タイトル中国人の幸福観、福禄寿

(『世界の歴史9 最後の東洋的社会』三田村泰助の文章から抜粋)

中国人(漢民族)は、人生の幸福を「福・禄・寿」の3つに要約する。

つまり、子孫に恵まれること、財産を持つこと、長生きすること、が幸福だと考える。

福・禄・寿のそれぞれの象徴として、蝙蝠(こうもり)、鹿、寿老人がよく使われる。

こうもりは福の当て字、鹿は禄の当て字である。

中国の民衆にとって良い政治とは、福禄寿を妨げない政治である。

王朝が下り坂になった時に、王朝に忠義を尽くすと死ぬことが多いのは、歴史が教えている。

だから「愛国心はほどほどにする」というのが、中国人の心境である。

また華北(中国の北部)の地は、明の時代を除いて、10世紀から清の時代まで異民族に支配された歴史がある。

このため民族意識(漢民族の自立意識)は、南部に比べて薄かった。

これが、さしたる抵抗もなく(異民族の)清朝が北京に政権(王朝)をつくれた一因である。

中国人(漢民族)の追求する福禄寿は、人間の欲望を満たすことであり、現世主義で享楽性もある。

深い精神性よりも、肉体と欲望を重視する。

人間関係では、血の繋がりを何よりも優先することになり、まず親子関係があって、そこから親族や血縁社会に拡がる。

一族の団結も強いが、逆に個人主義は長く育たなかった。

中国人は自然児で、運命とか偶然をそのまま認めた。

自然界に見られる弱肉強食も、当然として受け入れた。

中国流に言うと、食う立場(強者)を「天命」と言い、食われる立場(弱者)を「没法子」(仕方がない)と言う。

中国社会には昔から、士と庶の区別がある。

士は支配者階級であり、強者の彼らは「天命」の語を使う。

庶は被支配者の階級で、弱者の彼らは「没法子」(仕方がない)の語を使う。

ただし乱世になると(王朝の末期になると)、庶の者たちが歴史の主役に躍り出てくる。

(2022年9月21日に作成)


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