(以下は『毎日新聞 2012年9月4日』から抜粋)
政治局常務委員が、現在の9人から7人に削減されると決まった。
削減されるのは、メディア担当と司法・公安担当。
メディア担当はネット上の言論規制が、司法・公安担当は公民権の軽視が、国民の批判を浴びていた。
常務委員は5~7人だったのが、胡錦濤の時代に9人に増えていた。
(以下は『毎日新聞 2012年11月14日』から抜粋)
第18回の中国共産党・党大会が開催中だ。
今回の決定で、政治局の常務委員は9人から7人に減ると見られている。
常務委員は、習近平と李克強が留任して、張徳江、兪正声、劉雲山、張高麗、王岐山の昇格が有力視されている。
胡錦濤・総書記と同じ共青団の出身で、胡錦濤に近しい李源潮と汪洋は、昇格しないようだ。
胡錦濤と江沢民らの話し合いの結果、兪正声に昇格を譲り、李源潮と汪洋は5年後の昇格で折り合いをつけたという。
(以下は『毎日新聞 2012年11月15、16、27日』から抜粋)
指導部の10年に1度の世代交代の場となった「第18回共産党大会」が終わり、習近平体制が発足した。
中国共産党の最高指導部を構成するのは、『政治局常務委員会』である。
同委員は今回、9人から7人に減った。
習近平とナンバー2の李克強・副首相を除く5人は、5年後に引退すると見られる高齢者たちである。
常務委員枠の削減については、「7人でも問題ないと判断された」、「委員の特権への批判が強かった」が背景にあるという。
新たに委員に昇格したのは、習、李の両氏を除く5人である。
昇格が有力視されながら外れたのは、いずれも胡錦濤に近い、李源潮、汪洋広、女性の劉延東の3人だ。
胡錦濤は、長老の江沢民に委員選びを譲り、軍幹部に自らに近い人物を抜擢する事を選んだらしい。
抜擢した人物を5年後に委員に昇格させる布石を打つことで、江と折り合いをつけたらしい。
なお7人の政治局常務委員のうち、共青団(共産党主義青年団)の出身者は、李克強だけである。
(※胡錦濤は共青団の出身である)
李克強と王岐山を除いた5人(習近平を含む)は、江沢民寄りとされる。
特に兪正声と張高麗は、江沢民の後押しで昇格したと見られる。
今年の夏に、党幹部が集まって開かれた、「北戴河会議」。
ここで胡錦濤は、自らに近い李源潮らの委員入りを求めた。
だが江沢民に拒否された。
胡錦濤は、人事で敗北したと見られている。
鄧小平の時から、最高実力者は総書記を譲っても、中央軍事委員会主席に留まる慣例が続いてきた。
しかし胡錦濤は、軍事委主席も辞めて完全に引退する。
胡錦濤は軍との関係が薄く、権力構造が二重になるのを望まなかったという。
「江氏は胡氏のやり方が気に入らずに介入をし、胡氏にはそれをはね返す力が無かった」と、党の研究者は言う。
新体制では、習近平が軍を統括する「中央軍事委員会主席」に就任し、劉雲山は党の日常業務を担当する「党中央書記処の筆頭書記」、張徳江が「全人代(国会)の委員長」になると見られる。
兪正声は国政助言機関である「政治協商会議」の主席、張高麗は筆頭副主席になると見られる。
中国の政治家を説明する時には、高級幹部の息子を指す「太子党」と、共産党の青年組織「共青団」で色分けをする事が多い。
しかし、太子党でありながら共青団に所属する人物も多く、区別は難しい。
毛沢東や鄧小平の時代は、権力闘争には国家の行方をめぐる路線対立があった。
しかし今の権力闘争は、利権とポストの争いで、国民は冷めた目で見ている。
今後の課題は、人事制度の公正化・透明化である。
指導者の権威や権力は、どんどん弱くなっている。
党内選挙の活用が効果的だろう。
現在の国民の抗議活動は、地域や階級を横断する形になっていない。
🔵常務委員の略歴
李克強
共青団で16年間も活動しており、胡錦濤の腹心とされる。
共青団のトップから政界入りした。
知日派で知られ、小沢一郎の自宅にホームステイした話は有名。
李克強
共青団で16年間も活動しており、胡錦濤の腹心とされる。
共青団のトップから政界入りした。
知日派で知られ、小沢一郎の自宅にホームステイした話は有名。
張徳江
1978~80年に北朝鮮の金日成大学に留学している。
江沢民に近い。
中国で最も経済規模の大きい広東省のトップを務めた。
兪正声
ミサイル工学を学び、若い頃はエンジニアをした。
太子党の代表的な一人。
2007年に習近平の後任として上海市のトップになった。
劉雲山
メディアを統制する「中央宣伝部長」を10年に渡り務めた。
共青団での活動を通して胡錦濤と親しくなったとされる。
王岐山
現在は副首相だが、政治局常務委員への昇格が確定した。
亡くなった姚依林・元副首相の女婿である。
朱鎔基・前首相と関係が深く、改革に積極的。
これまでに中国人民銀行(中央銀行)副総裁や北京市長をしており、「中国経済の顔」、「金融通」となっている。
問題処理能力の高さから、「消防隊長」とも呼ばれる。
米国との交渉役も務めてきた。
張高麗
石油業界で力を付けた「石油閥」の1人。
経済特区の深圳(しんせん)市の党委書記時代に江沢民に評価され、それ以来親しくしているという。
(以下は『毎日新聞 2012年12月27日』から抜粋)
胡錦濤の政務秘書だった陳世炬(ちんせいきょ)が、党大会の中央委員候補選挙で落選した。
前総書記の側近が落選するなど、普通はあり得ない。
中央委員に当選した李小鵬は、李鵬・元首相の子で、保守派の太子党だ。
李小鵬は、李家の支配する電力業界から政界に転じた人である。
上海市長に内定した楊雄は、江沢民の息子が経営する投資会社で社長をしていた人だ。
江沢民が主導した人事と見られる。
江沢民は北京から上海に戻ったが、上海は彼の居城のようになっている。