンスを得点につなげられなかった。
後半23分に内田があげたグラウンダーのクロスに、走り込んで合わせたが、ゴール枠を捉えられなかった。
最後に香川がスタメンから外された影響を訊かれると、大久保は語気を強めた。
「何の影響もないです。調子が悪いから外れただけで。
その分、他の人にチャンスが来る。そういう世界だから。」
〇戸塚啓の感想
退場者を出して守りに入った相手に手こずるのは、しばしば起こる事だ。
だがギリシャは、ミトログルの負傷とカツラニスの退場で、前半のうちに2枚の交代カードを使っていた。
だから、日本が数的優位を生かして相手を動かせば、ギリシャの足は止まってくる。
それなのに日本は、後半になっても守備ブロックの外側でボールを動かすばかりだった。
遠藤と山口のダブル・ボランチは、ボールを捌くだけで、相手の守備網へ切り込まなかった。
本田のポジショニングも、攻撃を停滞させた。
アタッキングサードから離れるトップ下に、怖さがあるはずもない。
彼が守備ブロックの外に出てしまうため、1トップはサポートを得られなかった。
本田と大迫が良い距離感を作り出したのは、本当にわずかだった。
リスクを避ける選択肢として、サイドからのクロスが繰り返された。
日本は3人目の交代カードを、ギリギリまで使わなかった。
打開力のある清武や齋藤を、なぜ使わなかったのか。
この日の日本は、23回の反則を犯している。ギリシャは18回だ。
人数の少ない相手を、追い詰められなかった事が窺える。
4年間の積み重ねをピッチで表現すれば、結果は出なくても未来につながる。
このままでは、何も残らない。
今度こそ(次のコロンビア戦こそ)、最後まで日本らしく戦え。
〇村本尚立のコメント
大久保選手が指摘した、バイタル・エリアがたまに空いている事は、私も気付いており、当時の日記でも指摘しました。
相手のペナルティ・エリア中央の外側が、後半の間に3回はぽっかりと空いていましたよ。
日本のボランチ2枚は、それに気付いていたと思うのですが、その空いたスペースに入っていかないのです。
カウンターを恐れて引き気味にしていたのでしょうが、あれは本当に残念でした。
あそこに入って、ミドル・シュートを狙ったり、相手を引きつけてパスを出したり、ボールをキープしてファウルをもらったりすれば、大チャンスになったはずです。
大久保さんがバイタル・エリアに侵入している印象は、私には無いですね。
侵入しても、あまりフリーな状態じゃなかったのだと思います。
とにかく、ああいう膠着した状況では、皆が積極的に色々と試さないと。
日本選手の多くは、誰かがアクションを起こすのを待っている感じがあり、そこが観ていてもどかしかったです。
(2014年11月14日に作成)