(『ニュートン 2014年7月号』から抜粋)
水星は、質量が地球の5.5%にすぎないにも関わらず、密度は地球や金星と同程度である。
これは、水星が他の惑星に比べて重い材料で出来ている事を示している。
水星は、金属の割合が高いようだ。
惑星では、重い物(金属)は中心部にあり、軽い物(岩石)は外層にある。
惑星ができる際に、惑星全体(もしくは一部)が熱によって液体になるため、重い物が沈み込んでこのような構造になる。
中心の金属部分を「コア」、外層の岩石部分を「マントル」という。
地球のコアの体積の割合は17%と推定されているが、水星のコアは42%と推定されている。
異常に大きなコアが水星に存在する理由は、分かっていない。
有力な説は、「水星に巨大な天体が衝突して、マントル部分を吹き飛ばした」というものである。
しかし、NASAの探査機「メッセンジャー」が水星表面の元素を解析した結果、従来考えられていたよりも揮発性の元素(カリウムなど)が多く存在している事が分かった。
揮発性元素は、巨大衝突が起きれば蒸発してしまうと考えられており、この観測結果は巨大天体の衝突説には不利である。
(2014年10月23日に作成)
(『惑星地質学』東京大学出版会から抜粋)
水星は、太陽系の惑星でもっとも内側の軌道を周回している。
サイズは小さいが、磁場の存在が確認されている。
平均密度が高くて、巨大な金属核の存在が示唆される。
平均密度の大きさは、鉄に富んでいることを示している。
おそらく、鉄を主成分とする中心核が全質量の70%を占めている。
水星の探査は、1974年~75年にNASAのマリナー10号が行ったのみである。
(※この本は2008年1月の出版です)
その際、地表の45%を撮影し、磁場の観測などを行った。
地球上からも観測をしているが、太陽に近いため観測しづらい。
太陽光を避けなければならず観測機会は限られる。そのため、太陽系の中で最も未知な惑星の1つである。
水星の公転周期は約88日、自転周期は約59日。
公転と自転の周期は、3:2の共鳴関係にある。
最も太陽に近い場所(近日点)を通る時は、太陽側の地表は温度が700Kに達する。
水星に固有の磁場があることは、マリナー10号の観測で明らかになった。
金属(鉄)の核に硫黄などの軽い元素が含まれていると、凝固せずに液体核が存在する可能性が生じる。
そうなればダイナモ作用による磁場の生成を説明できる。
水星の秤動(ゆっくりとした振動運動)をレーダーで観測した結果、液体核の存在が示唆されている。
固有磁場と太陽風の相互作用で、水星の磁気圏が形成される。
磁気圏のサイズは、地球の20分の1と見積られている。
地球だと、電離圏が磁気圏と電気的に結合しており、磁気嵐やオーロラが起こる。
水星の場合、大気は希薄で磁場も弱いため、電離圏やプラズマ圏は存在しないと考えられる。
マリナー10号の撮影は全表面の45%に留まったが、特徴のいくつかを明らかにした。
水星の表面は、クレーターの多い「高地」と、平坦な「平原」から成る。
直径50km以下のクレーターが少なく、この特徴は火星にも見られるが、理由は分かっていない。
過去の水星に火星のような大気があった証拠はないが、厚い大気があったとすれば小型の隕石が大気に突入した時に減速や破壊された事が考えられる。
平原では、直径100km以上のクレーターが溶岩または衝撃溶融物で満たされ、平坦になっている。
高地と平原があるなど、水星と月は外見が似ている。
最大のクレーターは「カロリス盆地」と呼ばれ、直径は1300kmに及ぶ。
クレーターの中には、隕石衝突時の放出物が放射状に堆積した、「光条」とよばれる構造を伴うものがある。
光条の反射率は極めて高い。
また、クレーター底の反射率も高く、地表の下に反射率の高い物質の岩盤があるらしい。
火山活動で生まれたと考えられる平原だが、水星で火山やテクトニクスは見つかっていない。
水星表面には巨大な断層や断崖の「線構造」があり、大きなものは数百kmに及ぶ。
これは、冷却化に伴う収縮によると考えられる。
地球からの観測では、水星表面には鉄酸化物が少ないと見積もられている。
鉄は大量に存在するはずなので、鉄の多くは核に存在する可能性が高い。
マリナー10号の観測の結果、表面温度は昼夜で90~700Kの変化があると判った。
これは、全表面が月面と同様に細粒のレゴリスに覆われた場合の熱計算と、良い一致を示す。
地球からのレーダー観測により、極域のクレーターの底には氷が存在していると考えられる。
水星には、希薄だが外圏大気がある。
大気の成分は、酸素、ナトリウム、ヘリウム、カリウム、水素、カルシウムの6つが確認されている。
水星は太陽重力の影響が大きく、探査衛星を投入するのが難しい。
さらに水星表面の温度は90~700Kの広い範囲で変動するため、それに耐えうる探査衛星でないといけない。
そのため、マリナー10号以降は探査機の例がない。
2004年に打ち上げられたNASAのメッセンジャーは、2011年に水星の周回軌道に投入される予定だ。
2008年に最初のフライバイを行い、各種の観測をする。
また、2013年には日欧の協力でベッピ・コロンボを打ち上げる予定である。
(2016年10月27日に追記)