(『日本の課題40』池上彰著から抜粋)
1992年に、当時の最高指導者だった鄧小平はこう言った。
「中東には石油があるが、中国にはレアアースがある」
1980年代になると、レアアースは石油と同じような重要性を持つようになった。
そしてレアアースは、中国がほぼ独占している。
中国は、世界のレアアースの埋蔵量の48.3%を占めている。
レアアースとは、17種類の希少な元素の総称である。
この元素たちは、最新のテクノロジーには欠かせない。
ハイブリッド・カー、電気自動車、エアコン、携帯電話など、たくさんの商品に使われている。
レアアースは1970年代までは、欧米の限られた企業(資源メジャー)が独占をしていたので、価格は安定していた(高値で維持されていた)。
ところが80年代に入ると、中国が参入してきて、安値で輸出をしてシェアを伸ばしていった。
レアアースは、採掘と精製をすると、その過程で放射性廃棄物が出る。
通常は、放射性廃棄物を貯蔵する施設が必要だが、中国は広大な土地をいいことに放置している。
だから、安く輸出できるのだ。
2010年に中国は、レアアースの輸出を停止しようとし、日本の製造業を震撼させた。
中国は内需を優先して、輸出量を制限しようとした。
この動きもあり、レアアースの価格は、種類によっては6倍にも跳ね上がった。
日欧米は「WTOのルール違反だ」と非難して、なんとか輸出枠は微減でとどまった。
レアアースの価格が急騰したため、最近は各国がレアアース鉱の開発を進めている。