(『CIA秘録』ティム・ワイナー著から抜粋)
アレン・ダレスは、CIA長官に就任すると、すぐにCIAのイメージ向上(プロパガンダ)に取り組んだ。
彼は報道機関の協力を求め、協力した会社はCBS、NBC、ABC、AP、UPI、ロイター、などが含まれていた。
カール・バーンスタインは、こう指摘する。
「第二次大戦を取材したジャーナリスト達は、CIAの前身である
OSSの人達と親しかった。
戦争が終わってCIAになってからも、この関係はそのまま続いた。
戦後世代のジャーナリストも、先輩と同じ価値観を共有していた。」
ダレスは、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストの幹部と密接な関係を維持し、電話1本でニュースの内容に口をはさめた。
気に食わない海外特派員を現場から外させたり、メディアの海外支局長をCIAに協力させる事もできた。
アメリカのニュース編集室は、戦時中の政府宣伝機関だった『戦時情報局』の出身者が幅を利かせていた。
アレン・ダレスは、プロパガンダのためのネットワークを作り上げた。
新聞は、ダレスを有能なボスとして描き、CIAをプロ集団として描いた。
だがCIAの資料は、全く反対の事実を明らかにしている。
CIA幹部の毎日定例の会議の記録を見ると、CIAの抱える問題は組織内部のことばかりである。
アルコール依存症、金銭の絡む不法行為、大量辞職。
CIA監察総監のカークパトリックは、こう警告している。
「CIAに敵意を抱いて組織を去っていく者の比率が、非常に高い」
朝鮮戦争の終結後、CIA本部の士気があまりに低いので、職員の意識調査が行われた。
若手職員の総意は、「CIAは上から下まで、凡庸かそれ以下の人間ばかり」だった。
ダレス長官は、この調査を公表しなかった。
だから何も変わらなかった。
(2015年1月29日に作成)