(以下は『東京新聞 2017年8月29日』から抜粋)
重慶市を治める孫政才(53歳)が、次期の中国共産党の最高指導部を決める党大会を目前にして、解任された。
7月下旬に共産党の中央規律検査委員は、孫の重大な規律違反を取り調べていると公表した。
孫政才は、温家宝・前首相らに抜擢された人で、胡春華と共に今秋の党大会で最高指導部に入るのが確実視されていた。
(※孫と胡は、最高指導部に入り、習近平の後を継ぐと見られていた人である)
どうやら孫の重慶市の統治ぶりが、習近平には納得できなかったらしい。
(以下は『東京新聞 2017年9月3日』から抜粋)
習近平・政権は、「トラもハエも叩く」と宣言して、反腐敗の運動を進めてきた。
そして汚職摘発を名目にして、習の政敵を除いてきたのが、 規律検査委員会のトップをつとめる王岐山(69歳)である。
2017年7月に、次世代の総書記候補とされていた孫政才が、汚職嫌疑で失脚したが、習との権力闘争が背景にあったようだ。
2017年4月に、王岐山の一族の汚職疑惑を、アメリカのメディアに郭文貴が暴露した。
郭文貴は政商で、王の一族の不正蓄財の調査を公安当局から指示されたと述べている。
補足すると、王岐山は北京市長や金融担当の副首相をしてきた人で、元副首相の姚依林の娘婿である。
王は、周永康、徐才厚、令計画といった、共産党の最高幹部たちを、汚職摘発で次々と失脚させてきた。
共産党の最高指導部には、68歳定年制があり、69歳の王はもうすぐある党大会で引退となる予定だ。
だが習は残留を望んでいるという。
(以下は『東京新聞 2017年10月16日』から抜粋)
今回の共産党の中央委員会・全体会議では、党の規約を改定して、習近平・総書記の指導理念である「治国理政」を書き込むことが確認された。
習近平は、自分の権威を高めて一強体制にするのを狙っている。
習は6月の閲兵式や7月の閲兵式で、自らについて、「首長」に代えて「主席」の呼称を使った。
これは、かつて毛沢東が就いていた党主席のポストを復活させる地ならしとの見方もある。
もうすぐある党大会を前に、抗議活動をしそうな住民の監視や連行が相次いでいる。
インターネットの規制も強化されている。
「ネット安全法」(2017年6月施行)に基づき、当局が会員制交流サイトの書き込みを監視し、通報が増えている。
9月下旬にはネット大手3社が、管理不十分として行政処分を受けた。
海外サイト閲覧の制限も始まっている。
(以下は『東京新聞 2017年10月25日』から抜粋)
中国共産党の第19回・党大会が行われた。
習近平・総書記の指導理念である、「新時代の中国の特色ある社会主義思想」を、党規約の行動指針に入れる改定案が採択された。
個人名を冠したものが党規約の行動指針に入るのは、毛沢東と鄧小平、以来である。
1期目の終了時点で指導者の理念が行動指針になるのも、異例のことだ。
習は2016年10月に、党の特別な指導者を意味する「党の核心」なっていて、一強体制の構築を進めている。
今日の党大会では、シルクロード経済圏の構想「一帯一路」や、反腐敗運動の推進も、党規約で明確にすると決まった。
なお党大会の閉幕式では、習は笑顔で、江沢民、胡錦濤というかつての総書記と握手を交わした。
習が求めていたとされる「党主席の復活」は、反対が多かったようで、見送られた。
だが、習が5年後に総書記を退任しないのでは、との観測は絶えない。
党大会では、約200人の中央委員も選出したが、今回も選出方法や審議過程の情報公開は進まなかった。
(以下は『東京新聞 2017年10月26日』から抜粋)
中国共産党の中央委員会は、新たな最高指導部の7人を選出した。
50歳代の若手は起用されず、習近平の後継者は決まらなかった。
習・総書記と李克強・首相(62歳)は留任し、他の5人は新たな顔ぶれとなった。
新たな顔ぶれは、習の側近の栗戦書、経済通の汪洋、ブレーン役の王滬寧。
反腐敗の運動を指揮してきた王岐山は退任し、後任は趙楽際に決まった。
あとは韓正(上海市のトップ)が選ばれた。
新メンバーのうち、栗と趙は習に近い。
汪、韓、王も、習との関係は良好で、習の一強体制が固まった。
(以下は『東京新聞 2017年10月27日』から抜粋)
重慶市トップの陳敏爾・市党委書記(57歳)は、広東省トップの胡春華(54歳)と共に、次世代のリーダー候補と見られていた。
だが政治局常務委員(中国共産党の最高指導部)への昇格は、2人ともできなかった。
中国共産党の総書記は、2期10年が慣例である。
習近平は1期目を終えるところだ。
総書記になるには、5年は最高指導部で経験を積むことが求められ、68歳定年制もあるため、遅くとも57歳までに最高指導部に入る必要がある。
今日の党大会では、57歳以下の者が最高指導部に入らず、習近平・総書記が後継者を決めないという、異例のものとなった。
習近平が3期目を目指す、または院政をしく、との見方も出始めている。
2期目の習政権は、「小康社会」(ややゆとりのある社会)の実現に力を注ぐ方針だ。