マフィアの変質と衰退

(『ゴッドファーザー伝説(ジョゼフ・ボナーノ一代記)』ビル・ボナーノ著から抜粋)

マフィアの強さは、一枚岩である事にあった。

アメリカのイタリア人コミュニティに足を踏み入れれば、今でも一枚岩らしさのいくばくかを見ることができる。

我々マフィアが力を失ったのは、カネよりも友情と家族を優先する価値観を、感じられなくなった時からだった。

マフィアの犯罪は伝統的に、政府が与えないものを与える企てだった。

我々は職を見つけてやり、カネを貸してやり、禁酒法の時代には酒を与え、賭博も提供した。

我々の大きな過ちは、冨と力を一緒くたにした事だ。

禁酒法の時代に冨を築き、人脈がホワイトハウスにまで広がると、「カネは力を得るための手段にすぎない」という理解が失われてしまった。

そうして、ひたすらカネを求めるようになってしまった。

最近のマフィアを見ると、惨めな状況なのが分かる。

ジョン・ゴディというニューヨーク・マフィアのボスを考えてみよう。

最側近のサミー・グラヴァーノの証言により、ゴディは刑務所行きとなった。

(ピーター・マーズのベストセラー『アンダー・ボス』は、その辺りを書いている)

ゴディは有罪となった理由は、1983年のポール・カステラーノ殺しの黒幕だったというものだ。
(※ポール・カステラーノは、ゴディのボスであった。彼はボスを殺して、その座を奪った)

最近になって、ゴディが刑務所内で叩きのめされたというニュースが大きく報じられた。

配信されたゴディの写真は、顔が腫れていて髪も乱れていた。

だが、そんな事実は無かったのである。

なぜ分かるかというと、私の友人でゴディの弁護士をしているアル・クリーガーが、「あれは不鮮明な写真を使ったでっち上げで、本当のことではない」と教えてくれたからだ、

ジョン・ゴディは、タフで荒っぽい行動をして数年でボスまで出世したが、強い支持を得ておらず、最終的に側近に裏切られた。

彼は自分のボスだったポール・カステラーノを排除したが、それが出来たのは、カステラーノはニューヨークの5大ファミリーの中で最も卓越したボスだったが、本当の支持を得ていなかったからである。

ポール・カステラーノは、1976年に死んだカルロ・ガンビーノに指名された後継者だった。

ガンビーノの母がカステラーノ家の出であり、カステラーノは元は肉処理と梱包を仕事にしていたが、マフィアになった人である。

昔のマフィアのボスは、目立たない努力をしていた。

だがボスになったジョン・ゴディは、全く違い、映画スターのように振舞い、世間に自分を誇示して見せ、そして破滅した。

ファミリーのボスが、何年も続けて7月4日(アメリカの独立記念日)にクイーンズのクラブでパーティを開き、花火を打ち上げ、メディアの者を群がらせるなど、私には信じられない行動だった。

彼が刑務所行きになったのは、派手な生活も理由だろう。

ジョン・ゴディのようなアメリカナイズされたボスと、伝統を重んじた旧世代のボスを比較する、簡単な方法がある。

それは、ボスとして寿命である。

ゴディらアメリカナイズされたボスたち、ラッキー・ルチアーノ、ヴィト・ジェノヴェーゼ、トミー・ルッケーゼらは、ボスの座にあったのは数年である。

一方、ジョー・プロファッチは30年以上もボスだったし、ヴィンチェント・マンガーノや私の父(ジョゼフ・ボナーノ)も同じくらいの期間ボスだった。

我々の伝統とは、生き延びることである。

(※この説には同意しづらい。
なぜなら、ルチアーノらも長期にわたりボスだったからである。

ただし、ルチアーノとジェノヴェーゼは獄中にいる期間が長かった。

とはいえジョゼフ・ボナーノも、逮捕されるのを恐れて逃亡生活を何年も送り、拠点のニューヨークから離れてしまった。

この本『ゴッドファーザー伝説』は、「自分たちボナーノ・ファミリーやプロファッチ・ファミリーは伝統を守る良識派で、アメリカナイズされたファミリーと違う」と強く主張している。

しかし私のような一般人から見ると、どちらも犯罪者の集団であり、大差なく見える。)

最近の私(ビル・ボナーノ)は、ヴィニー・ギガンテ(ジェノヴェーゼ・ファミリーの現在のボス)の逮捕と、服役についての記事を追い続けている。

何年もの間、彼はパジャマ姿でニューヨーク市のグリニッジ・ヴィレッジの縄張りをうろついていた。

メディアは「彼は頭がいかれている」と報じているが、疑問なのは彼が本当にボスだったかだ。

私がギガンテを知ったのは、彼がジェノヴェーゼの下っ端の用心棒だった時である。

彼は「チン(あご)」というあだ名だが、それは彼が元ボクサーで、その辺りにパンチをもらいすぎて頭がおかしくなったと見られていたからだ。

彼の自慢は、1957年にフランク・コステッロを襲撃する企てに参加したことだった。

はっきりしているのは、今日の組織犯罪において、マフィアはほとんど居ないという事だ。

例えば麻薬密輸は、コロンビア、東南アジア、メキシコ、アフリカまで含んだ、世界的なカルテルによって運営されている。

ラスヴェガスやアトランティック・シティの賭博は、まだマフィアの一部が参加している。

賭博を法律で禁止している州では、もっと上手くいっているはずだ。

また、先住民の居住区は連邦法に拘束されないから、(マフィアにとって)有望である。

私の家族は、妻ロザリーは今も一緒にいるし、弟は刑期を終えて出てきて結婚もした。

父(ジョゼフ・ボナーノ)は、コミッションの創設メンバーでは唯一の生き残りとなり、94歳の今も元気である。

長く生きすぎたと、父は言う。

「今の世の中には、離婚、同性婚、戦争が増殖しており、カネが全てだという考え方はとどまる所を知らない。自分には耐えがたい」と。

(2022年11月18日に作成)


『ケネディ大統領の暗殺事件』 目次に戻る

『アメリカ史』 トップページに行く

『世界史の勉強』 トップページに行く

『サイトのトップページ』に行く