モローは、マフィアのボスであるルケーゼ、
CIA幹部のバーンズに会う

(『ケネディ暗殺』ロバート・モロー著から抜粋)

1960年3月17日に、アイゼンハワー大統領はNSCの緊急要請を受けて、『カストロ政府に対する秘密工作をCIAに実行させるための委員会』の設置を認めた。

(この委員会は、5412委員会として知られるようになる)

発足した委員会は、次の4つの工作を採用した。

① アメリカに、キューバ人の亡命政府をつくる

② プロパガンダ工作による、カストロ政権への攻撃をする

③ キューバ国内に秘密の諜報組織をつくる

④ ゲリラ活動のために、キューバ国外に準軍事勢力をつくる

①と③は、すでに(亡命キューバ人の)マリオ・ガルシア・コーリーが完成させていた。

CIAは残る2つを実行するために、プロパガンダ工作はデビッド・アトリー・フィリップスに任せ、準軍事部隊の編成はトレーシー・バーンズとE・ハワード・ハントに任せた。

1960年3月末に、マーシャル・ディッグズから私に連絡があった。

そして、『トラックに積まれたエレクトロニクス機器(無線用)を、マイアミからフロリダ西海岸まで運ぶ任務』を指示された。

フロリダの目的地は、ウーセプ島だった。
そこには訓練施設があったのだ。

3日かけて運んだ。

60年6月になると、私はディッグズから妙な電話を受けた。

「自宅に来てほしいのだが、コーリーにはその事を伏せておいてくれ」と言うのだ。

彼の家に入ると、見た事のない男が椅子に座っていた。

しばらくして、男の右手の親指と人差し指が無い事に気付いた。

この人物は、実はニューヨーク・マフィアのボスの1人であるトーマス・ルケーゼだったが、この時は知る由もなかった。

ディッグズは彼を「ブラウン氏」と紹介し、「コーリーの友人の1人で、アメリカ政府とも緊密な関わりがある」と説明した。

そして、「ブラウン氏はコーリーの行動について、君から聞きたがっている」と云う。

私は、『亡命キューバ人の作戦本部に通信機器を整備したこと』『カストロ政権を混乱させるために電波妨害装置を作ったこと』などを話した。

ブラウン氏ことルケーゼは、コーリーに融資しているスポンサーの1人だと、ディッグズは教えてくれた。

ルケーゼを交えた会合の2日後、再びディッグズから連絡があり、彼のオフィスに行った。

入ると2人の先客がおり、1人はルケーゼだった。

もう1人は、トレーシー・バーンズという人物で、CIAの極秘工作の責任者であるリチャード・ビッセルの右腕だ。

バーンズに初めて会ったが、私に好感を持ったようだ。

彼の態度から察して、亡命キューバ人たちと私の関わりを熟知しているのは明らかだった。

バーンズは私に対して、「コーリーのための特別プロジェクトに関わる気はあるか?」と尋ねた。

私は、「共産主義の脅威を駆逐する一助になることなら、喜んでやらせてもらう」と答えた。

バーンズは満足した様子だった。

私は、バーンズの要請を引き受けたが、『CIAとマフィアが結びついていること』に困惑を覚えた。

私がこの関係を容認できたのは、「アメリカ政府は共産主義と戦わなければならない」と考えていたからだ。

共産主義に勝利するには、悪と結託するのも仕方ないということだ。

(2016年1月3日に作成)


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