ユダヤ教の超正統派とは(以下は『ウィキペディア』からの抜粋
2026年5月31日に作成)
🔵超正統派とは何か
ユダヤ教の「超正統派」とは、ユダヤ教の教義や戒律を厳格に守る宗派である。
黒い帽子に黒いスーツ、長い髭を伸ばすのが、超正統派の男性の特徴である。
女性は鬘やスカーフで地毛を隠すことが多い。
男性は世俗職に一切つかず、女性が稼ぎを担当する。
男性はイェシーバー(ユダヤ教を学ぶ学校)に籍を置き、教義を学ぶことに一生を捧げることが求められるため、就労していない者が多い。
男性が就労しないので貧困率は高く、イスラエルでは国による生活補助金で暮らす人が多い。
「男性は宗教を学ぶ。女性はそれを支える。それが幸せになる道だ」というのが超正統派の価値観である。
なお、イスラエル国外にも超正統派のコミュニティはある。
幼少期から男女別に学校に通う。幼稚園から男女別学である。
子供は神の恵みとすることから、合計特殊出生率が6を超え、イスラエル全体の3よりも高く、信者数が増加している。
イスラエル人口に占める超正統派の比率は、2014年時点の10%近くから、2019年1月時点に12%(約100万人)へ増えた。
21世紀半ばにはイスラエル人口の40%に達するとの予測もある。
イスラエルで18歳以上の男女に課せられる国防軍への徴兵義務も、超正統派は特別に免除されてきた。
徴兵免除や補助金といった「特権」に対し、世俗派から批判が出ている。
2023年10月にパレスチナとの戦争が本格化すると、徴兵免除の不公平さに批判が集まり、最高裁判所は2024年6月にイェシーバー(ユダヤ教を学ぶ学校)の男子学生を徴兵するよう政府に命じた。
近代的な技術や価値観を否定し、インターネットやテレビなどは利用せず、代わりに「パシュケビル」と呼ばれる超正統派の居住区内の街頭に貼られるポスターによって情報を得る。
携帯電話は使うが、宗教指導者から認定を受けた、通話機能のみが付いた機種しか使用できない。
子供の頃から男女別に教育を受け、異性交遊も禁止されているため、結婚は自由恋愛ではなく、仲介人を通じて家柄や宗教学校での成績によって決める、見合い結婚がほとんどである。
また、内容が性的であるかを問わず、女性の画像を見せない傾向があり、超正統派系の新聞では、ドイツのメルケル首相やアメリカのヒラリー・クリントン大臣など女性政治家の姿を写真から消して(修整して)掲載したことがある。
ハシディームと呼ばれる一派はさらに厳格で、女性の姿を見ることはおろか、頭の中で想像することすら禁じている。
トラブルを避けるためとの理由で、超正統派の居住地区では「露出の多い服を着て歩かないように」といった注意書きが掲示されている。
超正統派の聖地はウクライナに存在している。
🔵超正統派はシオニズムを嫌う
イスラエル国外の超正統派の一部は、パレスチナの解放や反シオニズムの活動を行っている。
特にナートーレー=カルターの一派は、イスラエルの建国すら認めていない。
これはイスラエルの再建はメシアの到来によってなされるべきであり、人為的に行うものではないとの信念から来ている。
超正統派の思想基盤はシオニズムではなく、ハシディズム(敬虔主義運動)であり、世界最大のハシディズム・グループであるサトマール派やエダ・ハチャレイディス派などがこれにあたる。
防衛大学校名誉教授の立山良司は2018年の論文にて、
2016年時点でイスラエルにいるユダヤ人教徒のうち「自らをシオニストと思う」と答えたのは73%である、と書いている。
同論文によると、イスラエルの現代正統派は24%、伝統派は14%、世俗派は24%、超正統派は63%が、「私はシオニストではない」と回答した。
超正統派の派閥の多くは、シオニズムに反対の立場である。
超正統派の多くは、「ユダヤ人は罪に対する罰として神によってイスラエルから追放された。神はメシアの時代にのみユダヤ国家を再建する」と信じている。
そして「それ以前に人がユダヤ国家をつくる事は、神に対する侮辱である」と信じている。
超正統派は、パレスチナ人の領土を奪ってイスラエルを建国したことに対し、聖書の「汝、殺すなかれ、盗むなかれ」に違反していると考える。
「聖書の教えに反した行いは、同胞といえど肯定できない」と考え、
「メシア(救世主)が現れないと真のユダヤ国家は実現できない。まだメシアは現れていない。だから現在のイスラエル国家は偽物であり、認められない」とする。
超正統派の中には、イスラエル建国の日に「イスラエルの残虐行為を糾弾する」デモを行ったり、「イスラエルはユダヤ国家ではない」と抗議する者もいる。
「超正統派の中の超正統派」とされる「ナートーレー=カルター」は、イスラエル国内でパレスチナ解放運動と反シオニズム活動を行っている。
イスラエル国民から批判を浴びる事もあるが、彼らは「我々が仕えるのは神である」と反論している。
イスラエル軍のパレスチナ人虐殺に反対し、ガザ地区へ入って安息日をパレスチナ人と共に過ごしたこともある。
厳格なユダヤ教徒であるカナダのモントリオール大学のヤコブ・ラブキン教授は、「シオニズムはユダヤ教の教義に反する」と批判している。
2023年のパレスチナ・イスラエル戦争では、イスラエル国外の超正統派のラビ(宗教指導者)は「私たちはパレスチナの隣人たちと平和に暮らしたいのです」と声明を出し、イスラエル政府へ抗議した。
🔵兵役を拒絶
ほとんどのユダヤ教徒がイスラエル国防軍の兵役につくのに対し、超正統派は教義を学ぶことを理由に兵役を拒否してきた。
政府も建国以来、兵役を免除していた。
だが不平等と見られて、2014年3月に兵役を課す法案が国会で可決された。
これにより2017年から男性信徒に限り段階的に兵役が課されることとなった。
しかし反発は強く、2018年11月にエルサレムで抗議デモが発生した。
以降は兵役義務を免除する小手先の時限的な法的措置で凌いだが、2023年10月にガザ地区を統治するハマースとの戦争に突入すると、不平等との批判が高まった。
2024年2月の世論調査では、超正統派の徴兵免除の見直しにユダヤ教徒全体の70%が賛成した。
同年6月に最高裁は、超正統派を徴兵し、ユダヤ教神学校の学生が徴兵に従わない場合は学校への補助金を停止するよう政府に命令した。
2024年11月、イスラエル軍は徴兵に応じない1126人に逮捕状を出した。
2025年1月に超正統派の入隊が始まった。
徴兵はネタニヤフ政権による強制であるとして、超正統派の政党はこの強制を拒否し、軍に超正統派のイェシバ派の学生を徴兵しないよう命令した。
結果、国防軍へ参加している超正統派は極少数にとどまっている。