(『ナンバー2018年1月18日号』から抜粋)
2014年ブラジルW杯で、日本代表の第3戦目は、コロンビアとの対戦だった。
日本はそこまでに1敗1分で、グループリーグを突破するには引き分けも許されない状況だった。
一方コロンビアは、すでにグループリーグの突破を決めていて、先発メンバーを8人も入れ替えてきた。
コロンビアが大幅にメンバーを落としたので、日本にとって有利に思われたが、1-4での完敗となった。
この試合のスタッツを見ると、日本の数字は悪くない。
ボール・ポゼッションは56%で相手を上回り、シュート数も23本で、コロンビアの13本よりも多かった。
コーナーキックは9本で、コロンビアの4倍以上である。
日本は、先発に大久保嘉人と青山敏弘を起用し、果敢に相手ディフェンスの裏を突こうとした。
(※この2人は、W杯の直前にチームに加わっており、ザックジャパンでは新参者だった。
ザッケローニ監督が、ずっと使ってきた選手たちを、瀬戸際の状況にきて信用できなかった事がうかがえる。)
日本は(前半17分に)先制点を許してしまい、その後はコロンビアが引いてカウンター狙いとなったため、裏のスペースが消えた。
とはいえザックジャパンは、パスを繋いでじっくり攻めるのを得意にしていたので、相手が引くのは悪い状況ではない。
日本は前半終了間際に、岡崎慎司が得点をして、同点に追いついた。
日本の敗因は、カウンター・アタックへの対応にあった。
コロンビアは、後半からエースのハメス・ロドリゲスを投入したが、これによりカウンターの破壊力が上がった。
日本が後半に喫した3失点は、いずれもカウンターを阻止できなかったものだ。
ただし最後の2失点は、(負けている状況なので)リスクを冒して攻めた時間帯(82分と90分)に取られたもので、仕方ない部分がある。
一番問題なのは、試合の行方を決定づけた2つ目の失点(55分のもの)だった。
この失点における日本のミスを探ると、次の順番で連続してミスをした。
①ボールの失い方が悪い
②マークをつかんでいない
③囲みを破られる
③ハメス・ロドリゲスをフリーにする
この失点の始まりは、本田圭佑のミスだった。
敵陣の中央で無理に切り返し、ボールを奪われた。
この時、右サイドにはフリーで内田篤人がいた。
明らかに本田の判断ミスだった。
本田からボールを奪ったコロンビアは、最前線のラモスへ縦パスを出した。
そこにはCBの吉田麻也と今野泰幸が居て、2対1の数的優位にあったが、どちらもラモスをマークしてなかった。
どちらかがきちんと寄せていれば、カウンターを阻止できた。
そこからのコロンビアの攻めが遅かったので、日本は自陣左の深い位置で、ボールを持つグアリンを3対1で囲んだ。
ところが香川真司の寄せが甘くて、アリアスへパスを出させてしまった。
アリアスは斜めに切り込んだが、日本は左サイドに3人が集まっていたので、ゴール前が薄くなっていた。
アリアスが切り込んだコースには長谷部誠がいたが、近くにカルボネロもいるためチャレンジしなかった。
ペナルティエリア内では、青山敏弘がラモスをマークし、吉田麻也と内田篤人がマルティネスをマークしたが、ハメス・ロドリゲスがフリーになっていた。
吉田と内田のどちらかが、ハメスをマークすべきだった。
この失点では、得点されるまでにボール・ホルダーに激しく身体を当てた日本選手は1人もいなかった。
だからこそ、現在の代表監督ハリルホジッチは、デュエル(決闘)を力説するのだろう。
今夏(2018年夏)に行われるロシアW杯で、日本はコロンビアと再び戦うが、ハメスに激しくぶちかます者が現れないかぎり、打倒コロンビアは成らない。
(※蓋を開けてみたら、2018年W杯ではハメス・ロドリゲスは怪我を抱えていて全く精彩がなく、前半6分にコロンビアはレッドカードで退場者を出してしまい、なんと日本は2-1で勝ってしまった。
W杯でグループリーグを突破するのは、実力よりも運のほうが大事なのかもしれない。)
(『Sportiva web』2022年9月21日の記事から抜粋)
2014年ブラジルW杯では、初戦はCBに森重真人が起用されたが、第2戦と第3戦は今野泰幸が替わって出場した。
2戦目のギリシャとの試合を、今野泰幸はこう回想する。
「(前半38分にギリシャは退場者を出したが)あれは凄く大きかった。
日本の攻撃陣なら絶対に点が取れると思った。
そこからは、守備をしていて怖さはそれほどなかった。
ギリシャはブロックを作って守り、しかも個の能力が高いので、(日本は)ゴールをこじ開けられなかった。」
(そして0-0の引き分けに終わった)
ギリシャ戦を終えた後のチームについて、今野はこう話す。
「ギリシャ戦の後は、(グループリーグで1敗1分になったため、敗退の確率が高くなり、)皆がガクンと気落ちして、チームの雰囲気は最悪になった。
本当に崖っぷちで、焦りや不安が大きかったと思う。
でも強気な選手が多かったから、自信を失う所までは行かなかった。」
3戦目のコロンビアとの試合は、今野泰幸はこう回想する。
「南米のFWはめちゃくちゃ能力が高いので、怖かった。
初めてその怖さを知ったのは、(2013年8月に行われた)日本代表のウルグアイ戦だった。
(※これはキリン・チャレンジカップでの対戦である)
(2-4で負けたが)相手にはルイス・スアレスとディエゴ・フォルランがいて、まだ何もされる前から、『これはやられる』という感覚に陥り、本当に恐怖しかなかった。
(W杯のコロンビア戦も)始まってすぐに、怖くなった。
コロンビアはパス回しのスピードが速くて、トラップもピタッと止まる。
それを見て『ヤバいレベルだ』と思った。
前を向かれると、やりたい放題にされたから、そりゃあ怖かった。」
試合の始めから恐怖をおぼえた今野は、前半17分にスルーパスに反応したFWアドリアン・ラモスに対して、スライディングをしたが、PKをとられてしまう。
そして日本は先制点を奪われた。
今野
「あのスライディングは、自分のタイミングだと思ったし、自分が先にボールに触れたと確信があった。
だからレフェリーに『ボールでしょ、(相手の)足じゃないよ」と言ったが、(実際には)思いっきり相手の足に行っていたみたいで…。
(前半を終えて)ロッカールームに戻ったら、皆に『あれは足だよ』と言われた。
あのミスは、相手への恐怖心があり、身体がこわばって判断が遅れたからだと思う。
でも岡崎が点を取って、同点でハーフタイムを迎えたから、ロッカールームでは『イケる!』とチームは盛り上がっていた。
『残り45分で勝つぞ!』みたいな勢いが出ていた。」
だが後半のスタートでコロンビアは、エースのハメス・ロドリゲスを投入した。
今野
「ハメスが入ってきて、本気のコロンビアが来たと感じた。
コロンビアの雰囲気が一気に変わり、(初戦であたったコートジボワールのエースである)ドログバが途中から出てきた時みたいで、『これがスター選手なんだな』と思った。
(コロンビアの選手は)皆がハメスを見てプレーしているし、ハメスもめちゃくちゃ良い所にパスを出してくる。
それでコロンビアの他の選手たちも、さらにプレーが良くなった。
(ハメスが出てきたことで)僕も含めて(日本選手たちは)『先に点を取らないといけない』という焦りが出た。
それで攻撃陣は、一か八かでがむしゃらに攻める、といった感じになった。
でもW杯の大舞台で、一か八か(の賭けで)で勝つのは難しい。
結局、皆が前がかりになってカウンターを食らった。
そして警戒していたハメスにやられてしまった。
終わってみれば1-4だったが、スコア以上に差があったし、言い訳できないくらいの力の差を感じた。」
(2022年11月22~23日に作成)