タイトルドラム・セットの解説

(『ドラムのコツ100』岩井禎彦著、『音楽用語事典』リットーミュージック発行から抜粋
音楽用語事典からは2010年6月にノートにとって勉強)

「ドラム」(ドラム・セット)は、1900年頃にアメリカのニューオーリンズで、JAZZを演奏するために生まれた楽器である。

初期はキットの形ではなく、いくつかの打楽器を複数のミュージシャンが1人ずつ演奏していた。

演奏スペースやギャラ(人件費)を削るため、最終的に打楽器を1人で演奏するという、現在のスタイルになった。

ドラム・セットは、最も一般的なものは、22インチのバス・ドラム、14インチのスネア、12と13インチのタムタム、16インチのフロア・タム、14インチのハイハット、16~18インチのサイド・シンバルに、20インチのトップ・シンバルという構成である。

タムの数や、シンバルの種類およびサイズなどは、プレイヤーの好みで変えられる。

ジャズドラムは、初期にはトラップス(TRAPS)と呼ばれ、1910年頃に現在の形ができたといわれている。

昔のドラムは全て皮張りだったが、最近はプラスチック・フィルムが使われている。

初期のジャズやロックでは、リズムキープがドラムの役割だったが、最近はパーカッシブな役割に加えてメロディックな奏法も多く使われる。

ちなみに「トレーニング・ドラム」という、練習用のドラムもある。

これは、音が出ないように打面がゴムになっているものや、スポンジを台の上にのせてその上にヘッドをかぶせてリムで押さえたものなどがある。

〇ドラム・セットの各楽器について解説

①スネア・ドラム

円筒形の胴に皮を張ったものだが、裏面に「スナッピー」という響き線が付いているのが特徴である。
(※スナッピーは底面部の表面に付いている)

叩くとスナッピーも振動して、独特な音がする。

スナッピーはスネア特有のサウンドを生み出す元となっているもので、ストレイナー(スイッチ)により着脱できる。オフ(脱)にすれば音が変わり、タムタムのような音になる。

スナッピーが付けられる裏面には、専用の薄いヘッド(皮)が使われている。

スネアのボディの部分は、ウッド・シェル(木胴)とメタル・シェル(金属胴)の2種がある。

化学製品(ファイバー、カーボンなど)が使用されたタイプもある。

ウッド・シェルには、メイプル、バーチ、ビーチ、オークという木材の種類がある。

メイプルだと、豊かな温もりのある音になる。

バーチは、高音域を持ち、シャープな音である。

ビーチは、シャープでバランスが良い。

オークは、硬質で鋭いアタック音が出る。

メタル・シェルには、ブラス、カッパー、スティール、アルミニウムが使われる。

ブラスは、豊かでバランスのとれた音である。

カッパーは、重低音かつハイ・レスポンスが特徴。

スティールは、ソリッドで明るい音。

アルミニウムは、軽快で明るくキレがある。

スネア・ドラムは、口径や深さでも音が違ってくる。

標準は、14インチの口径で、5~5.5インチの深さである。

深胴は、6~8インチの深さとなり、重低音のきいた厚みのある音が出る。
高めのチューニングでも胴鳴り感がある。

口径が8~12インチのものは、エフェクト的な使用となる。
13インチは標準に近いが、普通のチューニングでもハイ・ピッチの音が得られる。

スネア・ドラムは、ドラムセットの中心で、そのチューニングやトーンにはドラマーの個性が強く表れる。

②ベース・ドラム(バス・ドラムとも言う)

ドラム・セットの中で最も大きな太鼓で、床にセットして、専用のペダルを使って足で演奏する。

ウッド・シェルがほとんどである。

口径は、ロックでは22~24インチ、ポップスでは20~22インチ、ジャズでは18インチが適している。

チューニングはやや高めのほうが良く、アタックに程良い胴鳴り感が加わり、バランスの良い音になる。

中に入れる毛布などのミュート材は、きちんと設置することでアタックと倍音のバランスがとれる。

また、フロント側(叩かない側、客に向ける側)を脚の調整で2~3cm上げると、音の抜けが良くなる。

フロント・ヘッドに開いている穴は、サウンド・ホールと言う。

ベース・ドラムに使う「フット・ペダル」は、ドラマーの好みで調節が変わるので、ドラマーがまず手に入れたいハード・ウェアの第1号である。

フット・ペダルは、ペダルがカムに連結され、踏むとカムに付いているビーターが動く仕掛けだ。

カムとその伝導方式により、チェーン・ドライブ、ベルト・ドライブ、ホイール・ドライブなどに分けられる。

フット・ペダルには、ベース・ドラムを両足で叩く、「ツイン・ペダル」もある。

これはメイン・ペダルの他に、シャフトで連結されたサブ・ペダルが付いており、2つのペダルを両足で操作する。

メインとサブが一体に成形されたタイプと、サブを追加するアジャスタブル・タイプの2種類がある。

2台のベース・ドラムを並べて置く場合もあり、日本では「ツイン・バス」と呼ぶが、欧米では「ダブル・ベース・ドラム」と呼ぶ。

2台のサイズやチューニングを変えることで、低音の表現力を増せる。

「ビーター」は、フット・ペダルのばちの部分を指す。

素材は、フェルト、ウッド、プラスチックなどがある。

普通は円筒形をしているが、球形、四角などもある。

③タムタム

タムタムは、スネアとベース・ドラムの間のピッチを担当する太鼓である。

響き線(スナッピー)は付いておらず、中型サイズの太鼓だ。

基本的に、ベース・ドラムの上にセットする。
だいたいは1~4個を組み込む。

フロア・タムという、フロア(床)に置くタイプもあり、低音域を担当して口径は14~18インチが多い。
これは3本の足(レッグ)が付いている。

タムタムを1個、フロア・タムを1個のように、シンプルなセッティングの場合、タムタムは高めに、フロア・タムは低めにチューニングすると良い。

さらに各ヘッド(太鼓面)の素材を変えると、太鼓の数が少なくてもサウンドに幅が出る。

太鼓の深さは3タイプあり、標準(レギュラー)、深胴(ディープ)、超深胴(エキストラ・ディープ)と呼ばれる。

深さがあるほど、叩きこなすにはパワーが必要となるが、叩きこなせれば安定した音が出る。

タムタムは叩いた時に、スネアのスナッピーが共鳴することがある。
共鳴しないようにチューニングする必要がある。

④ハイハット・シンバル

トップ(上)とボトム(下)の重さの異なる2枚のシンバルを、専用のスタンドにセットしたものである。

足でペダルを操作して、シンバルの間を開けたり(オープン)、閉じたり(クローズ)する。

ハイハット・シンバルの前身は、1920年頃に考案されたチャールストン・マシン(ロー・ソック・マシンとも呼ばれた)で、これはペダルにより2枚のシンバルを打ち合わせる楽器だった。

ハイハット・シンバルは、チャールストン・マシンの背を高くしたもので、ロー・ソックに対してこの名が付いた。

セットする際は、ペダルを踏まない開ききった状態で、シンバルの間隔は3cmくらいがベストである。

叩きやすさよりも、踏みやすさを優先して置く位置を決めるのがコツである。
上級テクニックになるほど、踏み込む左足のコントロールが重要になるからだ。

またスプリングの強さを調整して、足首で軽く踏み込んだ状態でハイハットがクローズするようにするのも大切である。

奏法は、クローズ、オープン&クローズ、ハーフ・オープンなど、様々なものがある。

ペダルの操作でシンバルを打ち鳴らす場合、「フット・ハイハット」と言う。

クローズした時に空気を逃がしやすくするため、ボトムの縁を波打たせたものや、ボトムに小さな穴を開けたものもある。

⑤ライド・シンバル(トップ・シンバルとも言う)

ドラマーの利き手の側にセットする、大きなサイズのシンバルである。

他のシンバルよりも厚みがあり、これを叩いてリズム・キープを行う。

叩き続けるため、叩きやすい位置にセッティングすることが重要である。
肘や手首に負担のない、楽に叩ける場所にセッティングする。

⑥クラッシュ・シンバル(サイド・シンバルとも言う)

叩くと「ジャーン」と気持ちの良い音がするシンバルで、主にクラッシュ(打ち砕く)するシンバルである。

これを使うことで、曲のアクセント(強調部分)を表現する。

⑦シンバルの補足

シンバルには、スプラッシュ・シンバルもある。
これは薄くて小さなシンバルで、叩くとサステインの短いピッチの高い音がする。
短いアクセントに用いられる。

チャイナ・シンバルは、中国発祥のシンバルを真似たもので、エッジ(縁)が反り上がっており、独特のにごった音がする。
スウィッシュ・シンバルとも言う。

また、リベット(鋲)が打ってあるシンバル(シズル・シンバルと呼ぶ) もあり、レガートで打つと「シャー」という音が混じる。

シンバルは基本的に、ロック系のパワフルな音には厚めが向き、ジャズ系には薄めが向く。

シンバルの中央の丸く盛り上がった部分はカップと言い、カップが小さいものはミニ・カップ、カップのないものはフラット・トップと呼ぶ。

シンバルの素材は、青銅、リン青銅、真鍮が使われている。

シンバルをセットするスタンドには、「ストレート」と「ブーム」がある。
この2つは形状が違う。

ストレート・スタンドは、地面から真っすぐ上に立ったタイプで、軽量で、なおかつ安定性に優れている。

ブーム・スタンドは、逆L字型に2本が組み合わされており、角度を自由に変えられる。

ブーム・スタンドは、遠くに置いてシンバルだけを近くに持ってこれる。
ハイ・アングルのセッティングや、混み入ったセッティングに向く。

またスタンドの足は、安定する「ダブル・レッグ」と、軽量な「シングル・レッグ」の2種がある。

〇ドラムのヘッド(打面)の種類

ヘッドとは、打面や裏面に張ってある皮のことだ。

その素材は、昔は牛、馬、羊の皮が使われていたが、取り扱いや耐久性から一部をのぞいてプラスチック製に代わった。

表面を白くコーティングしたものなど、多くの種類がある。
また、合成繊維のものも開発されている。

ドラムのヘッドには様々なタイプがある。それを次に解説する。

①クリア・タイプ

無色透明で、サステインが長くてアタック感がある。

打面だけでなく、裏面に張ることも多い。

②コーティング・タイプ

白くて手触りがザラザラしている。

ほど良いサステインで、スネアの打面によく使われ、ブラシ・プレイに適している。

③ドット・タイプ

打面の中央に、ドットと呼ばれる丸いフィルムが重ねてある。

サステインがほど良くカットされ、アタックの効いたラウドな音になる。
耐久性があり、ロック・ドラムに向く。

④二重フィルム・タイプ

薄いフィルムが二枚重ねてあり、サステインがカットされ、深みのある音になる。

耐久性に優れ、タムタムやベースドラムによく使われる。

⑤擬似革タイプ

繊細で甘い音がする。牛革などの昔の打面を真似ている。

⑥スネア・サイド

非常に薄くて、スネアの裏面専用。

スナッピーの反応を良くするために薄くなっている。

⑦ミュート付きタイプ

縁にリング状のミュート材が付いている。

太くてアタック感のある音が出る。
ベースドラムによく使われる。

〇ドラムの音作り

スネアは、スナッピーの締め具合で音が大きく変わる。
録音では曲ごとに調整してもよい。

スネアはその曲にフィットするのが大事で、ガムテープやティッシュ・ペーパーで少しミュートすることもある。

リング・ミュートという、ドーナツ状のミュート材も売っている。

スネアのスナッピーは、演奏中にビリビリと共鳴する事がある。
よくあるのはタムタムの音に共鳴しているパターン。

これを解決するには、スネアの裏面のチューニングを変えるか、タムタムの裏面をガムテープで少しミュートする。

ベース・ドラムのミュートは、通常は毛布などが中に入れてある。

最近はミュート付きのヘッド(打面)もある。

ベース・ドラムのミュートの1つの目安は、PAを通す場所では多めにし、スタジオや小さなライヴハウスでは少なめにしてサステインを長くすると良い。

ベース・ドラムは、ビーター(叩く時に当たる部分)を変えることでも音が変わる。

タムタムはチューニングだけで音を十分にコントロールできるので、ミュートはしないドラマーが多い。

ミュートする時はガムテープを貼るのが一般的。

シンバルのミュートは、ガムテープを少し貼るのが一般的。
サステインが長すぎる場合や、ピッチが合わない場合に行う。

ジャズの小編成バンドで演奏する場合、ベース・ドラムは18インチがベストとなる。

周りのアコースティックな楽器の音に溶け込んで、しっかりスウィングする。
チューニングは高めが基本。

ポピュラー・ミュージックではベース・ドラムは22インチが向き、ロック・ドラムは24インチ、ヘヴィ・メタルは重低音を重視した26インチが向く。

ちなみに、シェル(胴の部分)の手入れや、シンバルの手入れは、乾拭きがベストである。

〇リム

リムは、ヘッド(打面)をシェル(胴)に押さえつけるための金属製の枠のこと。

スティールやダイキャストで作られており、素材によって音質に違いがある。

バスドラム用には木製のものもあり、フープとも呼ぶ。

○エッジ

ヘッドとシェルの接点のこと。

この部分だけはシェル全体より薄く加工されており、ヘッドとの接面が小さくなっている。

この部分は鳴りに大きな影響を与えるので、角度、仕上げの状態に各メーカーは独自の工夫をこらしている。

(2023年1月16&19日に作成)


目次【音楽の勉強】 目次に戻る

目次【私の愛するジャズアルバム】 目次に行く

home【サイトのトップページ】に行く