(『大がかりな嘘』マーク・レーン著から抜粋)
裁判における証拠開示のうち、証言録取の手続きは1938~70年にかけて確立した。
連邦民事訴訟法の中では、最も重要な刷新かもしれない。
証言録取は、裁判に先立って証人に質問に答えてもらうものだ。
地理的な規制はなく、法廷に出たくない金持ちの依頼人は決まって証言録取を好む。
証言録取では、証人を特定の場所に出頭するよう求めることができる。
さらに証人の住む場所に、録取側が出向くこともできる。
どちらにしても旅費等で金がかかる。さらに立ち合う弁護士の手数料も高い。
このため企業が訴えられた場合、お金のない原告に訴訟を諦めさせる手段として証言録取を行うことがある。
証人への質問は、呼び出した側(原告か被告のどちらか)が質問(主尋問)をした後に、もう一方の側も質問(反対尋問)をすることができる。
(※例えば原告の証人の場合、原告側が主尋問した後に、被告側が反対尋問できる)
証人となる者は、真実を証言すると宣誓しなければならず、真実を言わなければ偽証罪で起訴される可能性がある。
弁護士による主尋問は、リハーサルすれば簡単なものである。
理論上は、オウムでもよく訓練すれば立派な証人となり得る。
反対尋問は全く別である。
思わぬ展開になり、それまで見えなかった風景が見えるようになったり、全体像がはっきりする事もある。
証言録取は、法廷での証言と多くの面で異なる。
最も大きな違いは、許される質問の範囲と、答えることを証人が拒否した場合にどうなるかである。
法廷では、関連性のない質問はすべて排除される。
だが証言録取では、幅広く質問できる。
そして証人が答えるのを拒否しても、危険性は少ない。
法廷で証言を拒否したら、ただちに判事から「質問に答えなさい」と命じられるか「拒否する正当な理由があるので答えなくていい」と言われる。
証言録取で拒否した場合、相手は後から判事に異議申し立てが可能だが、手続きが煩雑で時間がかかるのでめったに行われないのだ。
証言録取が導入された時は、より事実が明らかになり、和解が成立して裁判が減ることが期待されていた。
だが弁護士事務所はこの制度を悪用し、訴訟にさらに金がかかるようになってしまった。
金のない人々は締め出されるようになった。
(2018年11月28日に作成)