(『ZONE2014年9月号』から抜粋)
メキシコ人のアギーレ氏が、日本代表監督に就任する可能性が高まっている。
彼は、メキシコの代表チームを2度率いている。
メキシコ代表は小柄な選手が多く、W杯でコンスタントに活躍しているため、『日本にとって理想のスタイル』と考える人もいる。
メキシコ代表の平均身長は177.7cmで、日本の177.8cmよりも低い。
だが、そもそもメキシコ・サッカーとはどんなスタイルなのか。
メキシコのサッカーに詳しい岩本輝雄に話を聞いた。
岩本
「メキシコのクラブチームは、どのチームもテクニシャン揃いで、パスサッカーを志向しています。
特に中盤は選手間の距離が近く、ワンタッチ、ツータッチで相手のプレスをかいくぐっていく。
ゴール前では、「そこはダイレクト・パスでなくてもいいじゃん」って所までダイレで入れるから、見ていて本当に楽しい。
その一方で、攻撃が詰まればDFラインまでいったん戻して、作り直す。
だから、マイボールを大切にするポゼッション・サッカーです。
どのチームにも足元の上手いCBがいて、良いパスを出す。
ラファエル・マルケスなんて、その典型でしょう。
もう1つの特徴は、運動量の多さです。
特にウイングバックの運動量が半端じゃなくて、アップダウンを何度も繰り返す。
彼らへの要求はとても高く、攻守両面で1対1に強くないとダメだし、ゲームメイクも求められる。
小柄で、技術・運動量・連動性があるのは、日本との共通点です。」
アギーレは、2014年5月まではスペインのエスパニョールの監督をしていた。
岩本はどのような印象を持っているのだろうか。
岩本
「エスパニョールはカウンター一辺倒の手堅いスタイルで、あまり面白くなかった。
戦力が低いから、あの戦い方になったのかもしれない。」
アギーレの率いたメキシコ代表は、守備的な印象はなかった。
岩本
「戦力を見極めてチームを作る監督なのかもしれない。
彼が日本代表を率いることになったら、日本には攻撃のタレントが多いから、彼らを活かすサッカーになるんじゃないかな。」
岩本は、アギーレに期待するのは『チームに柔軟さをもたらすこと』だと云う。
岩本
「相手に引かれた時はポゼッションが大事だけど、相手のラインが高い時はそれでは難しい。
時には40~50mのロングボールを使って、高速カウンターを繰り出せるといい。
ポゼッションとカウンターをうまくミックスさせたチームを作ってほしい。
メキシコのチームは、4バックと3バックを使い分けるのが上手い。
4バックの場合は、2人のボランチを置く4-4-2が基本です。
3バックなら3-1-4-2で、中盤が1ボランチ2シャドーの形が多い。
4-4-2の時、2人のボランチのうち片方が最終ラインに下がれば、4バックから3バックに変われる。
日本代表も取り入れると面白いだろうね。
ポイントは、『ボールをさばけるCBが出てくるかどうか』。
それが、メキシコのパスサッカーを実現する鍵になります。」
(2015年12月29日に作成)