(『ネット記事ブロゴス』から抜粋)
※以下は、2015年11月に行われた宮間あやさんへのインタビューの抜粋です。
(カナダW杯から数ヵ月後のインタビューです)
質問
2011年のW杯ドイツ大会で初優勝してから、なでしこジャパンはどの様に変化しましたか?
宮間
ドイツ大会の時は、勝ちたいという思いはありつつも、「負けられない」とは思っていませんでした。
でも今年のカナダ大会は、「勝たなければならない」というメンタル面での大きな違いがありました。
個々の選手たちは、間違いなくプレッシャーを感じていた。
ただし、チームのベースは変わっていません。
なでしこジャパンは、『個々の力だけではなく、チームとしてどう動いていくか』をとても大切にしています。
質問
2011年から4年にわたってアスリートであり続ける難しさは、ありませんでしたか?
宮間
W杯で優勝してからは、支えてくれる人や用具が増えて、サポートが厚くなりました。
ですから、そこまで難しくはありませんでした。
質問
代表キャプテンになってから、心境の変化はありましたか?
宮間
よく訊かれるのですが、キャプテンになってから変わった事はほとんどありません。
澤選手がされていた頃から、一番近くで色々な事を教えてもらいましたので。
『キャプテンであってもチームの一員であり続けること』が、私の理想のキャプテン像です。
監督や選手同士の間に立つ役割も、キャプテンではなく誰がやってもいいと思っています。
「チームの全員が居心地よく力を発揮できる環境を作ること」が、キャプテンの重要な仕事です。
しかし、能力が高いメンバーが集まっている中で、それは不可能です。
所属チームではスタメンにいる選手が、代表ではベンチに座ることもある中で、それでも個々が自分を出せるチームでありたいと思っています。
質問
チームの良さを保ち続けるには、何が必要ですか。
宮間
チームとして、現状を維持する事を求めたら、終わりだと思います。
成長や新しい何かを探し続けないと、すぐに世界の波にのまれてしまいます。
「このままがいい」とか「この状態をどうやって維持していこうか」という発想になってしまった時点で、そのチームにはもう先がないと思います。
質問
チームとして伝承していきたい事は、無いのですか?
宮間
私は幸いなことに、若い頃から澤選手と一緒にプレーして、苦しみや喜びを共有させてもらいました。
そのお蔭で、様々な経験と感情が、自然に沁みついていきました。
つまり、澤さんがキャプテンの時代と、価値観がある程度は一緒になっています。
でも、新たに下の世代が代表に入ってきたら、育ってきた環境は違うし、同じ経験や感情の共有もない分、今あるものの継承はとても難しいと感じています。
継承よりも、新たなチームをつくっていく事が、これからのチームには合っていると思っています。
質問
ベンチにいる控え選手に対する配慮は、心掛けていますか?
宮間
サッカーでは、途中から出る選手が試合を決定づけることが多いので、「自分はチームの一員であり、重要な役割を持っている」とそれぞれが思えるように、目配りしています。
質問
2015年W杯では、澤選手はベンチスタートになりましたが、チームへの影響はありましたか?
宮間
主要大会で澤選手がベンチに座ることはこれまで無かったので、彼女の振る舞いはチームに大きな影響を与えていました。
試合に出ている選手には、「澤選手がベンチに座っているのだから、自分達は結果を残さないといけない」との思いがありました。
一緒にベンチに座っている選手には、「澤選手が一緒にいてくれるのだから、自分達もサブメンバーとして出来ることは全てやらなければ」との思いがありました。
澤選手は、途中から入ってきた時には試合を引き締めてくれたし、存在感は圧倒的でした。
質問
今後のなでしこジャパンに期待することは?
宮間
これからのなでしこを作っていく選手たちは、大変だと思います。
「先輩の築いてきたものは、あまりに大きすぎる」と感じる事もあるでしょう。
しかし、過去を背負う必要は全くありません。
私たちの世代は、女子サッカーの歩んできた苦難の道を振り返りながら、「先輩たちの想いを届けないといけない」と思いながらプレイしてきました。
でも、「この先の世代にまで重い荷物を渡したくない」と思っています。
女子サッカーは、チームが潰れたり(解散したり)していた所から、2011年のW杯優勝で状況が一変しました。
今はチーム数も増えて、リーグが消滅する危機はありません。
だから、これからの世代は、存分に自分たちのサッカーを楽しんでもらいたいです。
質問
宮間さんにとって、代表チームはどんな存在ですか?
宮間
チーム全員が特別な存在で、仲間以上に感じています。
W杯ドイツ大会で優勝してからは、密度が濃くて苦しい4年間を過ごしてきました。
「国際試合で勝つのが当たり前」とされるようになってからも、敗戦が続いたり屈辱的な内容の試合もあった。
しかし、誰も手を抜かずに、やれる事はすべてやってきました。
心から皆のことを誇りに思っています。
チームの全員が胸をはって自チームを自慢できるのが、私の理想のチームです。
(2015年12月21日に作成)