諜報機関「モサド」(以下は『週刊文春 2023年11月9日号』から抜粋
国際政治学者の小谷賢氏の解説)
モサドは、イスラエルの首相官邸に直属する諜報機関で、6~7千人の職員がいるとされる。
イスラエル政府には他にも、軍に属する「アマン」、首相府が直轄する「シンベト(シャバク)」という諜報機関もある。
モサドは、以前は他薦でしか雇わず、兵士からスカウトしたり、民間企業から引き抜いていた。
モサドは、誘拐や暗殺も行ってきた。
モサドは2007年ごろから、イランの核技術の科学者を暗殺してきた。
2020年にも、モフセン・ファクリザデという科学者を暗殺している。
2023年1月のイランの軍事施設へのドローン攻撃も、モサドの仕業と見られる。
かつてのモサドは、人との接触(ヒューミント)で情報を得ていた。
しかし近年は、シギントと呼ばれる、通信やメールの盗聴で情報を得ている。
そこでハマスは、対抗策としてアナログな方法でテロ計画を進めたようだ。
モサドなどの各国の諜報機関は今、ヒューミントへの回帰を模索しているが、簡単にはいかないだろう。
イスラエルのネタニヤフ首相は、イランへの空爆をずっと指示してきたが、2000年代にモサド長官だったメイル・ダガンやタミル・パルドは当時、反対していた。
今回も、軍やモサド幹部は「(パレスチナのガザ地区を攻撃しても)ハマスの殲滅は不可能」と見ている。
ガザへの本格的な侵攻は、世界の国々を敵に回しかねないと冷静に分析している。
ところがネタニヤフ首相が好戦的で止まらない。
専門家らの分析では、モサドを含むイスラエルの軍や諜報機関は、設立から今日までに2700人も暗殺している。
モサドはパレスチナ人のゲリラ「黒い九月」の幹部であるアリ・ハッサン・サラメを、7年も追跡して暗殺した。
暗殺ターゲットはしつこく追い続けるのが特徴である。