(『コロンビアを知るための60章』から抜粋)
コロンビアは、世界最大のエメラルド産出国である。
世界生産の55%を占め、主な顧客は日本人だ。
鉱山は、クンディナマルカ県とボヤカ県に集中している。
チボール産は、高級エメラルドの代名詞として知られている。
エメラルドの採掘は、16世紀前半のスペイン人による侵略によって、活発になった。
鉱山はスペイン王室の直轄となり、副王(現地の統治者)の管理下に置かれた。
18世紀までは副王の管理が続いたが、その後はコロンビア独立に至る混乱の中で、様々な個人の手に渡った。
その後コロンビア政府は、1886年の憲法で「エメラルド鉱山の国家への帰属」を決めた。
しかし上手く行かず、多くの民間企業に採掘権が与えられた後に、1944年に政府は5.5万ヘクタールの土地の管理を、中央銀行に委託した。
ただし、チボールやブエナビスタなどの鉱山は、個人の所有となっている。
1950年代以降、エメラルドの利権をめぐって、「緑の戦争」と呼ばれる暴力の嵐が吹き荒れ、1000人以上が殺された。
1980年代半ばになると、麻薬マフィアが利権に参入しようとし、「緑の戦争」が再燃した。
大物マフィアのロドリゲス・ガチャ、エメラルド王のビクトル・カランサ、軍・警察による、3つどもえの戦いは、多くの死者を出した。
1990年に、大物エメラルド商人たちの間で和平協定が結ばれた。
(2013年4月3日に作成)