(『南アフリカを知るための62章』から抜粋)
南アフリカでは、空前のエイズ禍が続いている。
貧しい人々の間では、結核も猛威をふるっている。
政府は2003年から、エイズ治療の無料化を実施しているが、待機リストは長い。
南アの平均寿命は、50歳である。
エイズによる死者は、合計35万人と見積もられている。
感染者の大多数は、過去の性行為は2~3人である。
ほとんどの人が、普通の恋愛や結婚をした人達である。
ある地区では、住民の6割が感染者だったこともある。
政府によると、15~49歳の5人に1人が感染しているという。
エイズで家族を次々に失うと、喪失感からうつ状態になったり、酒やドラッグに走る者もいる。
親がエイズで亡くなった「エイズ遺児」は、120万人もいる。
遺児がもらえる手当を目当てに後見人になり、本人を放置する親族も少なからず存在している。
葬式の時に配られるランチは、失業率が5割のタウンシップ(都市の黒人居住区)では、貴重な食糧源となっている。
タウンシップでは、空腹の時は誰かの家に行けばいい。
ほとんどの家庭は、明日の食いぶちが無くても、目の前の隣人に食事をふるまう。
そういった「持つものを分かち合う文化」が、貧しい人々を支えている。