(『ドラムのコツ100』岩井禎彦著、『音楽用語事典』リットーミュージック発行から抜粋)
〇スティックの種類
ドラムを叩く時に使う「ばち」を、スティックと言う。
スティックは、下記のとおり様々なタイプがある。
なお、ティンパニやシロフォンなどのばちは「マレット」と呼び、トライアングルやドラム・ペダル用のばちは「ビーター」と呼んで、スティックとは区別している。
まずスティックの「チップ」(先端の丸い所)は、丸型、三角型、俵型の3タイプがある。
丸型は、角度に関係なく安定した音が出る。
三角型は、寝かせるとパワーが出て、立て気味にするクリアーな音が出る。
俵型は、太くてパワフルな音が出る。
「ショルダー」は、チップに次ぐ先端部分を言い、スティックの肩にあたる。
ここが太いとパワーが出て、細いと繊細な音になる。
「グリップ」は、スティックの手に持つ部分の太さのことで、13~16ミリが主流である。
グリップが細い場合は重めのもの、太い場合には軽めのものを選ぶと、叩きやすい。
例外として、トレーニング用の極太サイズがある。
「スケール」は、スティックの全長のことで、400ミリ(40cm)を基本にして、長めや短めのものがある。
長さだけでなく、全体のバランスも、選ぶ時のポイントになる。
一般的にスティックは、細くて軽いほうが微妙なコントロールがつけやすいが、音の厚みは出ない。
太くて重いほうがパワーは出しやすい。
スティックの「材質」は、ヒッコリー、メイプル、オークの3種類がある。
ヒッコリーは、消耗しやすいが、跳ね返りが良くてコントロールしやすい。
メイプルは、湿気に強いが、軽くてパワーが出にくい。
オークは、重くてパワーを出しやすいが、跳ね返りにやや欠ける。
最近は、グラスファイバーが材質のものや、トレーニング用のジェラルミン製もある。
〇スティックの握り方
スティックの握り方(持ち方)のスタイルをグリップと言うが、「マッチド・グリップ」と「レギュラー・グリップ」の2つがある。
これは左手の握り方が異なる。
「マッチド・グリップ」は、そのまま自然に掴んだスタイルである。
両手共に、ハタキを握る時のようにスティックを持つ。
スティックをしっかり強く握ると、反動を利用しない叩き方になる。
これだと手首を動かしたとおりにスティックが動き、手首の強化やスピード・アップにつながる。
ゆるく握るのは、親指と中指だけでスティックを持つやり方で、反動を利用する叩き方である。
上達すると一振りで3連打・4連打も可能となる。
親指の爪が上を向くか横を向くかによって、ティンパニ・マッチド・グリップや、リスト・マッチド・グリップなどに細かく分かれる。
「レギュラー・グリップ」は、左手のスティックの持ち方を変えて、親指と人指し指の付け根でスティックを挟み、薬指と小指を曲げて薬指の上にスティックを乗せる。
これは昔のトルコ軍楽隊の名残りをとどめる持ち方で、左手はハシを持つときに似た握り方となる。
ショット(叩くとき)は手首の回転を利用する。
スティックをしっかり握ると、反動を利用しない叩き方になる。
この場合、人差し指と中指でスティックをしっかり抑える。
ゆるく握る時は、親指と人差し指の付け根で挟むだけにして、反動を利用して叩く。
慣れるとバスケットボールのドリブルの感覚で叩けるようになり、高速連打が可能となる。
〇ブラシ
ブラシは、ばちの一種だが、スティックとは全く違う。
13cmほどの細い鋼鉄の針金を170本ほど、末広がりになるよう束ねたものである。
鋼鉄のワイヤー束は、筒に収められており、使用する際にはワイヤー束を棒で押し出したり(押し出し式)、筒を振って出したり(振り出し式)する。
スティックを半分ほどに切り、そこにワイヤー束を直接つけた固定式もある。
鋼鉄のワイヤーではなく、ナイロンを使ったものもあり、ナイロン・ブラシと言う。
ブラシの演奏法の特徴は、叩くだけでなく、こすって音を出す点にある。
なお、ブラシで演奏する時は、打面はコーティングされたものを使うことが多い。
(2023年1月16~17日に作成)