はやぶさ2の小惑星探査、元素組成の分析

(以下は『しんぶん赤旗日曜版 2023年6月4日号』から抜粋)

はやぶさは、日本のJAXAが持つ小惑星の探査機だ。

初代はやぶさは、小惑星イトカワを探査した。

はやぶさ2は、2014年に打ち上げ、18年に小惑星リュウグウに到達し、19年に5.4グラムの石粒の採取に成功した。

20年12月に岩石を入れたカプセルを地球に届け、今は別の小惑星に向かっている。

リュウグウから採取した岩石は、日本を中心に14ヵ国、109の大学と研究機関が分析を担当した。

🔵梅垣いづみ 高エネルギー加速器研究機構・助教の話

「2021年6月に、はやぶさ2が採取したもののうち、10個の石粒が私のチームに届きました。

石粒は、大きいものでも0.0935グラムで、ミューオン分析をしました。

分析の目的は、元素組成を調べることでしたが、太陽系誕生の直後の元素組成を示していると考えられている「CIコンドライト」という隕石とそっくりでした。

素粒子のミューオンは、原子の中に入っていける透過力があり、マイナスのミューオン を石粒に照射すると、電子の代わりに原子核の周りを回ります。

そしてマイナスのミューオンは、電子よりも質量が200倍もあるので、原子核に近づいていき、内側の軌道に移る時にその元素特有のX線を放出します。

このX線を調べれば、どの元素なのかが分かるのです。
(※つまり元素を特定するのがミューオン分析)

ミューオンを使えば、物質を壊さずに元素組成を分析できますが、エネルギーの高いミューオンが必要です。

J-PARC(大強度陽子加速器の施設)ができたことで、大強度のミューオンが使えるようになりました。

私は大卒後、中性子の実験ができる研究所に就職したのですが、担当したのは素粒子のミューオンでした。

リチウム電池の電極をミューオンで調べる仕事を始め、そこからミューオン研究に入りました。」

J-PARCは茨城県にある。
ミューオンを使った元素分析の装置は、内部をヘリウムガスで満たすことで地球大気を遮断できる。

また装置を銅で覆うことで、微弱なシグナルを検出できる。

(2025年11月30日に作成)


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