タイトルジェイムズ・ブルース、エノク書、フリーメイソン

(『神々の刻印』グラハム・ハンコック著から抜粋)

ジェイムズ・ブルースは、身長は190cm超えで、スコットランドはキネアドに所領を持つ貴族の出である。

彼はエディンバラ大学で勉強し、東インド会社に就職した。

妻が急死すると、それからは旅行の日々となり、スペインやポルトガルではアラビア語の写本を調査した。

彼は語学力を認められて、イギリス政府のアルジュの領事に任命された。

ジェイムズ・ブルースは、測量術や航海術も身につけて、1768年からエチオピアに旅行した。

その体験を、『ナイルの水源発見の旅 1768~1773』に書いている。

だが、ナイル川の水源には、ペドロ・パエスとジェロニモ・ロボというポルトガル人が、1600年代に到達していた。

この事(水源が発見されていること)を、ブルースは知っていた。
それは彼が著書で言及している点から、明らかである。

彼の怪しい点は、契約のアークの話になると、いっそう明らかである。

彼はアークについて、嘘をつき、真実を出し惜しみしている。

彼は『ナイルの水源発見の旅』に、こう書いている。

「シェバの女王は実在の人で、エルサレムのソロモン王の宮廷におもむいた。

女王はエチオピアの人で、アラブ人ではない。

『ケブラ・ナガスト』に記されている、シェバ女王とソロモン王の恋愛も、2人の間にできた息子メネリックの誕生も、あり得ないことではない。

メネリックは(エチオピアで育った後)、エルサレムを訪問し、ユダヤ教徒の移民を引き連れてエチオピアに戻った。

これがエチオピアの君主制度の礎となった。」

ジェイムズ・ブルースは著書の中で、『ケブラ・ナガスト』の重要性と信憑性を請け合っている。

それなのに、(『ケブラ・ナガスト』がエチオピアに運ばれたと書いている)契約のアークについて、全く触れていない。
意図的に避けている。

ブルースは、(契約のアークがあるとされる)アクスムを、1770年の1月18~19日に訪れている。

この日は、ティムカット祭があり、アークが教会から運び出される日である。

彼はアークを見ようとしたに違いない。

ジェイムズ・ブルースの旅行の目的は、ナイル川の水源発見ではなく、アークだったのではないか?

彼は古代ヘブライ語などを学び、聖書を研究していた。

その知識は、『ナイルの水源発見の旅』にちりばめられている。

私は、ベライ・ゲダイ博士に電話して、ジェイムズ・ブルースについて聞いてみた。

ゲダイ博士は、次のことを教えてくれた。

「われわれエチオピア人は、ブルースがナイル川の水源を発見するためにやって来たとは思っていません。

彼は、われわれの宝物を盗み出した。
貴重な写本をヨーロッパに持ち帰り、その1つが『エノク書』です。

『ケブラ・ナガスト』の古写本も持ち帰りました。」

ジェイムズ・ブルースは、盗み出した本を後になってから、オックスフォード大学とボドレアン図書館に寄贈し、今日もそこにある。

エノク書は、ヨーロッパには逸文しか残ってなかったが、ブルースが持ち帰ったことでヨーロッパにも完全版が普及することになった。

『エノク書』は、フリーメイソンにとって重要な書物で、フリーメイソンでは古くからエノクはエジプトの知恵の神であるトトと同一視されていた。

『英国メイソン百科事典』を見ても、エノクは文字の発明者で、建築の技術を教えたとされている。

ジェイムズ・ブルースは、エチオピアから三冊も『エノク書』の写本を持ち帰っている。

これを知ると、彼がメイソンだった可能性も浮かんできた。

そこで私は、1990年8月にスコットランドへ行き、ブルースの子孫を訪ねた。

現在のブルース家の当主は、エルギンとキンカーディンの伯爵で、フリーメイソンでは親方の地位にある。

その当主は初老の人物だったが、尋ねたところ、やはりジェイムズ・ブルースはフリーメイソンだった。

ちなみに第7代のエルギン伯爵であるトーマス・ブルースは、ジェイムズ・ブルースの一族だが、ギリシアのパルテノン神殿の大理石の浮き彫りを持ち出して、イギリスに運んだ人である。

これは大英博物館に買われて、「エルギン・マーブル」と呼ばれている。

余談になるが、『エノク書』は現在では3つの版が知られている。

「第一エノク書」(エチオピア語エノク書)は、前3世紀~後1世紀頃にまとめられたと考えられている。

「第二エノク書」(スラヴ語エノク書) は、1世紀頃にまとめられたと考えられている。

「第三エノク書」(ヘブライ語エノク書)は、5~6世紀頃にまとめられたと考えられている。

(2024年6月1日に作成)


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