(『世界の紛争がよくわかる本』から抜粋)
クルド人は、イラク、イラン、トルコ、シリア、アルメニア、の5ヵ国の国境にまたがる山岳地帯に住み、クルド語を話す民族のことを言う。
総人口は2000~2500万人と言われ、9割がイスラム教スンニ派である。
『国家を持たない世界最大の民族』、と言われている。
中世には、クルド人はオスマン・トルコ帝国とペルシャ帝国から、自治を認められていた。
クルド人の運命を大きく変えたのが、第一次世界大戦であった。
敗戦国となったオスマン・トルコ帝国は、『セーブル条約(1920年)』を連合国(勝利国たち)と結んだ。
この条約では、クルディスタン(クルド人の居住地域)の独立が約束されていた。
しかし、トルコが共和制に移行すると、連合国の気は変わり、トルコをソ連に対する反共緩衝地にする事にした。
そして、1923年の『ローザンヌ条約』では、クルディスタンの独立は反故にされてしまった。
第二次世界大戦後の一時期、ソ連の支援でイラン北西部に、クルド人の共和国が樹立された。
しかしイラン軍によって、1年足らずで崩壊させられた。
クルディスタンには、中東では貴重な水と、石油がある。
トルコが独立を認めない背景には、水源を支配されたくないとの思いがある。
イラン・イラク戦争中の1988年3月には、クルド人の町ハラブジャがイラク軍の毒ガス攻撃を受け、民間人5千~6千人が殺された。