宇宙の膨張とダークエネルギー

(以下は『Newton 2021年8月号』から抜粋)

宇宙が膨張している証拠は、「地球から遠い銀河ほど、速く遠ざかっているように見えること」だ。

これは1910年代に発見された。

遠ざかる銀河の光は、光の波長が長くなる(赤くなる)ことが知られている。(赤方偏移)

1920年代に、アルバート・アインシュタインの一般相対性理論を使うことで、宇宙が膨張または収縮しうると分かった。

これにより、宇宙は膨張しているとの見方が広まった。

宇宙は、今は膨張が加速している。

遠くの銀河や赤方偏移を調べることで、1998年に明らかになった。

約70億年前から膨張が加速して、永久に加速し続けると考えられている。(※その見方をする研究者が多いということ)

Ia型超新星の観測から、宇宙の加速膨張を発見した、ソール・パールムッター、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3人は、2011年にノーベル物理学賞をもらった。

(以下は『理科年表オフィシャルサイト』平成25年のトピックスから抜粋)

2011年のノーベル物理学賞は、サウル・パールムッター、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3氏に贈られた。

宇宙が膨張していることを発見したのはエドウィン・ハッブルだが、宇宙では物質がお互いに重力で引き合うので、膨張の速度は減速していくと考えられていた。

ところが3氏の研究で、膨張が加速していると分かったのである。

地球から遠ざかる銀河の速度は、光の波長で観測できる。

遠ざかっている天体からの光は、光の波長が長くて赤いほうにズレて観測されるが、そのズレは速度によって決まる。

3氏へのノーベル物理学賞は、1990年代の後半に行われた観測・研究に与えられたものである。

その観測では、「Ia型超新星」が使われた。

「Ia型超新星」は、白色矮星に連星系を成すもう1つの星から物質が流れ込むことで、核反応が暴走してとても明るく見える。

そしてピーク時の明るさが一定のため、地球からの距離の測定に使いやすい。

3氏は、70億光年はなれたIa型超新星まで観測した。
とても離れた(つまり昔の)星まで観測できたので、宇宙の膨張速度が分かったのである。

そして、宇宙の膨張が一定の速度で起きている場合に予想されるよりも、その光は暗かった。

これにより、膨張が加速していると明らかになった。

宇宙の膨張の加速は、宇宙にあるダーク・エネルギー(地球人の知らないエネルギー)が、物質の重力よりも強いことを示している。

この未知のエネルギーは、観測データの解析により、宇宙のエネルギーの73%を占めると考えられている。

(以下は再び『Newton 2021年8月号』から抜粋)

宇宙について、『私たちが知っている天体などの物質は、全成分の5%にすぎない』と分かってきた。

成分の26%を占めているのは、謎の物質である『ダーク・マター』である。
これは各銀河を覆うように分布していると考えられている。

残りの69%は、宇宙の膨張を加速させている謎のエネルギー、『ダーク・エネルギー』である。

銀河団の中を動く銀河の速度から、銀河団の全体の質量を計算できる。

その質量は、私たちが理解しているものの総質量よりも、はるかに重い。

そこで私たちは、見えない(まだ知らない)質量を「ダーク・マター」と呼ぶようになった。

私たちが知っている物質とダーク・マターを合わせても、宇宙の膨張速度を説明できない。

もし宇宙が、私たちの知っている物質とダーク・マターだけだとすると、宇宙の年齢は100億歳だが、これは観測した最古の天体(130億歳)と矛盾する。

そういうわけで、未知のエネルギー(ダーク・エネルギー)が宇宙に満ちていると考えるようになった。

宇宙がこれからどうなるかは、ダーク・エネルギーの状態によって変わる。

ダーク・エネルギーの密度が不変ならば、宇宙はこのまま膨張を加速し続ける。

ダーク・エネルギーが時間と共に増えるならば、膨張の加速は極端に速まり、最後にはあらゆる物質が素粒子レベルまでバラバラになる。

ダーク・エネルギーが時間と共に減るならば、宇宙はやがて収縮に転じて、どんどん小さくなっていく。

「宇宙は何度も膨張と収縮をくり返してきた、何度も誕生と終わりをくり返してきた」との説がある。

これは『サイクリック宇宙論』という。

宇宙の年齢は、138億歳と考えられている。

「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)」という、マイクロ波を観測すると、宇宙にある物質(私たちの知っている物質)、ダーク・マター、ダーク・エネルギーの比率が分かる。

この比率と宇宙理論モデルを組み合わせたところ、138億歳との計算になった。

CMBの波長は、熱を持つ物体が出す光(熱放射)の特徴と、完全に一致すると1990年代に分かった。

これは、宇宙が非常に熱かった時代には光で満ちていて、その波長が宇宙の膨張で伸びたと考えるしかない。

これが、宇宙の始めにビッグバンがあった証拠とされている。

宇宙の膨張率は「ハッブル定数」で表されるが、この値は観測手法によって違ってくる。

CMBの観測から得られるハッブル定数は約67だが、Ia型超新星を使った距離測定から得られるハッブル定数は約73である。

この原因の究明が続けられている。

宇宙の彼方まで銀河が存在するのならば、宇宙のどの方向を見ても銀河の(星の)光で埋め尽くされるはずである。

しかし見るとほぼ暗い。

この問題は「オルバースのパラドックス」と呼ばれ、昔から考えられてきた。

現在では、宇宙の膨張で遠くの天体からの光が赤方偏移で暗くなることや、観測できる範囲が限られていて有限個の天体しか見えないことが、理由と考えられている。

光の速さは、秒速で約30万kmである。

つまり光が伝わるのには、一定の時間がかかる。

富士山を1km離れた場所から眺めるとき、30万分の1秒だけ過去の富士山を見ている。

これと同じで、地球から1光年離れた天体を見るとき、その天体は1年前の姿なのである。

(2022年8月4日に作成)


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