タイトルチェロ、コントラバス、バリトン

(『図説 楽器の歴史』フィリップ・ウィルキンソン著から抜粋)

🔵チェロ

ルネサンス時代の1556年の史料に、「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ」という楽器が書かれている。

これがチェロの最初の史料である。

このチェロの元祖は、脚の間にはさんで構えられ、4本弦で5度調弦だった。

チェロは長い間、脚のふくらはぎで挟んで固定して演奏された。

エンドピンが付けられてからも、エンドピンは初心者用で、熟練者はふくらはぎで挟むものとされた。

1660年頃にイタリアで、チェロとコントラバスに用いる弦として、ガット弦に金属のワイヤーを巻きつけた弦が登場した。

この巻弦により、低音が安定して出せるようになり、チェロは独奏もできる楽器と見られることになった。

J・S・バッハが1720年頃に書いた「6つの無伴奏チェロ組曲」は、チェロの特性を生かした独奏の傑作で、現在でも愛奏されている。

18世紀のはじめに、チェロの縦の長さは75cmが標準と定まった。

アントニオ・ストラディヴァリ(1644~1737)の作ったチェロが、優れていたので標準となり、現在もほぼ同じサイズとなっている。

当時は、まだ弓の持ち方はアンダー・ハンドで(掌を上に向けて)握る人もいた。

モーツァルトは、チェロの名手だったジャン=ピエール・デュポールの演奏を聴いて刺激を受け、チェロを主役にした弦楽四重奏を書いた。
(チェロを弾くプロイセン王の依頼で書いた側面もある)

デュポールの弟ジャン=ルイも名手で、1806年に出版したチェロの教則本は広く知られた。

イタリア人のルイジ・ボッケリーニ(1743~1805)は、優れたチェロ奏者で、数多くのチェロ曲を残している。

またドヴォルザークのチェロ協奏曲(1895年)は、傑作として名高い。

🔵コントラバス

コントラバスは大型の弦楽器で、オーケストラでは弦楽器の最低音域を担当する。

この楽器はジャズでもよく使われ、ベース・ラインを弾いている。

ジャズではソロもとるが、クラシック音楽ではソロを奏でる機会はほとんどない。

コントラバスは、ショルダーはなで肩で、調弦は4度間隔である。

こうした点から、祖先はヴィオール属の低音楽器と思われる。

しかしヴァイオリンとの類似点もあり、f字孔なこと、内部構造、フレットが指板にないことから、ヴァイオリン属の楽器が祖先かもしれない。

コントラバスは、16~17世紀に徐々に発展した。

17世紀にはオーケストラに加わったが、素早いパッセージはチェロに任せることがよくあった。

コントラバスの弦は太くて丈夫でなければならないが、ガット(羊の腸)の弦だと速いパッセージの演奏は難しかった。

そこで17世紀に、ガットに細い銅線を巻きつけた弦が登場した。

しかしこの弦は張力が強いので、それまでの木製のペグでは厳しかった。

1778年にカール・バックマンが、ねじ式のペグを発明した。

ねじ式は、ペグを回すと歯車が回転し、弦をしっかりと固定できる。

コントラバスは、オーケストラに加わった当時は、チェロのパートを1オクターブ下で弾くのが主だった。

さらに18世紀のコントラバスは、4本の弦ではなく、3本弦がほとんどだった。

だがモーツァルトは、いくつかの室内楽でコントラバスを使っている。

ドメニコ・ドラゴネッティ(1763~1846)は、「コントラバスのパガニーニ」と呼ばれたほどの名手で、多くの曲を残している。

ロマン派の時代になると、オーケストラは大規模になっていき、コントラバスが積極的に使われた。

この時代に、4本弦のコントラバスが増えた。

3弦だと、力強い音が出せるが、音域は狭い。

4弦だと、音域は広いが、音は弱くなる。

そこで4弦のものを複数にしてオーケストラに入れたのである。

20世紀になると、ジャズという新しい音楽が普及したが、ジャズではコントラバスが低域とリズムを支えるようになった。

ジャズでは大半はピツィカートで演奏されるが、弦を引っ張って指板に当てる「スラップ」という奏法も使われる。

🔵バリトン

バリトンは、チェロとほぼ同じ大きさだが、ヴィオラ・ダ・ガンバと同じで膝に挟んで弾き、指板にはフレットがある。

弦は6~7本である。

バリトンは、指板の裏側にも弦が何本もあり、これは左手の親指ではじいて音を出す。

はじかない時も、表の弦に共鳴して、音色を豊かにする働きをした。

バリトンは、17世紀の初頭にイギリスで考案されたようだ。

18世紀に貴族がよく弾き、とりわけハイドンの雇い主だったエステルハージ侯爵が愛好した。

ハイドンはエステルハージが演奏するために、バリトン、ヴィオラ、チェロの三重奏を120曲以上も書いた。

エステルハージがバリトンに飽きて、オペラ上演に熱中すると、その後はバリトンは廃れた。

(2023年9月4日、12月31日に作成)


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