(以下は『音楽の正体』渡辺健一著から抜粋
2010年8月6日にノートにとり勉強した)
アメリカはハリウッドの黄金時代、国を上げてミュージカルに浸りきった。
当時のアメリカ人の明るさ、軽さは、ミュージカルの「教育效果」なくして語りえない。
なぜミュージカルはあそこまで人を酔わせるのか?
その魔法の本質は、全体構成にある。
一般的にミュージカルは、ストーリーがありそこに色々な曲がつくと思われている。(※僕もそう思ってきた…)
しかし実は、ミュージカルの曲順はあらかた決まっている。
ストーリーに関わりなく、ほぼ共通した定型が存在する。
その黄金の法則を次に述べる。
🔵黄金の法則(曲順の法則)
観客を引きつけ続けるためのパターンが、「曲順の法則」である。
『マイ・フェア・レディ』や『パリの恋人』などは、驚くほど同じ構成をしている。
この法則はクラシック音楽の交響曲にも当てはまるのだが、それがソナタ形式である。
これが黄金の曲順法則である。
①舞台設定を見せる (群舞・リズミカルな曲)
②ヒロインの動機づけ (ソロの歌い上げ)
③ヒーローの(ヒロインとの)対照性 (ミドルテンポ)
④舞台の変化 (情況転換・群舞・アップテンポ)
⑤ヒーローとヒロインの対立 (ソロ・踊り)
⑥2人の仲直り (喜びの踊り)
⑦先輩からの励まし (ヒロインの優雅な舞い)
⑧波乱の展開 (4~5曲を次々に使って葛藤を見せる)
⑨反復 (主題歌のリフレイン・愛の歌い上げ)
上記した曲順の法則を、『マイ・フェア・レディ』に当てはめてみよう。
①ロンドンの下町と、ひどい下町なまりの言葉
②ヒロインは未来に夢を持つ
③相手役のヒギンズ教授は女嫌い
④情況は一変し、ヒロインの父の呑んだくれが登場。気ままな人生観を歌う。
⑤ヒロインをレディにする特訓が始まり、反目する2人
⑥ヒロインの頑張りで、彼女は言葉使いをマスターする
⑦ヒロインをメイドのおばあちゃんが見守る
⑧上流階級の社交場で厳しい試練が訪れる
⑨2人が結ばれ、名曲の反復となる
以上の9段階を、考察してみる。
①まず舞台の設定を見せないといけない
②動機がないと話の筋がわからない
③相手が自分と合わないタイプで、どうなるのかと観客の期待を煽る
④別の情況へ2人を叩き込む
⑤2人は対立する
⑥しかし恋が芽生える
⑦そんな2人に助言者が現れる
⑧ところが訪れる大波乱
⑨ハッピーエンド
多くのストーリーがこの筋立てになっているので、そこに曲を配していくと自然に黄金の曲順法則となるのだ。
(2025年6月21日に作成)