(『惑星地質学』東京大学出版会から抜粋)
ハイペリオンは、タイタンのすぐ外側の軌道をもつが、奇妙な衛星である。
まず、平均半径は135kmとかなり大きいのに、形が著しくいびつだ。
(大きい星は普通は丸くなる)
さらにスポンジの様にぶつぶつと無数の穴が開いた姿をしている。
そして「直径に匹敵するサイズのクレーター」がある。
この天体は平均密度が低く、多孔質の物質からできている事を示している。
特大サイズのクレーターが存在するのは、多孔質のため隕石衝突の衝撃がやわらぐためらしい。
(普通だと星全体が砕けてしまう)
ハイペリオンは色も奇妙で、やや赤みを帯びている。
これは炭化水素系の物質が含まれているためと考えられ、実際に探査機カッシーニの分光観測でCO2や有機物が確認されている。
この星の奇妙さは、自転軸の向きや自転周期が時と共にカオス的に変動する事も挙げられる。
これは常に土星へ同じ面を向けている他の衛星とは対照的だ。
その原因は、土星から遠い軌道や、形のいびつさが考えられる。
フィービー(フェーベ)は、土星を550日もかけて1周する。
土星から遠方にある平均半径が105kmのいびつな形をした小衛星である。
軌道は大きく傾いており、公転方向が土星の自転と逆方向のため、「太陽の周りを回っていたものが土星に捕獲された」と考えられている。
カッシーニ探査機はフィービーの詳しい観測をしたが、太陽系外縁の天体に似た特徴をもつと分かった。
光の反射率は0.1以下で大変に暗く、反射スペクトルから表面の組成は炭素系コンドライトに似ていると分かった。
内部には氷が豊富にあるようだ。平均密度は氷よりも大きい。
似た大きさのハイペリオンとなぜこれほど平均密度や姿が違うのかは、まだ分かっていない。
エピメテウスとジェイナス(ヤヌス)は、共有軌道運動をしている典型的な天体である。
両衛星の軌道半径は、わずか50km程度しか違わない。
この間隔は、両衛星の平均半径よりも小さい。
両衛星は4年に1度接近し、内側の軌道にあったものがもう一方の重力で加速して外側に出る。
その反作用で外側にあったものは減速して軌道半径が縮み、内側に入る。
うまくすれ違って軌道が入れ替わるのだ。
2つの衛星は、共にいびつな形をしている。
(2017年2月6日に作成)