(『ナンバー2014年6/30臨時増刊号』から抜粋)
コートジボワール戦の後半9分に、遠藤はピッチに入った。
「これは、マジでやばい」
出場して数分で、遠藤はそう思ったという。
遠藤
「前半16分に先制点を奪った時には、自分達のペースになると思ったけど、そうならなかった。
俺らは間延びしてしまった。
その要因の1つは、プレスが掛からなかったから。
しかも、相手の両サイドバックが、事前の情報以上に高い位置を取っていた。
特に左サイドは、(長友)佑都を分析していたのだろうけど、オーリエとジェルビーニョが近い所にポジションを取り、カウンターを狙っていた。
そして日本は、中途半端にボールを失って、何度もカウンターを喰らった。
そうなると最終ラインは慎重になり、ラインが低くなって間延びさせられた。」
遠藤はピッチに入る時に、ザック監督から「コンパクトにして、パスを左右に散らせ」と指示された。
ところがピッチに入ると、ボール回しすらままならない状況だった。
遠藤
「みんな、疲れていた。
動きが重いし、1つミスすると妙に慌てて萎縮してしまう。
1点リードしている状況とはいえ、これから先が非常に難しいと思った。」
コートジボワールは、センターバック2枚+ボランチ2枚の4人を軸にして、うまくボールを回していた。
香川と岡崎は両サイドバックを見ており、ボランチの山口らも前にプレスに行かなかった。
そのため本田と大迫は、2人で相手の4人を見る状況に追い込まれていた。
また、中盤でボールを失う事が多いため、カウンターを喰らって香川や岡崎は何度も自陣に戻っていた。
遠藤
「相手を押し込めることが出来ずに、逆に押し込まれて体力をどんどん消費した。
それがボディ・ブローのように効いて、後半に運動量がガタ落ちした。
2つの失点シーンは、日本が中盤でミスしてボールを奪われ、右サイドのオーリエに展開された。
オーリエは、ウチらがボールを失う前に、しっかりポジショニングしていたからね。
2点ともミス絡みで、フリーでクロスを入れられているので、言い訳できないでしょ。
ミスをしたのは、走らされて疲れた事や、カウンターを喰らってDFラインを下げられたから。」
後半22分に、大迫に代えて大久保が投入された。
前線に動きがでないと見るや、ザックは7分後に本田を1トップに上げて、香川をトップ下にし、大久保を左サイドに移した。
これは、これまでチームが貫いてきた「裏狙いや3人目の動きで点を取るスタイル」とは真逆のやり方だった。
遠藤
「やりにくさは、当然あったよ。
(香川)真司を生かすための、一種の賭けだったのかもね。
でも、そもそも日本は動けていないので、良い形でボールを奪えない。
俺達はその場しのぎのプレーが多く、明確な意図をもったプレーが出来ていなかった。
最後の(吉田を使った)パワープレーも、それを監督に選択させたのは俺達のせいだよね。
下でボールを繋いでやれないのがいけなかった。
日本は先制点を取った時に、同点にされてもいいという気持ちで前に行くべきだった。
相手は点を取られて、すごく嫌な時間帯だったはず。
ボール支配率を見ても、俺らは43%でしょ。
普段通りにやれば勝てた相手だけに、もったいなかった。」
ドイツW杯を経験している遠藤だけに、初戦敗戦の痛みはよく分かっているはずだ。
遠藤
「ドイツの時よりもショックは無いよ。
あの時は、レギュラー組とサブ組が明確に分かれて、一体感がなかった。
でも、今の俺らはもっとやれる自信がある。
何をしなければいけないかについて、意見をすり合わせる事ができた。
それを出来るところが、このチームの良い所なんでね。
ギリシャ戦は、開き直って自分達のサッカーを出せるかどうか。
それで負けたら、自分達の力不足だということ。」
気になるのは、ザック監督が「交代カードで失敗した」と言ったことだ。
遠藤は、「ザックさんは、スタメンを入れ替えることを考えているかもしれない」と意味深に言う。
(実際にギリシャ戦では、スタメンが大きく変更された)
(2014年11月16日に作成)