タイトルリュート、マンドリン、ギター

(『図説 楽器の歴史』フィリップ・ウィルキンソン著から抜粋)

○リュート

洋梨を半分に割った様な丸みのあるボディをしている、撥弦楽器である。

何世紀にもわたり、西ヨーロッパで独奏や伴奏で用いられた。

中世ヨーロッパでは、吟遊詩人がリュートを持って各地を旅した。

リュートのルーツは、古代のエジプトやメソポタミアの楽器で、8世紀にイスラム教徒がイベリア半島を征服したことでヨーロッパに伝わった。

さらにシチリア島にもイスラム教徒が持ち込んだ。

リュートという名称は、アラビア語で「木」「棒」を意味する「アル・ウード」からきている。

15世紀初頭の時点では、リュートは4コースで、プレクトラムで弦をはじいていたようだ。

リュートの弦は2本が1組で、「コース(複弦)」と呼ばれる。
2本の弦が共鳴することで、力強い音が出る。

この頃には、指板にはフレットが付くようになった。

徐々にプレクトラムを使わずに、指で弦を弾くようになった。

弦の本数も、16世紀には6コースが一般的になり、10コースのものも登場した。

リュートは16世紀には大人気で、多くの作曲家が曲を作った。

イタリアのフランチェスコ・ダ・ミラノや、イギリスのジョン・ダウランドの曲が有名である。

ただし、当時はチューニングは各地で違った。

リュートは18世紀の末には人気が落ちた。

○マンドリン

マンドリンは、リュートを小さくしたようなボディで、指板にはフレットが付いており、ヴァイオリンと同じ調弦(チューニング)をする。

リュートと同じく弦は2本が1組で、4組の金属弦を張る。

特徴は、すばやいトレモロが出来ることで、音を長く鳴らす効果が出せる。

マンドリンは15世紀には登場していて、ヴィヴァルディ、フンメル、ベートーベンも曲を書いている。

○ギター

中世ヨーロッパでは、「ギター」は小型のリュートのような楽器を指すこともあり、色々なタイプのものがギターと呼ばれた。

スペインで「ビウエラ」という楽器が登場し、これが今のギターに近い形状であった。

ビウエラは、ボディにくびれがあり、背板は平らで、弦をはじいて演奏する。

ビウエラは15~16世紀に人気となった。

「ビウエラ」は、弦は2本が1組の複弦で、6~7本のガット弦が2本1組で張られていた。

1550年代にはビウエラの教則本も登場した。

バロック時代に入ると、現在のギターに形が近いものが登場し、人気が出てリュートにとって代わった。

18世紀には弦の改良が行われ、低音弦は巻き弦になった。

巻き弦になることで、ギター製作者は複弦ではなく単弦で6本張るのが良いと考えるようになった。

それまでギターは高音域が魅力とされていたが、巻き弦により低音から高音までバランス良く出せることになり、独奏楽器と認知された。

この結果、ギターの作曲が増えたが、中でもフェルディナンド・カルッリは卓越したギター奏者で、400曲以上を作曲した。

またスペインでも、フェルナンド・ソルが演奏と作曲をした。
ソルは教則本も出している。

19世紀の後半に、スペインのギター製作者であるアントニオ・デ・トーレスが、ボディの形状を変更した。

ボディの上部と下部の丸みを大きくし、丸みの間隔も広げた。

これにより、ボディが奏者の膝の上に収まりやすくなり、音もバランスが良くなった。

スペイン人のフランシスコ・タレガは偉大なギタリストで、作曲や編曲を残している。

その後もアンドレス・セゴビアやジュリアン・ブリームといった名手が登場した。

クラシック・ギターは、サウンドボード(表板)は軟材(スプルースなど)が用いられる。

裏板と横板は、硬材(メープルやローズウッド)が使われる。

指板は黒檀が多く、フレットは洋銀が使われる。

表板は音色を決める重要な部分で、厚さは2.5ミリほど。
内側は芯材(力木)で補強されている。

力木の位置や、表板の厚さで、音色や響きが変わってくる。

(2023年8月26&29日に作成)


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