(毎日新聞2013年6月7日から抜粋)
パキスタンの治安の悪化は深刻である。
隣国アフガニスタンで2001年に始まった、アメリカの対テロ戦争に対抗する自爆テロは、パキスタンの南部にも広がっている。
南部では、CIAが無人攻撃機による空爆をくり返している。
2004年以降に356回の空爆が行われて、2706人の武装勢力と307人の民間人が犠牲となった。
パキスタン国民の反米感情は高まっている。
住民たちは、「アメリカの攻撃は、若者たちを武装集団に導く口実を作っている」と語る。
空爆で家族を亡くした40代の男性は、「奴らは勇気がないから、遠隔操作の無人機を作っている。米兵と1対1で対決できるなら、この手で殺害し、息子たちの復讐を果たしたい」と語った。
アメリカ人には、「自宅を一歩出れば、無法地帯だ」との考え方が根強くある。
ここから生まれる自衛思想が、過剰なテロ対策になっているのではないか。
パキスタンで取材していると、「アメリカの独善的な外交こそが、世界の平和を乱している最大要因だ」と思えてくる。
アメリカは、極秘にされている無人機の実態を公表しなければならない。
パキスタン南部で教育支援をしてきたマザヒルさんは、「無知と貧困が、子供達を武装集団や犯罪組織に入れている」と言う。
この国には、教育を受けられない子供が、1500万人もいるという。
教育を受けられず無知な子供たちが、自爆テロに駆り出される現実がある。
教育を通じて、『生命の大切さ』を教えなければならない。
(2016年10月29日に作成)