ハント対リバティ・ロビー裁判⑯
ニュートン・スコット・マイラーの証言①

(『大がかりな嘘』マーク・レーン著から抜粋)

マリータ・ロレンツの証言録取の読み上げが終わると、ハントの弁護士は反駁証人としてニュートン・スコット・マイラーの召喚を法廷に要請した。

マイラーはCIAの創設時から就職し、長いことジェームズ・アングルトンの率いる防諜部で3番目に偉い、防諜部長を務めた人物だ。

裁判では、被告側の反証が終わると、次に原告側が反証に対する反駁を行う。

しかし反駁は、必ずしも認められるとは限らない。

提出される証拠は、原告側が予想できなかった可能性のある証拠に対して反駁するものでなければならない。

しかしマリータ・ロレンツの証言は、原告にとって意外なものだったと主張はできない。

なぜならハントの弁護士は証言録取に同席していたし、録取をしたのは裁判の前だった。

私が思うに、ハントの弁護士たちはロレンツの証言録取を排除するよう申し立てていたが、それが認められると期待していたのだろう。

だがキホー判事は申し立てを却下し、ロレンツの証言は法廷で公開されることになった。

もし私が望めば、マイラーの反駁証言を聞かずに審理を終わらせられた。

キホー判事は、「被告側がマイラーの召喚に反対する権利を放棄しない限り、マイラーの証言は認められない」とはっきり述べた。

私は出来るだけ多くの真実が明らかになる事を望んでいたので、マイラーの召喚に反対する権利を放棄することにした。

そして「今晩に証言録取を行うなら私も立ち会う」と伝えた。

こうすれば証言録取を(明日に)陪審員に読んで聞かせることもできる。

私はこの日の審理が終わると、依頼人であるウィリス・カートに電話をかけ、マイラーの件を説明した。

彼は「それは正しい決断だったよ、全ての真実を明るみに出そうや」と言ってくれた。

その晩のマイラーの証言録取は、ハント側はケヴィン・ダン弁護士が参加した。

まずダンの主尋問が始まったが、彼はマイラーがCIAの古参の高官だった事を立証しようと、質問を浴びせた。

マイラーはこう証言した。

「私はレイ・ロッカの下で働きましたが、ロッカはCIA防諜部の
 責任者だったジェームズ・アングルトンの直属でした。

 私は防諜部長を務め、30年近くCIAのために尽くしました。」

次にダンは、マリータ・ロレンツがCIAに雇われていなかった事を立証しようとした。

Q マリータ・ロレンツはCIAに雇われてていましたか。

A いいえ。私のCIA在職中にはありませんでした。

  彼女は、私の知る限りではCIAに雇われたことはないし、
  CIAの任務を遂行したことは承知していません。

Q CIAがキューバに対して行った作戦についても、知りませんか。

A はい、何も知りません。

Q フランク・スタージスは、CIAと関わりがあったのですか。

A 彼はハント氏と関わりのある活動に携わっていたそうです。

Q スタージスがCIAの職員だったことはありますか。

A いいえ、ありません。

マイラーは次々と関係否定の証言をしたが、彼はこれまでの色々な訴訟で膨大な証言が存在することを知らなかったのだろう。

スタージスは、CIAに雇われた事や、ロレンツとの関係も、議会などで証言している。

元CIA長官のリチャード・ヘルムズも、「スタージスはCIAの契約工作員だった」と証言している。

他の証言と食い違いが大きいので、マイラー証言はハントの弁護に役立たなかった。

私の反対尋問になると、始めにこう質問した。

Q マイラーさん。
  あなたはCIAで働いていた事を、いま証明できますか。

落ち着き払っていた証人が、ごく単純な質問でこれほどうろたえて怒り出した例を、私は他に見た事がない。

マイラーは顔を上気させ、ポケットというポケットに手を入れ懸命に何かを見つけようとした。

彼はCIAを退職したことを証明するカードという、名刺ほどの小さなものを差し出した。

そのカードには、連邦政府の職員だった事が記してあるだけで、日付もなく、彼の署名があるだけだった。
こんなカードなら、退職した郵便局の職員でも持っているだろう。

Q あなたがCIAに雇用されていた事を、証明するものを
  お持ちですか。

A このカード以外にはありません。

Q それでは、あなたがCIAで働いていたと、どうして我々に
  分かりますか。

A 私は本当のことを申し上げています。

Q マリータ・ロレンツも、CIAで働いていたと証言していますよ。
  フランク・スタージスも同様です。

  元CIA長官のリチャード・ヘルムズは、スタージスがCIAの
  工作員だったと証言しています。

  ヘルムズ氏があなたについても、そのようにはっきり言明した
  事がありますか。

A いいえ、ありません。

私は次に、マイラーがCIAと契約していた工作員をどこまで知っていたのか聞くことにした。

Q あなたはCIAに在職中、CIAと契約していた全ての工作員を
  知っていましたか。

A いいえ。

Q そうすると、あなたはロレンツがCIAに雇われていなかったと
  断言できないわけですね。

A その通りです。

Q スタージスがCIAに雇われていなかったとも、断言できない
  わけですね。

A はい、できません。

次に、マイラーが秘密を明らかにする許可が与えられているかどうかを、尋ねてみた。

Q もしロレンツとスタージスがCIAに雇われていたのを、
  あなたが知っていたとして、あなたはCIAと交わした秘密保持の
  誓約に照らして、勝手にその事をこの場で明らかにできますか。

A いえ、CIAと相談しなければならないと思います。

Q 今回ロレンツやスタージスの質問に答えるにあたって、
  事前にCIAに相談してきましたか。

A いいえ。

Q では、2人がCIAに雇われていたのをあなたが知っていたと
  しても、それを我々に言うことは出来ませんね。

A それに関しては、私の法的立場がどういうものか、
  定かではありません。

Q CIAと契約していた工作員で、あなたが知っている者を
  言ってみてくれませんか。

A 秘密保持の誓約があるので、答えられません。

(2019年1月20日に作成)


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