チャーリー・パーカーの「ナウズ・ザ・タイム」②

ここからは、残りの3曲を解説していきます。

まず、11曲目の「I remember you」です。

この曲はメロディとコード進行が美しく、パーカーのスタンダード曲の録音の中でも、私が最も好きなものの一つです。
何度聴いても飽きないし、いつも感動します。

全体的にブルーなムードで、たぶん一発勝負で普段は演奏しないこの曲を録音したのでしょう、いつものパーカーよりも強引なアドリブ・フレーズが目立ちます。

特にサビに入った所では、明らかにコードチェンジに失敗しています。(すぐに修正して立ち直るあたりは流石です)

さらにこの曲では、非常に珍しいことに、「1コーラス半という中途半端な長さ」のソロを取って、アル・ヘイグのピアノにソロを渡しています。

(これ以外にパーカーの録音で、コーラスの途中でソロを渡すのは、ウィズ・ストリングスもの位しかありません)

ここまで読むと、大抵の方は「何だ? いい演奏なのか?」と思うでしょう。

でも、『いつものパーカーと違ってアドリブの構成力に欠けている事が、逆にライブ感やその場の閃き感を醸していて、かっこいい』のです。

強引な展開で音を外しそうになりながら、最終的にはきっちりとコードチェンジをしてくる、スリリングなアドリブを聴いていると、
「う~ん、この刹那的な中に知性を含ませるソロ…、グレイト!!」と感服します。

アル・ヘイグのアドリブ・ソロも素晴らしくて、このアルバムの中では彼の一番すてきなソロだと思います。
落ち着いて、淡々とソロをするのですが、音色とニュアンスが優しく美しいです。

その後ヘイグは、ベースのソロに入るとコードを押さえてサポートをするのですが、そのサポートが最高なんです!

リズム、フレーズ共に最高で、一分のスキもないです。
本当に美しく、「アル・ヘイグ、愛しているよ」となります。

ベースのパーシー・ヒースは頑張ってソロをしていますが、ヘイグのバッキングが美しすぎて全然耳に入らないです。

ベースソロの後にはドラムソロになるのですが、マックス・ローチはスネアのロールを基本にして、素晴らしいソロを構築しています。

あまりに素晴らしいので、『巻き戻して何回も聴いたり』しますが、何度聴いてもしびれます。

ドラム・ロールに関しては、マックス・ローチは人類史上で最高だったかもしれません。

ここまでロールを、滑らかに繊細に上品に軽快に歌わせられる人は、他には知りません。

次は、12曲目の「Now's the time」です。

この曲は、パーカーの自作したブルースで、ジャズでは定番のブルース曲となっています。

彼は初リーダー録音(1945年に行われ、チャーリー・パーカー・ストーリーというタイトルで発売)でこの曲を披露し、それ以来ライブで幾度となく演奏してきました。

45年のヴァージョンよりも大幅にテンポを上げ、リズムをトリッキーにして、全く異なる内容に仕上げているのが、まず興味深いです。

ここでのパーカーのソロを聴いていると、サーカスのアクロバティックな動きが、頭の中に浮かびますね。
音の跳躍が多いので、そういう印象を持つのでしょう。

パーカーは、空を飛ぶように華麗に自由な演奏をすることから「バード」というニックネームを得ていましたが、正に空を飛ぶような演奏です。

パーカーの後に続くヘイグも、パーカーの流れを引き継いで、面白いリズムのフレーズを弾くので、注目してみて下さい。

最後の曲は、「Confirmation」です。

この曲は、パーカーの作曲の中でも、最も有名な曲の一つです。

すばらしいメロディ、リズム、コード進行をしているので、ジャズ界では定番の曲になり、実に沢山の方が録音をしていますが、パーカーの足元にもおよんでいません。

この曲は、『テーマのメロディ』が激ムズで、演奏した事のある人ならよく知っていると思います。
ちなみに、プロのミュージシャンでもしょっちゅうミスってます。

その難しいテーマを、パーカーは楽々とこなし、超スウィングさせています。その超絶テクが、まず聴き所です。

私はテーマを聴くだけで、「うん。パーカー、あなたは天才だ。」と納得してしまいますね。

細かい話をすると、パーカーは単にテーマのメロディを吹くのではなく、しょっちゅうプラルトリラーをさせて、装飾を付けています。そこが、よりスウィンギーになっている理由です。

(プラルトリラーって言葉、あまり聞かないですよね。
 ギターだとハンマリングオン&プリングオフを素早くするテクニックの事です)

この曲のテーマは、『アクセントがウラ拍に付くことが多い』のが、特徴です。

(パーカーの曲は、これが大きな特徴です。ウラ拍を強調するとジャッジーになります)

ドラムのマックス・ローチは、パーカーの吹くテーマに合わせて、ウラ拍でのアクセントを完璧に付けていきます。

さらりとこなしているので、聴き逃している人も多いかと思いますが、これも超絶のテクですね。

普通のドラマーがこの様にウラ拍でのアクセントを多用すると、リズムが乱れます。
マックスは、涼しい顔で見事にこなしています。名人芸ですよ。

パーカーの代表曲だけあって、パーカーはアドリブに入ると、「安定感を維持しつつ斬新な展開を見せる」、極めて高いレベルのソロに仕上げています。

下降するフレーズを多用しつつ、目まぐるしく低音から高音まで行ったり来たりします。
躍動感がはんぱじゃないです。

もちろん、音は1つも外していません。
攻撃的なフレーズばかり出てきますが、それがきちんと次に繋がっていくのですから、凄いですよ。

ここでのパーカーは、一つのスキも無い、完璧な演奏をしています。
テーマの所も、アドリブ・ソロの所も、光輝くほどのクオリティです。

格調高いというか、神秘的な響きがあるというか、真実の響きがあるというか…。
聴いていると敬虔な気持ちになる演奏ですね。

私はここでのパーカーのソロが大好きなので、ギターでもコピーしたし、最初から最後まで一緒に歌えます。
というか、自然に歌ってしまいます。

足でリズムを取りながら、パーカーのソロを一緒に歌うと、ストレスが溜まっていても元気を取り戻せます。
私にとっては、癒しの演奏ですねー。

この曲は、ピアノのイントロもすごく好きです。

短いイントロですが、コード進行がⅠM7→Ⅳm7と動くのが、すごく泣かせるのです。

(このあたりは、「チャーリー・パーカー研究」というページを作って、
 詳しく解説する予定です)

ピアノのイントロに絡むハイハットもクールだし、ベースが途中から「ドン、ドン、ドー」と入るのも、「さあ、これから演奏が始まるぞ!」という感じで、お気に入りです。

ヘイグはイントロが上手いですね。他の曲でも、短いのに印象的なイントロをしています。

この曲のパーシー・ヒースのベースソロは、短いソロですが、このアルバムの中ではベストだと思います。

パーシーって地味だけど、音色がいいし、リズムも柔らかくて正確で、大好きなベース奏者ですねー。

ベースソロの間は、ドラムは閉じたハイハットを静かに叩いて、リズムキープをしています。

そして、ドラムソロに入る直前に、ハイハットを開けて音質を変えます。
ハイハットを開ける事で「この後に、ドラムが盛り上がるぞ」とのメッセージを聴き手に与え、聴き手にドラムソロへの心の準備をさせるのです。

この粋な演出はマックス・ローチならではで、「やるな、マックス。すてきじゃないか。」と聴くたびに思います。

以上で、このアルバムの解説は終了です。

これで、この偉大な『人類史上でも屈指のアドリブを聴けるアルバム』を、少しは理解し易くする事が出来たでしょうか?

音楽を愛する人、志す人にとっては、『聖なるアルバム・目指すべき頂上の一つ』なので、ぜひ愛聴してほしいです。

このアルバムが楽しめるようになったら、真正のビバッパーですよ!

(2012年10月2日作成)


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