(『大がかりな嘘』マーク・レーン著から抜粋)
ウォルター・クズマクはCIA職員で、E・ハワード・ハントの親しい同僚だった。
そして「ケネディ暗殺の日にワシントンでハントを見かけた」と証言し、ハントのアリバイ作りに協力していた。
クズマクは、CIAが仕立てた証人なのだろうか。
ハントは最初の証言の時は、クズマクに言及していない。
クズマクがその日に会ったことを思い出させるため手紙をハントに送って、初めてハントは思い出したのである。
私はこの経緯を考え、「クズマクはケネディ暗殺の時にワシントンでハントを見ていない」と結論した。
そもそもクズマクは、ハントの隣人であり、ほぼ毎朝一緒に車で職場に向かっていた。
帰宅も一緒なことが多く、夜の交遊もしょっちゅうだった。
にも関わらず、クズマクはケネディ暗殺の時期に職場でも自宅でもハントと会わなかったと証言している。
クズマクの目撃証言は、「通りでハントが車に乗っているのを見かけた」というものにすぎない。
これは、後で見間違えだったと訂正できる仕掛けに見える。
私は、クズマクの証言録取を行うことにした。
彼に質問していくと、彼は「11月22日(ケネディ暗殺の日)はハントといっしょに車で出勤しなかった」と認めた。
そして、ハントが車に乗っているのを目撃した時を除いては、11月18日から12月になるまでハントを1度も見ていない事を認めた。
さらにハントが乗っていた車について、何度も同乗したことがあるはずなのに、どんな車だったか説明できなかった。
質問の最後に、クズマクが偽証罪を犯す意思があるかを尋ねてみた。
Q
CIAで働いていた時、CIAのために嘘をついたり隠蔽した事がありますか。
A
これはIG(監察総監)が答えるべきと思いますが。
Q
いえ、あなたに質問しているのですよ。
CIAで働いていた間に、CIAのために真実ではない発言をした事がありますか。
A
私には答えられません。
私が証言録取を終えると、立ち合っていたハントの弁護士ウィリアム・スナイダーは、「クズマクを証人から取り下げる」と言った。
こうしてハントのアリバイを証明できる人物が1人減ったのである。
(2018年12月5日に作成)