この35年間は、権力が国民から大企業に移ってきた

(『チョムスキー、世界を語る』から抜粋)

チョムスキー

現在の世界では、経済大国にそれぞれの権力の中心が存在しており、それらは巨大なネットワークで繋がっています。

G3やG8、多国籍企業、国際的な機関は、共通の利害によって結びついています。

経済の大部分は、寡占状態にあります。

つまり、少数の専制的な組織体が、国家を支配しつつ、国家に依存しています。

世界貿易機関(WTO)は、民主主義を攻撃する兵器ですよ。

なにしろ、大企業にもっと大きな権力を持たせるのが目的なのですから。

質問者

あなたは、「大企業と国家の結びつきがどんどん進行している」と、くり返し指摘していますね。

チョムスキー

それは、この25年間に現れた大きな変化です。
(※これは1999年に行われた会話です)

権力を、公共企業から民間企業に移す政策決定がなされてきました。

実業界は、政府の道具でありつつ、一方では政府を操ってきました。

現実的に見れば、多国籍企業は国家に頼っています。

フォーチュン誌が行った調査によると、多国籍企業のトップ100社の全てが、国の支援・介入を受け入れています。

そして20社以上が、資金援助をうけたり、債務を肩代わりしてもらっているのです。

大企業というものは、全体主義的で、組織が個人よりも上位に立ちます。

ボルシェビキ(ロシア共産党)による共産主義体制やファシズムは、これと同じ原理なのです。

これらはいずれも、個人の不可侵の権利を認めた、古典的リベラリズムとは根本的に対立します。

この20年間は、国家の政策は民主主義を犠牲にして、多国籍企業の権力を強化することに努めてきました。

これが、いわゆる「ネオ・リベラリズム」と呼ばれる、『国民から民間企業への権力の移動』です。

多国籍企業は、ほとんど国民に対して責任を負っていません。

(2014.5.22.)


『民主主義vs国家・多国籍企業・プロパガンダ』 の目次に戻る

『世界情勢の勉強』 トップページに戻る

『サイトのトップページ』に行く