タイトルフルート、ピッコロ

(『図説 楽器の歴史』フィリップ・ウィルキンソン著から抜粋)

🔵フルート

フルートのような、空洞の筒で音を奏でる楽器は、太古からあった。

スロヴェニアの洞窟で見つかった骨笛は、4.5万年も前のもので、ネアンデルタール人が使ったとされている。

古代の笛の多くは、管の両端が開いたタイプである。

横笛は、中国でも古代からあり、前433年の遺跡から見つかったものが最古である。

これは竹製で、管の両端はふさがれており、指穴は5つである。

古代ローマの絵画にも、横笛が描かれているが、その詳細は分かっていない。

18世紀の初頭に、フランス人のジャック=マルタン・オトテールたちが、フルートの改良を行った。

オトテールは、フルートの教則本も1719年に出版している。

するとバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディといった作曲家たちが、フルートを使うようになった。

ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(1697~1773)は、フルートを演奏するフリードリヒ2世の依頼で、フルートのための協奏曲とソナタを大量に作曲した。

クヴァンツは1752年に、「フルート奏法」という教則本も出している。

その後、フルートはオーケストラでも使われる楽器となったが、オーケストラだと音量の小ささが弱点となった。

そこでテオバルト・ベームは、フルートを改良して、より大きな音が出るようにした。

ベームは1847年には新型フルートを完成させたが、これは金属製なので、音が耳障りとして嫌う人もいた。

それまでのフルートは木製で、音が柔らかく落ち着いていた。

ベームのフルートは徐々に受け入れられて、現在ではベーム式が基本となっている。

なおベーム式の改良は、クラリネットにも採用された。

作曲家のドビュッシーは、「牧神の午後への前奏曲」で、3本のフルートに重要な役割を与えた。

ドビュッシーは、フルート独奏曲の「シュリンクス」も書いている。

ちなみにフルートは横向きに構えるが、リコーダー(縦笛)も中世ヨーロッパでは人気があった。

ルネサンス時代には、ディスカント(ソプラノ)、トレプル(アルト)、テノール、バスという4つのリコーダーの合奏がよく行われた。

より高音域のソプラニーノや、より低音域のグレートバスが使われる事もあった。

🔵ピッコロ

ピッコロは、フルートを短くした外見で、フルートよりも1オクターブ高い音域である。

オーケストラでは、木管の最高音域を担う。

通常はフルート奏者がピッコロも吹いている。

ピッコロなどの横笛の歴史は古い。古代からある。

中世ヨーロッパでは、短くて高い音の出る「ファイフ」という横笛が、軍楽隊で広く使われた。

フルートがオーケストラに加わったのは、17世紀末から18世紀初頭で、フルートにキーを装着する試みが進む頃だった。

同じ試みがファイフにも行われて、ピッコロが開発された。

18世紀前半の曲では、譜面に「フラウティーノ」(小さなフルート)と書いてあることが多く、ピッコロと高音リコーダーのどちらを想定しているのか分かりづらい。

ヴィヴァルディも「フラウティーノ」のために協奏曲を書いているが、音域からピッコロを想定して書いたようだ。

フランスの作曲家ラモーは、1735年頃からオペラ作品にピッコロを加えた。

ラモーのオペラは、ハーモニーの斬新さから賛否両論あったが、やがて高く評価された。

バロック時代から古典時代は、ピッコロはたまに使われる程度だった。

ベートーヴェンは交響曲第6番「田園」で、グルックはオペラ「タウリスのイファゲニア」で使っている。

ベルリオーズは、ピッコロを優しく吹いた時の美しさを主張し、フルートと組ませて上行の音階を吹かせた。

フルートに上行の音階を吹かせて、それを継いでさらに上行の音階をピッコロに吹かせたのだ。

ロマン派時代になると、ピッコロを使う作曲家が増え、ピッコロはオーケストラの常駐メンバーとなった。

19世紀にフルートは改良されたが、フルートのキー・メカニズムはピッコロにも採用された。

だが古くからのシンプルな作りのピッコロを使い続ける奏者が多かった。

(2023年9月29~30日に作成)


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