(『ケネディ暗殺』ロバート・モロー著から抜粋)
1964年10月12日に、リチャード・ヘルムズの片腕でジェームズ・アングルトンの補佐官でもあったコード・マイヤーの、前妻マリー・マイヤーが道路で殺害された。
マリーは、コード・マイヤーと離婚した後に、JFKの愛人となっていた。
彼女が殺されると、アングルトンは彼女のアパートを捜索して、日記などを奪って燃やしてしまった。
ジェームズ・アングルトンは、ニクソン政権になるとCIAの非合法国内諜報プログラム『オペレーション・ケイオス』に関与して、74年に退職させられる事になる。
マリー・マイヤー殺害の少し前に、マーシャル・ディッグズが「ただちに会いたい」と、私に連絡してきた。
会うと、ディッグズは前置きもなしに、「君に生命の危険があるかもしれない」と告げた。
彼は説明した。
「このワシントンに、ケネディ暗殺について知りすぎている女性がいる。
その女性は、CIA内部に通じていて、さらにロバート・ケネディの友人だ。」
「ディッグズ、いったい誰のことを言っているんだ?」
「コード・マイヤーの前妻マリーだ。」
「CIAのコード・マイヤーか?」
「そうだ。
マリーは1956年にコードと離婚し、JFKが大統領になると夜をホワイトハウスで過ごすようになった。
マリーは、私の友人に『CIAに関係する亡命キューバ人とマフィアが、JFKを殺したと知っている』と断言したんだ。
その友人は、すぐに連絡をくれた。」
「(亡命キューバ人のリーダーの)マリオ・ガルシアコーリーは、暗殺に関与していたのか?」
「コーリーは分からないが、デル・バレとプリオは絡んでいただろう。
コーリーはいま、保釈中に逃亡しようとしている。
私の友人が、この件に取り組んでいる。」
私は、その友人とはリチャード・ニクソン元副大統領だろうかと考えたが、追及はしなかった。
マーシャル・ディッグズは話を続けた。
「誰かがマリー・マイヤーのことを、コーリーに話さなければならん。
彼は、私の所よりも君に連絡をするはずだ。」
「もうこれ以上、関わり合いになるのは御免だ。」
ディッグズは、炎も凍らせるほどの冷ややかな表情になり、こう脅してきた。
「どうやら君は、(君が改造した)あのマリンカ・ライフルの事を忘れてしまったようだ…。
君がデル・バレに与えたトランシーバーの事も。」
私は、嫌々ながらコーリーと会うのを了承した。
ディッグズは、別れ間際に言った。
「コーリーに、『我々のことを絶対に漏らすな』と伝えてくれ。
トレーシー・バーンズも懸念している。
マリー・マイヤーを消すこともできるが、バーンズはまだその気になっていない。」
ディッグズと別れた後、私は罠にかかったネズミのように感じた。
数日後にコーリーから連絡があり、ニューヨークで会った。
マリー・マイヤーの話をすると、彼は非常に心配そうな顔つきになり、こう言った。
「この件について十分に気をつけると、ディッグズに伝えてくれ。」
1週間後にマリーは殺され、彼女の日記はジェームズ・アングルトン(CIA幹部)の手に渡った。
(2016年5月11日に作成)