(『JFK ケネディ暗殺犯を追え』ジム・ギャリソン著から抜粋)
保安官助手のロジャー・クレイグの証言から、ケネディ暗殺の直後に教科書倉庫ビルから3人の男が逃走したと分かっている。
その際に使われた車は、明るいナッシュ・ランブラーのステーション・ワゴンで、屋根には荷物用のラックが取り付けられていた。
その車は、銃撃のあいだは教科書倉庫ビルの裏口に停められていた。
3人の男がワゴンに跳び乗った後、車はヒューストン・ストリートを北へ走り出した。
クレイグの証言によれば、その車はUターンして戻ってきて、倉庫ビルの前で停まりもう1人の若い男を乗せた。
そしてスピードを上げて北へ走り去った。
驚くのは、暗殺現場から一方通行の道を逆走して逃走したことである。
だが警察に止められることもなく、ダラス警察はワゴンの持ち主さえ調査しなかった。
ケネディ暗殺の目撃者たちは、「銃声はダル-テックス・ビルからも聞こえた」と証言している。
このビルから駆け出してきた1人の男は、ダラス警察に逮捕されたが、尋問記録は残ってなく、男の名前さえ分からない。
このビルではもう1人、ジム・ブレイドンと名乗る男も逮捕されたが、取り調べを受けた後に釈放されている。
この男は本名をユージン・ヘイル・ブレイディングといい、何十回と逮捕されているマフィアの前科者で、ビルにいたのは電話をかけたかったからだと説明している。
時間をかけて分析してみると、彼は暗殺に関係がないと判明した。
彼は、マフィアが暗殺の黒幕だと思わせるためのエサで、だからこそ彼の名前だけが公にされたのだろう。
銃声はパレード前方のグラシー・ノールからも聞こえ、非番だったトム・ティルソン巡査はそこから逃げてくる1人の男を見つけている。
その男は停めてあった車に乗って走り去ったので、ティルソンは自分の車で追跡し車のナンバーや車種を書き留めた。
車は逃走してしまったが、ティルソンはダラス警察の殺人課に連絡した。
しかし殺人課からは何の反応もなかった。
暗殺現場から逃走した男たちを調べていたところ、リチャード・スプレイグという男が接触してきた。
彼は当日に現場で撮影された500枚近い写真や映像を集め、研究していた。
スプレイグが最も興味をもったのは、グラシー・ノールの背後にある鉄道の操車場で逮捕された3人の男達のニュース写真だった。
3人は、散弾銃を持った警官に連行されるところだった。
私はウォーレン委員会の報告書にあるハークネス巡査部長の証言に、この3人が出てきたのを思い出した。
ハークネスによれば、3人は署に連行されて尋問されたという。
しかし男達の記録はダラス警察に存在しない。
このニュース写真は公表されることはなかったのだが、写っている男達は浮浪者を装っているが、とても清潔そうで髭もきちんと剃っている。
男達は逮捕されたのに手錠をはめられていない。
殺人現場から逃走しようとしていたのだから、これはおかしい。
さらに警官たちの銃の持ち方が「控え銃」でないのも奇妙だ。
そして1人の警官のズボンはまるで身体に合っていない。
先頭を歩いているリーダー格の警官は、耳に無線受信用のイヤホーンをはめているが、1963年当時は情報機関は使っていたが地方警察はまだ使ってなかった。
こうした点から、警官たちが本当にダラス警察の者か疑わしい。
私はこの写真の焼き増しをスプレイグから貰い、それを持ってNBCのジョニー・カーソン・ショーに出演することにした。
TV生出演に先立って、NBCの事務所で弁護士たちから質問をされ、私の答えは記録された。これに何時間もかかった。
放送が始まると、カーソンはタイプされている質問を読み上げ始めた。
私の答えを聞き、弁護士たちが用意した意地の悪いコメントに行きつくつもりなのが明らかだった。
放送中に私は、スプレイグからもらった写真を取り出し、すばやくカメラに向けた。
するとカーソンは私の腕に掴みかかり、写真がカメラに映らないようにした。
私が再びカメラに写真を向けると、カメラの赤いライトが消えた。
番組ディレクターがカメラを切ったのだ。
私は大声で「今ごらんになった逮捕された男達は、その後誰の目にも触れていないんですよ。連中は逃げおおせたんです」と視聴者に伝えた。
放送が終わり、私は帰路についたが、NBCが私の見解に苛立ったのは「ケネディ暗殺に陰謀がからんでいる」と主張したためだ。
マスコミの人々が陰謀説に対してこれほどのアレルギー反応を示すのはなぜだろう、と自問した。
この時に初めて、人々が思考停止してしまう理由に思い当たった。
もし陰謀があったと認めたら、政府の政策を変えるために大統領が殺されることもあり得ると認めることになる。
アメリカが世界で最もすばらしい民主主義の国だと宣伝してきたマスコミにしてみれば、それが虚構だったと立証するようなものだ。
だから彼らにとってケネディ暗殺は、狂った孤独な狼が起こした事件でなければならないのだ。
(2018年8月30日に作成)