アメリカの誤った政策G イスラエルとの醜い同盟

(ノーム・チョムスキー リトル・モア刊行から抜粋)

質問者  あなたは、「アメリカが中東和平を妨害している」と言います。

     アメリカは、なぜ和平を妨害するのですか?

チョムスキー    

    イスラエルが、アメリカの軍事基地だからです。

    イスラエルは、トルコと同様に、アメリカのために中東を軍事支配しています。

    もしイスラエルがアメリカの軍事基地である事を辞めたら、アメリカはあっさり関係を切る
    でしょう。

質問者  すると、クリントン大統領がやった中東和平の活動は、見せかけだったのですか?

チョムスキー     

    クリントン・プランの地図を見た事がありますか。

    クリントンの計画は、ヨルダン川西岸を4つに分割するものでした。

    また、ガザ地区もいくつかに分割される事になっていました。

    これでは、バンタスタン(黒人自治区)を設置していた時代の南アフリカよりも劣ります。

    だからメディアは、地図をいっさい公表しませんでした。

質問者  イスラエルは、具体的にはどのような利益をアメリカに提供しているのですか。

チョムスキー    

    すでに1958年には、アメリカの情報局は「イスラエルをアメリカの基地として支持すれば、
    アラブ独自の国家主義に対抗できる」と考えていました。

    1967年の第3次中東戦争で、イスラエルはアメリカに大きく奉仕しました。

    エジプトのナセル政権を打倒して、アラブ地域の国家主義に打撃を与えたのです。

    (当時のナセルは、中東のイスラム諸国のリーダー的存在でした)

    ナセル政権は、非宗教的な国家主義運動(これをナセル主義という)の中心であり、
    サウジアラビアの王族支配にとって深刻な脅威でした。

    (サウジは石油大国で、アメリカの同盟国で、王族が独裁制を敷いています)

    第3次中東戦争を経て、イスラエルとアメリカの同盟が確立され、イスラエルはアメリカの
    リベラルな知識人のお気に入りとなったのです。

    1970年のブラック・セプテンバー(ヨルダン政府による、ヨルダン国内にいるパレスチナ人の
    虐殺事件)の時期に、シリアはパレスチナ人を保護する動き(ヨルダンへの介入の動き)を
    見せました。

    アメリカはこれを気に入りませんでしたが、ベトナム戦争で手一杯で、軍隊を中東に送れません。

    そこで、イスラエルに「シリアの動きを封じてくれ」と頼みました。

    イスラエルはそれを実行し、シリアは後退して、パレスチナ人は虐殺されました。

    そしてイスラエルへのアメリカの援助額は4倍になり、それが70年代を通じて続きました。

    1979年に、中東において親米派の柱だったイランで、イスラム革命が起きます。

    その結果イランが親米でなくなると、イスラエルの役割はより重要になりました。

    今では、アメリカの軍事経済とイスラエルはあまりにも密接になり、どちらの国だか見分けが
    つかないほどです。

    覚えておいて下さい。

    イスラエルの持つ兵器は、アメリカからイスラエルに送られたものです。

    もしイスラエルがアメリカの望む範囲を1ミリでも越えたら、ワシントンから「そこまで」と
    声が掛かります。

    2002年3月にも、その情景が見られました。

    近づくイラク戦争への支持を求めて、ディック・チェイニー副大統領は中東諸国を歴訪しました
    が、ワシントンからイスラエルに「パレスチナの町から戦車と兵士を撤退させなさい。
    そうすればチェイニーの任務の能率が上がります。」と指示があり、イスラエルはたちまち
    撤退しました。

    ドンが命令を出し、下の者は従ったのです。

    イスラエルやトルコが非道を行う時は、ドンであるアメリカの許可の下で行われています。

    暴力行為を減らす方法の1つに、国際監視団を送り込むことがあります。

    しかし、2001年12月15日に息子ブッシュ政権は、安保理に提出された「パレスチナに
    国際監視団を送る」という決議に、拒否権を使いました。

    ジュネーブ条約の第4条は、軍の占領下にある地域に適用されます。

    2000年10月に、パレスチナ人のインティファーダ(イスラエルの違法な入植に対する抵抗
    運動)が始まると、国連安保理では「イスラエルが占領している地域にジュネーブ条約が適用される
    か否か」が投票されました。

    結果は、賛成14、反対0、アメリカは棄権でした。

    ジュネーブ条約に従えば、占領地でアメリカとイスラエルが行っている事は、すべて違法と
    なります。

    占領地への入植、駐留軍、いずれも違法です。

    2001年5月にスイスで再び、イスラエルによるパレスチナ入植について会議が開かれます。

    会議は、ボイコットしたアメリカ・イスラエル・オーストラリアを除く114ヵ国で行われ、
    「イスラエルの行動にジュネーブ条約を適用し、占領地への入植は違法とする」との決議が
    承認されました。

    この事実は、アメリカではいっさい報道されませんでした。

    イスラエルによるパレスチナ占領は、極めて冷酷な占領です。

    なぜなら、パレスチナ人を追い出す事が、本当の目的なのですから。

    占領は、アメリカの支援によって営まれてきました。

    イスラエル人の入植地が増えるとしたら、それはアメリカの納税者がやったことです。

    アメリカは、パレスチナ人への残虐行為はどうでもいいのです。

    残虐行為というのは、パレスチナ人がイスラエルに何かをした時の事です。

    (イスラエルでテロがあり数人が死ぬと、イスラエルは報復と称してパレスチナに空爆をし、
     千人を殺したりします。
     どう見てもイスラエルの方が、残虐な行為(虐殺)をしていますよ。)

    2002年5月に、サウジアラビアのアブドゥラ王子が訪米しました。

    彼はブッシュ政権がイスラエルの横暴を支援するのを、控えるように説得しました。

    ブッシュ政権は、こう返事をしました。

    「 我々が砂漠の嵐作戦(湾岸戦争)の間、イラクにやった事を見るがいい。

      我々は、当時よりも10倍も強くなっている。

      アフガニスタンでやった事は、お前たちに逆らえばどうなるかを見せるためにやったのだ。

      我々の言う通りにしないと、お前たちは粉砕されるだけだ。

      お前たちがどう思い、何を言うかなど、我々には関係ない。 」

    これが、彼らの考えです。

(2015.7.16.)


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